過去に、壁画から古代エジプトのパンを再現するという実験がありましたが、他にも一風変わった経緯で復活したレシピがあります。
その料理は「ティラピアのシチュー(英: Tilapia Stew)」といい、なんと紀元前3500年頃の男性のミイラから再現されました。
このミイラは一般的なものと違って、内臓や消化器官が無傷のまま残されていたのです。(通常、内臓はミイラ化に当たって取り除かれ、「カノプス壺」というヒト形の臓器収蔵器に保存される)
ここから男性が最後に食べた料理が判明し、レシピの再現に成功したのです。
一体、どんな料理なのでしょうか。
ティラピアは世界で初めて”養殖された魚”だった?
「ティラピアのシチュー」の主な材料は、川魚のティラピアとネギ、そしてオオムギの3つです。
ティラピアは臭みがなく、美味として知られ、現在でも世界各地で食用にされています。古代エジプト人もティラピアを重宝しており、食用や文化、宗教の面で大きな存在となっていました。
これまでにティラピアを描いた壁画や小皿、ティラピアをかたどった小瓶や化粧用パレットが見つかっています。
他にも、ティラピアは「再生」や「復活」のシンボルとして、死者が着る衣にその模様が縫い付けられました。
この思想は、ティラピアの稚魚が危険に見舞われたときに母親の口の中に逃げ込み、安全になると再び口の中から出てくる習性から誕生したと言われます。
ティラピアの不思議な行動に、当時のエジプト人は生命の誕生や豊穣さを見てとったのでしょう。
さらに、ティラピアはエジプト人の重要な食材であり、閉鎖された池を設けてティラピアを養殖していたことが分かっています。
ティラピアは世界で初めて養殖された魚でもあるのです。
「ティラピアのシチュー」を完全再現
ミイラの内容物から特定された「ティラピアのシチュー」の材料がこちらです。
ティラピアの切り身-1〜2枚(タイやタラなどの白身魚でも可)
オオムギ-粒状で1カップ
ネギ-4本(根っこの部分以外は根元まで使い切る)
水-3カップ
塩少々
作り方もいたってシンプルです。
まず、水で洗った粒状のオオムギを水とともに鍋に入れ、火にかけます。沸騰したら、刻んだネギの根元部分だけを入れて30分ほど煮込みます。
表面に浮いてくるアクや泡はオオムギの余分なデンプンなので、スプーンでこまめに取り除きましょう。
その後、ネギの根元を取り除き、乱切りにしたティラピアの白身を入れ、中火で10分間煮込みます。火を弱めて青ネギを加え、5分ほど煮込めば完成です。
最後に、塩を加えて味の調整をしましょう。
完成した料理がこちらになります。見た目は和食のスープにも似ていて、かなり美味しそうです。
実際はティラピアの白身だけでなく、皮や骨、ヒレまで丸ごと使っていたようですが、かなりクセが強くなり、現代人の口には合わないかもしれません。
「古代エジプト本場の味を体験したい!」という方だけ挑戦してみてはいかかでしょうか。
参考文献
ancient-origins
passtheflamingo
提供元・ナゾロジー
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