きらめくビーカーや試験管に囲まれた端正な空間。元研究者が開いたサイエンスバー「INCUBATOR」は、DNAや神経細胞の美しさに戯れ、科学の夢に遊ぶ大人の秘密の隠れ家だ。科学に触れながら、一風変わった酒に酔いしれるとしよう。

まるで研究室のような異色の空間

潰したイチゴとパイナップルジュースを合わせて果汁を濾(こ)し、コニカルビーカーに注いだ上から強いホワイトラムを少々。出された液体をしばし見つめていると……、表面に白いワタ状のものが浮いてくる。

「イチゴのDNAが析出されたんです。エタノール沈殿という手法です」と店主の野村卓史さんが言う。名付けて『苺のDNAカクテル』だ。ビーカーから直接口に運べば、実験結果の味は甘酸っぱく爽やかだ。
 

男の隠れ家デジタル
ラムベースの「苺のDNAカクテル」。好みで右のビーカーの果汁を混ぜて飲む。(画像=男の隠れ家デジタルより引用)

大学院で発生生物学を専攻した野村さんが、まるで研究室のようなこの店を開いたのは2014年の3月。様々な実験機材を愛で、科学の話題を共有できる場を持ちたかったのだという。そのユニークさにがぜん注目が集まり、今や理系文系問わず、様々な層の客からの予約が入ってくる。
 

男の隠れ家デジタル
アルコールランプで焼く干物が面白い。ビールもフラスコで。(画像=男の隠れ家デジタルより引用)

ワイン用グラスの用意はあるが、飲み物は基本的に大小のビーカーやフラスコで供される。試験管に入れた「ワイン赤白飲み比べ8種」も人気だ。チーズフォンデュや干物に使うのはアルコールランプ。突出しの干しイチジクは遠心分離機などで使う遠沈管に入っている。
 

男の隠れ家デジタル
顕微鏡写真が流れるスクリーンと、左はサイバー攻撃のトラッキング映像。(画像=男の隠れ家デジタルより引用)

スクリーンに映る神経細胞や血管などの顕微鏡写真が美しい。元同僚や野村さんが研究機関在籍時に撮影したもの。ほかにネイチャー系動画も流れ、世界のサイバー攻撃トラッキングなども興味深い。

奥に置かれた本格的な顕微鏡やプレパラートで遊ぶのも自由である。時には、科学の最前線を専門家がわかりやすく語る研究者ライブも開催しているという。
 

男の隠れ家デジタル
白衣を着てひとときのサイエンティスト気分が味わえる。(画像=男の隠れ家デジタルより引用)
男の隠れ家デジタル
極小ビーカーでいただくワインの飲み比べ。(画像=男の隠れ家デジタルより引用)

形だけではない本物の科学に触れられるのが楽しい。店を出る頃にはなんだか少し賢くなった気がするのは思い過ごしだろうか?

文/秋川ゆか 写真/古末拓也

情報概要

住所 東京都新宿区荒木町7 新駒ビル1F
電話 03-5925-8832
営業時間 18:00~26:00
定休 日曜、月曜、祝日
席数 カウンター(6席)
テーブル(12席)
チャージ 500円
クレジットカード VISA,MASTER,AE
駐車場 なし
アクセス 丸ノ内線「四谷三丁目駅」より徒歩約3分
URL https://incubator-sciencebar.owst.jp/

男の隠れ家デジタル編集部
いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。
我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

提供元・男の隠れ家デジタル

【関連記事】
好きな文字を彫刻して自分だけのオリジナルに。老舗時計メーカーとベテラン彫刻師が創る「PRINCE 銀無垢トノー型腕時計」
「青いオーシャンと乾いた風の中に身を置くことで、またここに帰ってこようと思える」| 吉田栄作
飲み屋で語れるお酒の雑学。~「焼酎」の甲類・乙類の違いとは?~
山登りを安全に楽しむため、登山の前には必ず提出すべき「登山届」について知ろう
庭園や文化財の書院と名物の湯豆腐を満喫 南禅寺 順正 〈左京区〉┃奥・京都の名店