今年9月19日、スペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島で、クンブレ・ビエハ火山が噴火し、約5000人(総人口は約8万5000人)が避難を余儀なくされました。

同島での噴火は約50年ぶりであり、家屋や通りが大量の火山灰に覆われています。

現在も警察や消防隊による活動が続く中、驚きのニュースが飛び込んできました。

火山灰に50日間も埋もれていたハチの巣箱が発見され、しかも中のミツバチたちが生きていたというのです。

日光もエサ集めもできない中で、どうやって生き延びたのでしょうか。

目次

  1. ミツバチが50日間、灰に埋もれて生き延びた方法

ミツバチが50日間、灰に埋もれて生き延びた方法

火山灰に50日間も埋まっていたミツバチが奇跡的に生存していた
(画像=火山灰に埋もれた家屋 / Credit: H-H News/youtube(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

ハチの巣箱は今月6日、噴火した火山から600メートルほどの場所で、地元警察官により発見されました。

見つかったのは計6つの巣箱で、もともと養蜂家がその場所で飼育していたとのことです。

うち3つは部分的に火山灰から出ている状態で、3つは完全に埋まっていたという。

箱を開けてみると、1つは残念ながらすでに全滅していたものの、残り5つは数千匹単位のミツバチが生き延びていました。

火山灰に50日間も埋まっていたミツバチが奇跡的に生存していた
(画像=ハチの巣箱が発見されたときの様子 / Credit: H-H News/youtube(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

火山灰は、ミツバチにとって有害なものです。

これまでの研究では、火山灰がミツバチの体表面を覆うと、脱水症状を引き起こすことが分かっています。

また、外骨格の隙間や翅(はね)に付着すると、飛行能力が阻害され、働きバチはエサを集めに行くことができなくなります。

それから、ミツバチは火山灰に汚染されたエサを避けないので、灰の粒子を誤飲して消化器官が損なわれ、生存率が低下します。

火山灰の雨に少し降られるくらいならまだしも、今回は灰の海に家ごと飲み込まれた状態です。それも50日間。

なぜミツバチたちは生き延びられたのでしょうか。

火山灰が入らないよう「防壁」を築いていた

まず食糧事情ですが、幸運なことに巣箱の中には、養蜂家が設置していた冬用の蜜ストックが残されていました。

閉じ込められたハチたちは、これを食い繋いでいたようです。

それから火山灰についてですが、ミツバチは巣箱の隙間に「プロポリス(propolis)」を塗って、穴を塞いでいました。

プロポリスとは、ミツバチが集めた植物と、自らの唾液を混ぜ合わせて作る粘性の高い物質です。

一般に、巣の外壁や隙間に塗りつけられて、ウイルスや有害細菌の侵入、および死んだ仲間の腐敗を防いで、巣内の衛生面を保ちます。

今回は、火山灰の侵入を防ぐためにプロポリスを使ったようです。

ちなみに、プロポリスとはギリシャ語に由来し、プロは「守る」、ポリスは「都市」のことで、合わせて「ハチの都市(巣)を守る」を意味します。

プロポリスの成分は、使用される植物によっても変わりますが、だいたい、植物樹脂が50%以上、ろうが30%、芳香性精油が10%、花粉が5%です。

また、ミツバチの唾液には、酵素成分が含まれています。

ただ、今回のケースでは植物を集められなかったので、唾液の他に何の材料を使ったのか、あるいは巣箱にストックしていた植物を使ったのかは分かっていません。

以下が、巣箱が発見されたときの映像です。

いずれにせよ、火山灰の下でミツバチが50日間も生き延びるのは驚くべきことです。

同島の家畜保護団体である「ADS(Agrupación de Defensa Sanitaria)」のエリアス・ゴンザレス(Elias González)氏は「ミツバチが死んでいた巣箱も、火山灰が死因ではなく、もともと弱っていた可能性が高い」と話しています。

同島の養蜂では、春先になると、1つの巣箱に3万〜4万匹のミツバチが集まって、島中の植物の受粉に大忙しになるという。

生き延びたミツバチたちにも、今冬を乗り越えて、翌春にふたたび元気な姿を見せてほしいものです。


参考文献
Beehives with Bees Recovered Alive 50 Days After Being Buried in Las Palma Volcanic Eruptions

Thousands of bees make it out alive after being buried by La Palma volcano ash for 50 days


提供元・ナゾロジー

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