世界最大の化粧品会社・フランスのロレアル パリが中国で物議を醸した。

事の発端は、中国最大のECセールイベント「独身の日(ダブル11)」の期間中に起きた。 ロレアルが中国の超人気ライバーAustin(李佳琦)に販売を依頼した429元(約7,670円)のパックを「年間最安値」と謳っていたが、その後ロレアルが自社ライブコマースにおいて257元(約4,590円、前者の約4割引)で販売。虚偽宣伝だと大量の消費者がロレアルを訴え、差額の払い戻しを求めた。

事件後、ロレアルのカスタマーサービスの対応態度がさらに消費者の不満を引き起こし、事件はエスカレート。Austinだけでなく、同じく独身の日で同パックを販売した超人気ライバーViya(薇娅)までも「この件が解決するまで、ロレアルとの協業を中止する」と発表する事態にまで及んだ。

ロレアル中国がピンチ?独身の日のセール価格が物議を醸す
(画像=Austinの販売価格とロレアル自社ライブコマースでの最終価格、『チャイトピ!』より引用)

これらの出来事を受け、ロレアルは謝罪を行い、消費者にクーポンを発行する解決案を出した。

しかし、実はこの事件で議論の中心となったのは、セール価格の仕組みである。というのも、Austinが販売したのはパック単品で429元であったが、ロレアルの自社ライブコマースは、パックと他の商品をまとめ買いし、さらにプラットフォームと店舗クーポンを併用した後、システムが最終的に257元と算出したものである。

つまり、Austinに「年間最安値」と謳わせていた単品価格と、ロレアル自社ライブコマースでのまとめ買いにより、さらに安くなったことが契約違反になるのかが論点だ。

独身の日のセールの仕組みは、以前からその複雑性が消費者からクレームを受けていた。通常、セール後さらに安い値段で販売した場合、消費者は店舗に差額の払い戻しを請求し、店舗も価格規則に従って賠償を行う。しかし、今回はこのロレアルの件が契約違反に当たるのか、まだ明らかになっていない。

また、この件を機にトップライバーとブランドの関係性も注目された。言い換えると今や、メーカーと強力な流通チャンネルのような関係だ。

AustinとViyaは、「ロレアルが解決案を出さない場合、自ら消費者に差額を賠償する」と発表しており、ブランドより消費者との関係性を優先。

この背景としては、AustinとViyaは以前から「最安価」で有名な製品を販売することで、たくさんのフォロワーを獲得しており、彼らが販売する商品は厳しく選出された良いもの、他のルートより安いものだと消費者は信頼している。その信頼こそがAustinとViyaの最大の武器であるため、それを守るため世界最大の化粧品会社であるロレアルにも強硬な態度を取るのも不思議ではない。

実は、このような事件はロレアルだけではなく、以前にも発生している。記憶に新しいのが国産ブランドの「玉澤」だろう。以前、Austinが「玉澤」を大々的に宣伝販売し、ブランド知名度を一気に上げたが、その後「玉澤」は自社ライブコマースにおいて同商品を安く販売。Austinファンがブランドを批判し、Austinは玉澤との契約を打ち切る結果となった。

現在、トップライバーへの依存により成長してきたブランドがそのリスクを下げるため、自社ライブコマースを展開するなど、販売ルートの拡大に注力している。「独身の日」の期間中は、24時間継続して自社ライブコマースを行う店舗が数多く存在した程だ。

さらに、タオバオライブなど、ライブコマースのプラットフォームも近年ブランドの自社ライブコマースを推進しており、「独身の日」にはタオバオ上の43ブランドが自社ライブコマースにより、取引額が1億元(約18億円)を超過した。

このように消費者から圧倒的な支持を得ている超人気ライバーと、なんとかしてそこの依存から脱却したいブランドの戦いが始まっている。 今後のトップライバーとブランドの勢力変化に注目だ。

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