日本人を紅茶好きにしてしまう遺伝子があるようです。
10月18日に『MDPI』に掲載された論文によれば、1万2000人の日本人の遺伝子を紅茶の消費量と比較した結果、12番染色体に存在する特定の遺伝子領域が深く関連しているとのこと。
いったいどんな遺伝子が日本人を紅茶に惹き付けているのでしょうか?
紅茶好きは遺伝子のせい?
紅茶には様々な健康効果が知られています。
紅茶に含まれるポリフェノール(テアフラビン)は老化、酸化ストレス、高血圧を抑制する効果があり、カフェインは糖尿病の予防に役立ちます。
また近年の研究では、1日3杯ほど紅茶を摂取することで、脳卒中のリスクが減少することもわかってきました。
一方で、近年の遺伝子解析技術の進歩により、お酒やコーヒーの消費量といった、個人の好みに過ぎないと思われてきた傾向も、遺伝子の僅かな違いに原因があるとわかってきました。
人間のDNAは60億個の塩基によって形成されていますが、たった1個の配列が違うだけで(一塩基多型)、体質や食べ物に対する好みに大きく影響してしまうのです。
そこで今回、日本の東京大学の研究者たちは、日本人集団における紅茶好き度合い(消費量)を決定する遺伝子を探すことにしました。
紅茶に対する個人の好みが遺伝子に基づいているならば、消費量が多い個人と少ない個人の間でDNA配列に何らかの差がみつかるはずです。
果たして日本人を紅茶好きにしてしまう遺伝子は存在するのでしょうか?
わずか数塩基の差が好みの違いをうみだしている
紅茶好きの遺伝子を調べるために、研究者たちは日本人1万2000人の遺伝情報を紅茶の好みに基づき分類しました。
結果、12番染色体に存在する「12q24」と呼称される領域から、紅茶の消費量と深くかかわる遺伝的な違いを複数(11個)発見しました。
特に、「rs2074356」と標識された場所に存在した違いは、僅か2塩基に過ぎないものの、紅茶の消費量に年間にして15杯ぶんの差をうみだしていることが明らかになりました。
「12q24」は日本人を含む東アジア人特有の遺伝領域であり、日本人のお酒の強さやコーヒーに対する好みと密接に関係していることが知られています。
遺伝子レベルでの好き嫌い
今回の研究により、紅茶の消費量といったごく個人的な好みと考えられていたものが、数塩基による遺伝子の差によって生じていることが明らかになりました。
「12q24」は日本人をはじめとした東アジア人しか持っていないために(紅茶の本場であるイギリス人にも存在しない)、日本人が紅茶好きになる原因は、他の人種や民族とは遺伝的に異なる部分があると言えるでしょう。
今後さらなる分析が進めば、より広い食べ物や嗜好品の好き嫌いが、遺伝子の差に基づいていることが明らかになると考えられます。
もしかしたらあなたが特定の食べ物をどうしても食べれないのも、遺伝子レベルで起きている拒否のせいかもしれません。
遺伝子レベルの好き嫌いの解明により、偏食や拒食、過食の治療に光明が見えるかもしれませんね。
参考文献
東京大学
提供元・ナゾロジー
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