「ヒーローごっこ」は子供たちが好きな遊びの1つです。ヒーローになりきることで自分が強くなった気持ちを抱けるでしょう。
また米国ハミルトンカレッジ心理学部のレイチェル・ホワイト助教らの研究によって、このような「なりきり」が実際に子供たちの集中力を向上させると判明しています。
この効果は有名ヒーローの名前から「バットマン効果」と呼ばれており、子供たちの教育に役立つかもしれません。
集中力を強化する3人称視点
いくつかの研究は、私たちが3人称視点を持つことで意志力を向上できると指摘しています。
通常私たちは1人称視点(「私は○○と感じている」)で物事を考えているでしょう。
しかし、あえて3人称視点(「デビットは○○と感じている」)で物事を考えるなら、自制心を強固なものにできるのです。
実際に行われた食品選択実験では、参加者の前にキャンディーと果物が置かれました。
その中では、「私は何が欲しいのか」と考えた人よりも、空中から自分を眺めるように「デビットは何が欲しいのか」と尋ねた人の方が、果物を選ぶ確率が高くなりました。
3人称視点を持つようにした人は自制心が増し、より健康的な選択ができたのです。
「なりきり」は子供にどんな影響を与えるのか?
さて、ホワイト氏は3人称視点の効果に加えて、「なりきり」の効果性も検証することにしました。
実験では、6歳児からなる3つのグループをつくりました。このグループにはそれぞれ、コンピューターでの集中力テストを行ってもらいます。
このテストは「一連の画像が次々に映し出されていき、チーズの画像が写ったときにボタンを押す」という退屈なものです。
さらに、子供たちの近くに楽しいゲームがインストールされたiPadを置いたままにすることで、「子供たちがゲームで遊ぶ」よう誘惑しました。
子供たちの自制心と集中力が試されるわけです。
加えて子供たちのグループには退屈に感じた時、それぞれ次のように考えるよう指示しました。
1つ目のグループは、「私は一生懸命働いていますか?」というもの。1人称視点ですね。
2つ目のグループは、「ハンナは一生懸命働いていますか?」という3人称視点を持つよう指示しています。
3つ目のグループには、自分の好きな架空のヒーローになりきってもらいました。なりきるための小道具さえも与えられたのです。そして、「バットマンは一生懸命働いていますか?」と考えるように指示しました。
子供の集中力を23%も高める「バットマン効果」
実験の結果、3人称視点で考えたグループは、1人称視点のグループよりも10%以上長く集中できました。
さらに「なりきり」グループは、3人称視点のグループよりも13%多くの時間集中できたようです。
つまり「バットマン効果」によって、通常の状態(1人称視点)よりも集中力を23%向上させることに成功したのです。
この結果は、客観視や「なりきり」が集中力や意志力の向上に役立つことを示しています。
ホワイト氏は「このバットマン効果を利用するなら、テレビや携帯電話が誘惑となっていても、子供たちを行わなければいけない宿題に集中させられるだろう」と述べています。
また、このなりきりは大人にも影響を与える可能性があります。
より有能な人になりきることで、フラストレーションを感じやすい場面をなんとか切り抜けられるかもしれないのです。
新しいことにチャレンジするとき、「自分にとってのバットマン」になりきってみてはいかがでしょうか。
この研究は「Child Development」に掲載されました。
The “Batman Effect”: Improving Perseverance in Young Children
提供元・ナゾロジー
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