日本のミミズがアメリカを侵略しているようです。
『Soil Biology and Biochemistry』の10月号(vol.149)に掲載された論文によると、アメリカに渡った日本のミミズが大繁殖を起こし、森林の土の微生物バランスを日本化させているとのこと。
日本において肥沃な土地の代名詞でもあるミミズは、アメリカで「クレイジーワーム」として知られています。いったいアメリカはどんな迷惑を受けているのでしょうか?
日本のミミズは落ち葉の絨毯を壊滅させる
ミミズが豊かな土地を作ると言われているのは、彼らの食べ物が原因です。
ミミズは落葉樹や枯草が落とす葉を体内で消化して糞として土に排出することで、窒素やリンといった豊かな栄養素を土に供給します。
そのため、日本の豊かな森林土壌の維持にとって、ミミズは大切な存在になっています。
しかし、アメリカの落葉樹林では落ち葉の絨毯は、水の過剰な蒸発を防いだり病原菌を遮断するといった、皮膚のような働きをしていました。
また落ち葉の絨毯は、落葉樹自身の種が発芽するにあたって、湿度の維持をはじめ非常に重要です。
にもかかわらず、日本のミミズは葉を食べる速度が非常に早く、アメリカの落ち葉の絨毯を、あっという間に食べつくしてしまうのです。
落ち葉の皮膚の喪失は、土壌の乾燥や病原菌の蔓延を引き起こすだけでなく、落葉樹の種の発芽を妨げ、森林の世代交代も阻害することになります。
しかし、より深刻な問題が見えない部分にもありました。
ミミズは土壌中のミクロ世界を日本化する
深刻な問題はミクロの世界で起きていました。
研究者が日本のミミズがいる土といない土を比較した結果、土に棲む微生物群の構成が大きく異なっていることが判明します。
研究者が新たに現れた微生物のDNAを調べた結果、興味深いことに、周囲の土からみつかった微生物はミミズ体内の微生物群と一致していました。
ミミズは消化管内部に複雑な微生物群を抱えており、これら微生物群が糞とともに排泄され、周囲の土も日本型に作り替えていたのです。
ミミズによって火星の土を地球型に作り替える…といったテラフォーム技術が提案されていますが、日本製のミミズは既に現実世界で、アメリカの土を勝手に日本型に作り替えてしまっているようです。
目に見えない変異が一番怖い
コロナウイルスのパンデミックや抗生物質耐性菌の蔓延のように、ウイルスや細菌の真の恐ろしさは、目に見えない部分で発生します。
アメリカの土が日本型の微生物群に作り替えられている現象は、今のところ、人間に直接の被害をもたらしているようには見えません。
しかし最新の研究により、微生物は複雑な共生世界を築いていることが判明しています。
1gの土には1億個の細菌が存在し、数百メートルに渡るカビ菌の菌糸を利用して高速移動する…ということまで確認されているのです。
このような菌類の高度な共生関係は、一度破壊されてしまえば取り返しがつきません。
また、微生物環境の変異は、予測できない病原菌の発生を引き起こす可能性もあります。
今日、見えない環境で滅んだ微生物が、ペニシリンの元となったアオカビのように人類を救済してくれた可能性も、なくはないでしょう。
【編集注 2020.10.05 14:00】 記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。
参考文献
Sciencenews
/ sciencedirect
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功