イスラエル考古学庁(IAA)はこのほど、同国エルサレムで発掘プロジェクトに参加していた11歳の少女、リール・クルトコップ(Liel Krutokop)さんが、2000年近く前のレアなコイン(銀貨)を発見したと発表しました。
コインは、ユダヤ属州を支配していたローマ人に対する最初の大反乱、ユダヤ戦争(Great Revolt)の際に司祭が鋳造したもの。
ユダヤ人の反乱と独立のシンボルとして作られたと考えられます。
また、ユダヤ戦争時に鋳造されたコインは、これまで30枚ほどしか見つかっておらず、非常に貴重な発見となっています。
コインは「民族独立」のシンボル
クルトコップさん(11)は、エルサレムにあるダビデの町国立公園(City of David National Park)で考古学者と一緒に作業をしていた際、このコインを発見しました。
彼女は「バケツに入った土を篩(ふるい)にかけて、中に入っていた石をろ過すると、何か丸いものが見えました」と当時を振り返ります。
重さ14グラムのコインには、ユダヤ人の蜂起をあらわすマークや碑文が刻まれていました。
一面には、カップの図柄と「イスラエル・シェケル(通貨単位)」「2年目」という刻印があり、これは反乱の2年目(紀元67〜68年)を意味しています。
もう一面には、古代ヘブライ文字で「聖なるエルサレム(Holy Jerusalem)」と書かれており、それに続いて、神殿の大祭司の本拠地を示す別の言葉が記されていました。
コインは、ユダヤの反乱軍が、民族独立のために戦う決意を表明するために作るものです。
ユダヤ人の大反乱は、紀元63年にローマ人がシリア地方を完全に支配した翌年、エルサレムで残酷な統治を始めたことがきっかけとなりました。
反乱は当初、ユダヤ人に課せられた宗教上の制限および、ローマ人がエルサレムの神聖な遺跡の上に都市を建設したことに端を発しています。
ローマ人はかつてユダヤ教の神聖な神殿があった場所に、異教の神殿を建設するなどしました。
ユダヤ人とローマ人の間では、70年の間に3つの大きな戦争が起こっています。
第一次ユダヤ戦争は66年から70年まで、続いてキトス戦争(Kitos War)が115年から117年まで、そして、132年から136年にかけてバル・コクバの乱(Bar Kokhba revolt)が勃発しました。
最終的にユダヤ軍が敗北し、これ以降、エルサレムにローマ軍が常駐するようになります。
それまでは、ユダヤ人の民族感情を刺激しないよう、別の場所に駐在していました。
IAAのコイン部門責任者であるロバート・クール(Robert Kool)博士は、声明で次のように述べています。
「考古学的な発掘でこれまでに発見された何千枚ものコインのうち、ユダヤ戦争の時代に作られた銀製のコインは30枚ほどしか見つかっていないので、これはきわめて貴重な発見です。
コインは主権の証であり、ユダヤ人は、ローマ人への反乱に際し、最もわかりやすい独立のシンボルとしてコインを鋳造しました。
コインに使われた銀はおそらく、ユダヤ教の神殿に隠されていた埋蔵銀であり、神殿の山の広場で鋳造されたのではないかと考えられます。
この説は、コインに高品質の銀が使われており、そのような素材は神殿にしかないことから推測されます」
コインに刻まれた文字は、反乱軍の志を明確に表現しています。
また、当時はもう使われていなかった古代ヘブライ文字を使用したのも偶然ではないとのこと。
クール氏は、これについて「古代ヘブライ文字を使うことで、当時の人々がダビデやソロモンの時代、ユダヤ人の統一王国の時代、つまりイスラエルの人々がこの地で完全に独立していた時代への強い意志を表現していたのでしょう」と述べています。
参考文献
11-year-old finds ‘Holy Jerusalem’ silver coin likely minted in the Temple
元論文
Girl, 11, finds rare 2,000-year-old coin in Jerusalem that was minted by a priest in 68BC who joined the Jewish rebels during the Great Revolt against the Romans
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功