クレヒス、イシュア、アクワイアラ……。日本でも既に20~60代で8割強が保有しているとされるクレジットカードだが、発行や信用情報の照会の仕組みや手数料の流れなどについては意外と知られていない。専門用語を解説しながら全体像を探る。
(1)クレジットカードとは? 加盟店で後払い可能な決済用カード
クレジットカードとは、入会審査を通過して所有すると加盟店の店頭やWebサイトでの買い物やサービスの利用が代金後払いで可能になる決済用カードのことを指す。決済用カードとしてはクレジットカードのほかに、あらかじめ前払いで一定金額を積み立てておく「プリペイドカード」と、利用すると即時に銀行口座などから代金が引き落とされる「デビットカード」などがある。
クレジットカードの仕組みは1800年代後半にアメリカで誕生したと言われる。現在世界的には、アメリカに本社を置く「ビザ」と「マスターカード」が国際ブランドの双頭として知られている。アメックスという通称で呼ばれる「アメリカン・エキスプレス」や日本企業が発行する「JCB」も国際ブランドとして有名で、中国の電子決済システム会社である中国銀聯が発行する「銀聯(UnionPay)カード」も国際ブランドとしての地位を築きつつある。
(2)イシュアとは? クレジットカードの発行会社のこと
イシュアとは、クレジットカードの発行会社のことで、英語で「issuer」と書く。国際ブランドが自ら発行会社を兼ねてクレジットカードを発行・運用しているケースと、国際ブランドとは別のクレジットカード会社が国際ブランドにライセンス料を支払った上でカードを発行しているケースの2タイプがある。
ビザやマスターカード、銀聯は自らクレジットカードを発行していない。そのため例えば日本国内では、メガバンク系の場合は三菱UFJフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループなど、小売・流通系の場合は楽天やイオンクレジットサービスなど、信販会社系ではジャックスなどが発行会社となって、クレジットカードが発行されている。一方でJCBやアメリカン・エキスプレスは自らクレジットカードを発行している。
(3)アクワイアラとは? 加盟店との契約や管理を担当する会社のこと
アクワイアラとは、クレジットカード加盟店の獲得営業や売上管理などを行う加盟店契約会社のことで、英語では「acquirer」と書く。クレジットカードの保有者がクレジットカードを契約加盟店で利用すると、加盟店からアクワイアラに手数料が支払われる。一方、アクワイアラは前項で説明したイシュア(クレジットカード発行会社)と国際ブランドに手数料を支払う。加盟店から受け取った手数料とクレジットカード発行会社と国際ブランドに支払った手数料の差額が、アクワイアラの収入となる。
国際ブランドであるJCBやアメリカン・エキスプレスは自らクレジットカードの発行業務(イシュア業務)を有していることも前項で説明したが、この両ブランドは加盟店契約業務(アクワイアラ業務)も自社で完結させているのが特徴となっている。
(4)利用限度額とは? 未払いで利用できる金額の上限のこと
利用限度額とは、未払いで利用できる金額の上限額のことを指す。例えば利用限度額が100万円と設定されているカードで未払い金額が60万円の時点では、利用可能額が40万円残っていることとなる。未払い金額が0円の時点では、後払いで100万円まで利用できる。
発行会社がクレジットカードの申し込みを受け付けた場合、信用情報機関に登録されている過去の申込・利用履歴や返済状況などのほか、申込者の年齢や勤務先、雇用形態、年収なども含めて支払い能力に関する横断的な審査が行われ、カード発行の可否や利用限度額を最終的に判断する。審査基準はクレジットカードの発行会社によって異なり、カードの種類によってもそれぞれ設定されている。
(5)キャッシングとは? クレジットカードを使って現金を借りること
キャッシングとは、クレジットカードを使って現金を借りることを指す。キャッシング枠がゼロ円と設定されている場合は利用できない。キャッシング枠はクレジットカードの利用限度額の範囲内で設定される。
例えば、利用限度額が100万円でキャッシング枠が30万円と設定されていた場合、過去の買い物などの未払い料金が50万円の場合はキャッシング枠を30万円までフルに利用できるが、未払い料金が90万円の場合はキャッシング枠のうち10万円までしか利用できない。また逆に、キャッシングを30万円までフルに使っている場合は70万円までしか後払いの買い物に利用できず、キャッシング枠を10万円分利用している場合は90万円までの後払いの買い物ができる。
(6)クレジットヒストリーとは? 個人ごとのカード利用履歴などの信用情報
クレジットヒストリーとは、通称で「クレヒス」とも呼ばれ、信用情報機関で利用者ごとに管理・記録されているクレジットカードの利用履歴のこと。クレジットカードの発行会社はクレジットカードの申し込みがあった際、申込者のクレジットヒストリーを信用情報機関に照会して契約の判断材料にしている。
