静岡県浜松市の中心地からクルマで10分ほど走ると、浜松市民にとって憩いの場として有名な、水と緑のオアシスと称される佐鳴湖(さなるこ)公園がある。そのすぐ近くのホワイトストリートと呼ばれる通り沿いに、どことなく懐かしい雰囲気に包まれた三角屋根の外観の、昔から地元で人気の炭火焼きハンバーグ店『パピオット』がある。
昭和の頃は、日本中で見かけた“町のレストラン”といった造り
炭火焼きハンバーグ店『パピオット』の印象は、外観だけでなく店内の造りも、昭和の頃はどこにでもあった町のレストランといった感じ。客席の横にはさまざまな種類の観葉植物の鉢が置かれ、訪れた人の目を和ませてくれる。さらに木の床が暖かみと清潔さを醸し出している。奥にある窓際のテーブル席につき、小ぢんまりとしたカウンターに目をやると、店を訪れた有名人のサイン色紙が飾られてあった。そんなところも、どことなく昔ながらのレストランといった趣が感じられる。
炭焼きハンバーグの店を謳うだかあって、メニューの表紙写真もハンバーグだ。他にカレーやピザ、ビーフステーキ、ビーフシチュー、エビフライなど気になるメニューがラインナップされているが、ここは自慢のハンバーグをオーダーするのが正解でしょう! ランチタイムということもあり、迷わず「炭焼きハンバーグ200g」を注文。ライスかパン、それにミニサラダが付いて1100円。やはりリーズナブルなランチタイムは見逃せない。
肉そのものの旨味を堪能できる絶妙の配合と焼加減に感激
「2種類の自家製ソースが選べますが、どちらにいたしますか?」と、シェフの娘さんの山田美江さんに尋ねられた。メニューや店内にある黒板に、2種類のソースについての説明が書かれている。それによると、定番のデミグラスソースは「フォンドボー(牛骨・牛すじ)をベースに野菜などを入れ、トマト風味に仕上げたソースです」とある。もうひとつはステーキソース。こちらは「しょう油をベースに、ニンニク風味のあっさりしたソースです」ということだ。初めて頂くのだから、やはりここは定番のデミグラスソースがいいだろうと判断し、オーダーした。
しばらくして運ばれてきたハンバーグは、鉄板の上でジュージューと景気のいい音をたてている。そしてテーブルの上に置かれると、肉汁などが跳ねて服が汚れないように、紙ナプキンを服の前に持ち上げた。すると山田さんが専用のナイフとフォークを使って、ハンバーグを上下で半分にカット。カット面を鉄板側にして並べた。そしてハンバーグの上に特製ソースがかけられた。瞬間、激しい音とともに、食欲中枢を刺激する強烈に良い香りが広がり、身体全体が包まれてしまう。
その刹那、頭の中に(んっ!? この光景はどこかで見たな)と、デジャヴな感覚が巻き起こる。確かこのシステムは、静岡ローカルの人気チェーンレストラン、炭焼きハンバーグの『さわやか』と酷似しているのだ。
「現在のシェフは私の父(澤木益之氏)ですが、この店を最初に始めたのは父の兄でした。そこに『さわやか』創業前の社長さんから、さわやか1号店のオープン時に、兄と弟夫婦(澤木益之夫妻)へ手伝いに来てくれと頼まれて、ハンバーグを教えたのだと聞いています」と、山田さん。
なるほど。静岡県内で知らない人はいないとも言われる『さわやか』のルーツはこちらの店だったとは! 感心したのはそれだけではない。ハンバーグの絶妙な焼加減だ。ステーキに例えるとレアな感じ。それだけ、使用している肉に自信がある証拠と言えよう。実際、口に含むと肉汁がほとばしり、牛肉の濃い味がいっぱいに広がる。
シェフの澤木益之さんに美味さの秘訣を伺うと「使用しているのはオーストラリア産の牛肉100%です。赤身と脂身の割合は8:2で、それに香辛料を混ぜたタネをひと晩寝かせてから使います」とのこと。それに「じっくり仕込んだことで、深みのある甘味が愉しめるデミグラスソースが相性抜群です」と付け加えてくれた。まさに大正解のオーダーだったというワケ。
昭和54年(1979)の創業当時から、連綿と受け継がれてきた伝統の味に間違いはない。昭和のファミリードラマに出てくるような店内で頂くというシチュエーションも、美味さに華を添えたくれるのだ。
「パピオット」
静岡県浜松市中区佐鳴台2-30-17
TEL:053-449-1800
営業時間:11:00~14:00 17:00~20:30
定休日:金曜日
メニュー:
炭焼きハンバーグ200g 1100円
炭焼きジャンボハンバーグ350g 1600円
ビーフシチュー 1700円
やわらかステーキ200g 1700円
牛ヒレ180g 3000円 いずれも単品
ハンバーグサンド 800円
ポークカレー 900円
歴史、旅行、アウトドア、鉄道、オートバイなど幅広いジャンルに精通。主な著書として『太平洋戦争のすべて』、共著『密教の聖地 高野山』(以上三栄)、『東京の里山を遊ぶ』『旧街道を歩く』(以上交通新聞社)、『各駅停車の旅』(交通タイムス社)、など。
写真/金盛正樹
男の隠れ家デジタル編集部
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提供元・男の隠れ家デジタル
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