お米は日本の食卓に欠かせない食材である一方、高濃度の「ヒ素」を含むことが知られています。

毒性の強いヒ素は、長期間摂取しつづけることで発がんや心血管疾患の発症リスクを高めるのです。

農家や専門家たちはこれまで、お米の栄養素を維持しつつ、ヒ素だけを除去する方法を模索してきました。

そして今回、イギリス・シェフィールド大学により、ヒ素だけを効果的に減少させる簡単な炊飯方法がついに発見されました。

特別な器材も必要なく、70%以上のヒ素を除去できるとのことです。

研究は、10月29日付けで『Science of the Total Environment』に掲載されています。

目次

  1. お米のヒ素濃度は他の穀物の約10倍
  2. ヒ素だけを除去する炊飯方法とは?

お米のヒ素濃度は他の穀物の約10倍

食物繊維が豊富で腹持ちもいいお米は、古来より日本人に愛されていますが、ヒ素の含有量は問題視されていました。

ヒ素は水溶性のため、水田で栽培されるお米に吸収されやすく、他の主要穀物の約10倍のヒ素が蓄積されています。

国際がん研究所は、ヒ素を発がん物質のひとつに分類しており、体内のほぼすべての臓器に影響して、がんや糖尿病、肺疾患のリスクを高めると言われます。

イギリスの研究機関は最近、同国内で消費されているお米の量は、欧州委員会が定めた「乳児および幼児に安全なヒ素レベル」を大きく超えていると発表しました。

ヒ素だけを除去する炊飯方法とは?

今回の研究では、お米の栄養素は残し、ヒ素だけを減らす炊飯方法をテスト。

その中で「パーボイリング吸収法(PBA、英: parboiling absorption)」が最も効果的であると判明しました。

方法も簡単で、特殊な器材はいっさい要りません。

具体的な手順はこちらです。

1.新鮮な水を鍋で沸騰させる(お米1カップにつき水4杯)

2.沸騰したお湯にお米を入れて5分間湯がく

3.お湯を捨て、米の水気を切る(このときにヒ素が除去される)

4.新鮮な水を通常の分量入れ直す

5.弱火〜中火で炊飯し、お米が新鮮な水を吸収するまで炊き上げる

お米に含まれる「ヒ素」のみを”栄養源を流さずに除去する炊飯方法”をついに発見! だれでもすぐに実践可能
(画像=PBA法の手順 / Credit: sciencedirect、『ナゾロジー』より 引用)

お米に含まれるヒ素の多くは、胚乳を取り囲む外層に濃縮されており、この外層を精米してできるのが米ぬかです。

そのため、ヒ素の含有量は白米より玄米の方が多くなります。精米の過程で、ある程度のヒ素も取り除かれますが、同時に栄養素の75〜90%も落ちてしまいます。

研究チームの目的は、この栄養素の流出を防ぎ、ヒ素だけを減らす方法の特定でした。

結果、PBA法では、玄米から54%、白米から73%のヒ素の除去に成功しており、栄養源の損失はありませんでした。

研究主任のマノジ・メノン氏は「他にも、水分量を多くして炊くことでヒ素を減らすことが可能ですが、これは栄養素も一緒に落としてしまいます。しかし、PBA法なら、家庭で簡単に実用でき、安全で健康的にお米を食べられるでしょう」と話しました。

お米をたくさん食べる日本人にとっては朗報かもしれません。

【編集注 2020.11.05 08:15】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。

参考文献 phys

提供元・ナゾロジー

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