日本にある信用情報機関は、日本信用情報機構(JICC)とシー・アイ・シー(CIC)、全国銀行協会(JBA)の3機関で、個人でも問い合わせをすれば信用情報について開示を受けることができる。延滞の有無や自己破産歴、契約情報や借り入れと返済の状況などの情報が保存されており、情報の種類によって保管期限が設けられていることも特徴だ。
(7)(8)分割払いとリボ払いとは? 利用代金の支払い方法に違い
分割払いとリボ払い(リボルビング払い)とは、どちらもクレジットカードの後払い方法の名称である。一般的にはどちらも金利がかかる。分割払いの場合、利用者は加盟店で買い物をするときに支払い回数を決めて月々料金を支払っていくが、リボ払いではあらかじめ毎月の支払い料金が決められており、買い増しをしても月々の支払料金は基本的には変わらない。
リボ払いは、利用限度額の範囲内で買い物をいくらしても月々の返済額は一定になるため利用しやすいという側面もあるが、安易に購入額を増やすと支払いが完了するまでの期間が長引き、最終的に支払う金利分の合計金額が大きく増える懸念もある。
(9)コーポレートカードとは? 法人向けに発行されたクレジットカード
コーポレートカードとは、大手の民間企業などを対象として発行されるクレジットカードのこと。発行会社と企業との間の契約の形態によって、企業ごとまたは企業内の部署ごとなどに発行され、それぞれ利用限度額が決められているのが特徴だ。
コーポレートカードは一般的に会社経費の支払いに使われる。社員がコーポレートカードを使って交通費や出張費、接待費、備品の費用などを後払いで支払い、企業側はあらかじめ指定された支払日にカード会社に利用代金を支払う仕組み。企業の経理担当にとっては、社員が必要な都度に現金を渡す手間なども減り、カードの利用履歴などを一括参照できることで経費計算などが容易になるなどのメリットがある。
(10)セキュアカードとは? 預金を担保に利用限度額が決まるクレジットカード
セキュアカードとは、クレジットカードの利用上限額を銀行預金額の範囲で設定しているクレジットカードのこと。「セキュアードカード」や「セキュアクレジットカード」とも呼ばれる。一般的なクレジットカードが本人の支払い能力などの信用を基に利用限度額を設定しているのに対し、セキュアカードは保証金として口座に預け入れられた金額に応じて設定される。
セキュアカードの仕組みはアメリカ系のクレジットカードで採用されていることがある。一般的には、信用情報機関で記録されている本人の利用履歴(クレジットヒストリー)が良好ではなかったり、初めてクレジットカードを申し込んだりする人が利用することが多い。
(11)(12)スキミングとフィッシングとは? カード犯罪で使われる主な犯行手口
スキミングとフィッシングとは、両方ともクレジットカード犯罪で用いられる犯行手口のこと。
スキミングでは、クレジットカードの磁気情報が読み取られてクローンカードが作られるとATMなどで不正利用されてしまう。クレジットカード自体が盗まれなくても、財布から抜き取るなどして一時的に手にしたカードが装置で読み取られたり、細工されたATM端末で情報が盗み取られたりする。店側が買い物客から預かったクレジットカードをスキミングするケースもある。
フィッシングでは、金融機関のWebサイトを装った偽サイトでクレジットカード番号やセキュリティコードを入力してしまうと、オンラインショッピングなどで不正に利用されてしまう。
(13)セキュリティコードとは? 不正利用防止で設定されている3~4桁の数字
セキュリティコードとは、クレジットカードの不正使用を防ぐことが目的で設定される3~4桁の数字のこと。クレジットカードの裏面にある署名欄に添えて印字されている。セキュリティコードと似た仕組みとして「3Dセキュア」があるが、これは各クレジットカード会社が独自に運用している登録性のパスワード認証システムのことを指す。
このセキュリティコードの数字情報を加盟店側が記録することは禁止されており、クレジットカードの利用明細書などにも記載されることはない。一方、フィッシングなどによって利用者のクレジットカード番号とセキュリティコードの両方が第三者に知られてしまった場合は、不正利用を防止することが難しくなる。
(14)サインレス決済とは? 時間短縮に向けて保有者の署名を省くシステム
サインレス決済とは、店頭でクレジットカードを使って支払いを行う際、本人の署名なしに手続きを完了させるシステムのこと。原則的にサインレス決済は1回払いのみの対応となっているほか、少額決済のとき以外は利用することができない。コンビニエンスストアやレストラン、スーパーなどで導入されていることが多い。
サインレス決済を導入できる加盟店は、事前にクレジットカード会社と契約を結ぶ必要がある。導入の主な目的は時間短縮のためで、加盟店側にも利用者側にもメリットがあることが特徴となっている。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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