イッカクは対人ストレスで脳を損傷することもある

珍獣「イッカク」の正体とは? 角の使いみちに迫る
(画像=脳のイメージ / credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

密猟はイッカクにとって明確な脅威ですが、それ以外にもイッカクが人間と関わることによって憂慮される事態が引き起こされることが、ある研究により明らかになりました。

近年、地球温暖化によってイッカクの生息地の氷の融解が進んでおり、貨物船舶の移動や地震探査・石油採掘などの人的活動がイッカクの身近でも起こるようになりました。

このような場面に際したとき、イッカクは素早く潜水し逃避しようとしますが、そのときの潜水は普段のものとは違い、体に大きな負担がかかるというのです。

通常、イッカクが潜水する際には体の中に蓄積された酸素をうまく使いながら泳いでいきますが、人的活動に接したときは蓄積酸素をうまく使うことができず、心拍数も異常に上がってしまうそうです。酸素が体にうまく行き渡らないと、脳を始めとする様々な臓器が損傷する恐れがあります。

イッカクのこのような潜水は、人的活動と接したときでなくシャチなどの捕食者と出会ったときにも起こるといいますが、シャチから逃げることはできても、巨大な船舶や超音波探査が逃げ切るのは容易なことではありません。これ以上イッカクの個体数を減らさないためにも人間側からの線引きが必要なのかもしれませんね。

イッカクが見られる水族館

珍獣「イッカク」の正体とは? 角の使いみちに迫る
(画像=イッカクのイラスト / credit:いらすとや、『ナゾロジー』より引用)

ユニコーンのように幻想的な姿を持つイッカク、実物を見てみたいと思う方も多いでしょう。

しかし残念ながら日本の水族館では、イッカクは飼育されていません。それどころか世界中を探してもイッカクを飼育している水族館はありませんでした。

イッカクは北極の非常に冷たい海で生きているため、生育環境を再現するのが難しい上、角を含めると8mほどと非常に大きいため、飼育することは不可能なようです。

しかし実は、イッカクの角だけなら展示されている水族館が日本にもあります。

兵庫県の城崎マリンワールドで角の展示が行われているほか、三重県の鳥羽水族館ではイッカクの角に触れる機会もあるのだとか。イッカクは角だけでも大人の身長ほどの長さですから、なかなか迫力がありそうですね。

まとめ

いかがでしたか?イッカクの角が実は歯だったなんて驚きですよね。

角の使い道を含めて、まだまだその生態には謎が多いようです。

密猟や地球温暖化による人との関わりで、個体数が減っているとも言われるイッカク。人間の存在がこれ以上イッカクのストレスにならないよう保護していかなければなりません。

【編集注 2021.11.29 16:30】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。

提供元・ナゾロジー

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