時計の品質規格で最も有名なのはスイスのCOSCが認証するクロノメーターで、もともとは航海用に正確な時計が必要だというニーズから18世紀に生まれている。このほかにヴァシュロン・コンスタンタンやショパールなどが取得しているジュネーブ・シールも有名だが、2014年にはオメガがMETAS(メタス/スイス連邦計量・認定局)と新規格となるマスター クロノメーターを発足させて大きな話題となった。

このマスター クロノメーターは、COSCクロノメーターのテストを通過した個体が対象となっており、そこからさらに厳しい基準が課されている。大きな違いはCOSCがムーヴメント単体の精度をテストするのに対して、マスター クロノメーターはアセンブルされ時計の状態になった製品をテストする点だ。さらに精度だけでなく、1万5000ガウスでの耐磁性能やパワーリザーブ残量が減ったときの精度もチェックするなど、テスト項目も増えている。

一方でこの規格にはオメガが誇るマスター コーアクシャルムーヴメントをアピールする目論見があった。マスター コーアクシャルはヒゲゼンマイにシリコンを採用したことで耐磁性能に優れ、コーアクシャル脱振機はゼンマイのトルクが落ちても高い等時性をキープする。その秀逸さをアピールするために、公的機関を巻き込んで新規格を生み出した点にオメガの本気度がうかがえる。
そのゆえ追随するブランドはしばらくなかったのだが、21年になってロレックス系列のチューダーが、新作のブラックベイ セラミックで認証を受けたことは大きな話題となった。こうなると他ブランドも無視できないわけで、業界のパワーバランスも含めて今後の展開が気になるところだ。

文・堀内大輔/提供元・Watch LIFE NEWS
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