イギリス・エクセター大学の研究により、自然ドキュメンタリー番組はネガティブ感情を和らげ、気分を高揚させる効果を持つことが判明しました。
9月28日付けで『Journal of Environmental Psychology』に掲載された報告では、コロナ禍による自粛中の退屈さを軽減する効果も示されています。
さらに、VR(バーチャルリアリティ)を使うことで、自然とのつながりを強く意識させ、ポジティブ感情をより誘発しやすくなることも明らかになりました。
実験映像には、イギリスの動物学者デイビッド・アッテンボロー氏が監修した、高品質のBBCドキュメンタリー『ブルー・プラネットⅡ』が使用されています。
自然ドキュメンタリーは心を癒す
研究チームは、実験下で自然ドキュメンタリーの鑑賞効果を調べるため、まず被験者に見ず知らずの人が職務内容を淡々と説明するビデオを見せて、退屈な状態に置きました。
次に『ブルー・プラネットⅡ』の断片映像を3つのパターン(一般的なテレビ画面、360度対応のVR、インタラクティブVR)で被験者に見てもらいました。
ちなみに、「360度対応のVR」と「インタラクティブVR」は、前者が座った状態での固定的な視野移動に対し、後者はユーザーの操作に応じて、360度視野+場所移動が可能です。
その結果、どのパターンでも被験者のネガティブ感情を最小化し、退屈さや不安を緩和させる効果が認められました。
一方で、最もポジティブ感情を高めたのは、「インタラクティブVR」の映像でした。
被験者の多くは「自分が操作することで、自然とのつながりを強く感じるようになった」と報告しています。
コロナ禍の”メンタルケア”に最適
今年、世界は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ロックダウンを余儀なくされました。現在でも、一部地域で感染者が急増しており、自粛ムードが再燃しています。
ロックダウンは確かに感染拡大率を低下させるものの、自粛中の人々の精神面に悪影響を与え、幸福感が低下することが分かっています。
その中で、自然ドキュメンタリー番組を見ることがコロナ時代の効果的なメンタルケアになるかもしれません。
研究主任のニッキー・イオ氏は「VRでなくとも、テレビで自然映像を観るだけで十分に効果がある」と指摘します。
また、同チームのマシュー・ホワイト氏は「自然ドキュメンタリー番組やVR体験は、病院や長期療養中の人など、現実に自然と触れ合う機会のない人々のメンタルケアにもなる」と述べています。
自宅待機で暇を持て余した方は、自然ドキュメンタリー番組を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
参考文献
iflscience
metro
提供元・ナゾロジー
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