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月面利用を考慮したホイール&タイヤ
車名がクマムシなワケ

月面利用を考慮したホイール&タイヤ

月を走るNASAバイク!3Dプリンター製ホイールで月面を駆け抜ける!
(画像=3Dプリンターで作られたホイールとチューブレスタイヤ、『Moto Megane』より引用)

注目したいポイントがいくつもあるNASAバイクですが、特に知っておきたいのがホイールとタイヤです。バルーンホイールと名付けられた6スターデザインの24インチホイールは、当初現代のモーターサイクルに採用されているさまざまなホイールを試してみた結果、研究チームが納得できるものがなかったため「じゃあオリジナルを作ろう」と製作されたもの。

そしてそのバルーンホイールに合わせて製造されたタイヤがチューブレスなのも、月面が未舗装路であることからパンクなどのダメージを追いやすく、省エネ・材料のリサイクルという観点から 損傷したタイヤを材料化し、3Dプリンターで新たなタイヤに作り替えることを視野に入れた仕様となっているのです。

月を走るNASAバイク!3Dプリンター製ホイールで月面を駆け抜ける!
(画像=『Moto Megane』より引用)

このハンドルバーも3Dプリンター製品だそう。材質はプラスチックで、月面という特殊な環境を考慮に入れ、軽くて丈夫で柔軟性があり、材料としてリサイクル可能な点から選ばれました。

3Dプリンター活用は、加速化する宇宙産業において重要な役割を占めています。月面基地やISS(国際宇宙ステーション)に運ぶ機材や資材を打ち上げるロケットに都度載せていたら費用がかさんでしまいます。そもそも一般的な打ち上げロケットの積載スペースは10%にも満たないとか。

しかし3Dプリンターを現地に持ち込めれば、あとは材料の調達が確保できれば現場で製造・再生産できるので 大幅なコスト削減に役立つのです。この「Tardigrade」のホイールのように、リサイクル可能な材料なら そのままフィラメントとして用いて再製造すれば新品に生まれ変わります。NASAは月の砂(レゴリス)を3Dプリンターのフィラメントとして用いるプロジェクトを進行中で、「利用可能」であることがすでに実証されています。

月を走るNASAバイク!3Dプリンター製ホイールで月面を駆け抜ける!
(画像=火星移住計画の際に3Dプリンターで作られる住居(写真はイメージです)、『Moto Megane』より引用)

また、再び人類の月面着陸を目指すNASAのプロジェクト「アルテミス計画」の さらに先にある「火星移住計画」の一環で、これまた火星の土を使った3Dプリンター製住居を建てようというプロジェクトが進行中です。アメリカの建築用3Dプリンターメーカー ICON が NASA の要望を受け、実際にその建造物を3Dプリンティングする模様が動画で公開されています。ご興味がある方はご覧ください。

車名がクマムシなワケ

月を走るNASAバイク!3Dプリンター製ホイールで月面を駆け抜ける!
(画像=無限の可能性を秘める生物クマムシ、『Moto Megane』より引用)

車名「Tardigrade」の意味はクマムシ。クマムシとは、肉眼では見ることができない微小生物である緩歩動物(かんぽどうぶつ)の通称で、4対の体に8本の足を備える熊のようなずんぐりした体型の生物です。

クマムシが注目される理由はその圧倒的耐性能力で、絶対零度から100度の高温にも耐え、高線量の紫外線、X線、ガンマ線等の放射線に加え、空気がない真空状態でも死なない不死身の体を持つのです。実際に2007年、宇宙空間にクマムシを10日間晒し出す実験が行われ、結果クマムシは何の異常発生もなく生き延びたそう。人間なら秒で死ぬような状況でも、クマムシは平然と生き延びられるのです。

民間企業の参画が次々と進んでいる宇宙開発産業、その発展のカギを握るクマムシの名が冠されたところに、HOOKIE の宇宙事業にかける意気込みとこの電動バイクにかける想いが垣間見えたようです。