自宅でもリモートワークはできるけれど、大事な会議が入っている日には、ホテルなど静かな環境を用意したくなる。とくに小さなお子さんが家庭にいる人の場合、会議中に乱入してこないかと、心配で落ち着かないこともあるだろう。
ビジネスマンの需要を見越してか、リモートワーク向けのデイユースプランを充実させているホテルも増えている。そんななか、一風変わった客室貸しプランを提供し、話題となっているホテルがある。2021年9月に、下北沢に誕生したMUSTARD™ HOTEL SHIMOKITAZAWA(マスタードホテル下北沢)だ。
■使い方はアイディア次第。30分500円でホテルの客室を利用できる
小田急電鉄では、2019年3月に和泉多摩川と東北沢間の複々線化を完了し、それにともない、世田谷代田から東北沢間を地下化。地上にあった線路や施設が撤去され、跡地の再開発が進められている。とくに大きな変貌を遂げているのが下北沢である。
下北線路街と名付けられた線路跡地には、「reload」と呼ばれるセレクトショップやカフェなどが集まる商業ゾーンができ、ちょっとしたライブや演劇といったパフォーマンスができる設備を持つカフェ「ADRIFT」もオープンした。そして、2021年9月に開業したのがMUSTARD™ HOTEL SHIMOKITAZAWA(マスタードホテル下北沢)である。
同ホテルの客室には通常は必ず置いてあるテレビがない。その代わりに設置されているのが、レコードプレーヤーだ。ホテル内には、人気レコードショップ「Jazzy Sport」がセレクトしたソウル、ジャズ、ヒップホップなど、約300枚のレコードがストックされており、宿泊者はそれらを無料でレンタルして、部屋で聴くことができるというシステムになっている。こうした環境を手軽に体験してもらおうと、はじめたのが、30分500円でホテルの客室が利用できるというワンコインサービスだ。
「シャワーだけは使用不可なのですが、客室のレコードプレイヤーは自由にお使いいただけます。下北沢はレコードショップがまだ残っているので、帰る前に試聴したいと買ったばかりのレコードを持って来られるお客様もいます。もちろんお昼寝をしたり、リモート会議に使っていただいたり、お子さんのお稽古が終わるまで客室で休憩されるお母さんもいらっしゃいます」と、支配人の森裕之さん。
■劇団員が発声練習やセリフの読み合わせをする場所としてホテルを活用
客室はレコードプレイヤーを設置しているだけあって、防音設計になっている。そのため、ベッドに横になりながら、気兼ねなく音楽を楽しむことができるという。レコードを聴くためにホテルの一室を利用するという、なかなか斬新なアイディア。
「下北沢は古くから演劇の街として知られ、いまでも小劇場がたくさんあります。レコードショップや古着屋など、独自のカルチャーも育んできた街なので、このホテルも人が気軽に集まることができる場所として、機能させたいと思っています。劇団員の方が発声練習をしたり、セリフの読み合わせをする場所としても、客室を利用していただきたいですね。また観光客だけではなく、近隣の方々にも活用していただきたいと思っていますので、たとえば針やマッサージの資格を持っている人に一時的に客室を貸し出して、営業していただくような利用法も模索しています」
再開発によって、シモキタらしさが失われてしまうのではないかと、変化する街並みに不安を抱く声も出ていた。この調子なら、まだまだ下北らしい文化が発信されそうだ。
MUSTARD™ HOTEL SHIMOKITAZAWA
取材・文/梅中伸介(verb)
提供元・男の隠れ家デジタル
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