今、美食家の間で最も話題になっているレストランのひとつであろう京都・東山三条にオープンした【LURRA°(ルーラ)】。カウンターの奥には薪窯が2台あり、流暢に日本語を話す外国人シェフがその火を巧みに操り、独創的な料理を次々と作り上げます。コースにはドリンクペアリングがつき、その飲み物もまた創造的。新しい料理の世界を垣間見られるとともに、一度体験すると忘れられない感動がそこにはあります。

ニュージーランドで出会った若き3人の才能

  • 薪火だけで作られる独創的な料理
  • 料理をさらに昇華させる秀逸なペアリングドリンク
  • ニュージーランドで出会った若き3人の才能

    東山三条の大通りから1本奥へと入った閑静な街並みにできた、築130年ほどの古民家を改装したレストラン。店内は温かみのあるモダンな空間で、カウンターの奥には薪窯がふたつあり、外国人のシェフと数名のスタッフが和やかに出迎えてくれます。そう、此処こそが2019年7月にオープンし、京都で今話題となっているレストラン【LURRA°】です。
     

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左から、ゼネラルマネージャーの宮下拓己さん、シェフのジェイカブ・キアーさん、ミクソロジストの堺部雄介さん(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

オーナーは、日本とアメリカにルーツを持つシェフのジェイカブ・キアーさんとゼネラル・マネージャーの宮下拓己さん、ミクソロジストの堺部雄介さんの3名。ともに20代、30代という若き3人は、世界中の有名レストランを渡り歩き研鑽を重ねた後、ニュージーランドのトップレストラン【Clooney(クルーニー)】で出会いました。ヘッドシェフ、ヘッドソムリエ、バーマネージャーとして働き、次第に将来の目標を共に夢見るように。そして店の一時閉店をきっかけに3人で独立し、新たに世界を目指す場所として京都を選びました。
 

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『寒鰤、発酵トマトとケール』。寒鰤を24時間昆布締めにした後、藁で軽くスモーク。ローストしたトマトを乳酸発酵させて作ったジュレをのせ、タピオカとケールのチップスと一緒に(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

「京都は大原など季節を感じる旬の食材も多いし、職人さんもたくさんいるし伝統や文化がある。カルチャーを発信していくのにここ京都ほど適している場所はないと思いました」と宮下さん。シェフのキアーさんも「山に入って季節を感じ、日本の食材を使いながらも、ほかにはないもの、LURRA°らしいもので日本の表現の仕方を探っていきたいです」と。

店名の「LURRA」とは、バスク語で地球。そして「°」は地球を回る月を表し、世界にここ以外にはない「LURRA°」という座標を意味しているのだそう。その思いを現したかのようなここだけでしか味わうことができない、まったく新しい食体験に出合えるのです。

薪火だけで作られる独創的な料理

【LURRA°】では、17時30分からと20時30分からと1日2回一斉スタートで食事が始まり、メニューはドリンクペアリングがついたコースがひとつのみ。
 

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どの位置からも薪窯が見ることができるL字型のカウンター。キッチンが1段低く作られており、作業のひとつひとつを手元まで眺め楽しむことができます(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

料理を目の前にしてまず初めに感じるのは、四季の移ろいと自然が持つ色の豊かさと美しさ、力強さ。素朴な自然を感じつつもどことなく緊張が走るのは、目にした料理の味が全く想像つかないからかもしれません。口に含むと、いろいろな食感と共に甘みや酸味、塩味が複雑に絡み合い、香りがふっと鼻に抜けます。そしてペアリングのドリンクを飲むと、さらに奥行きのある味わいに。身近な自然そのものであるはずなのに、初めての感覚が怒涛のように押し寄せてきます。
 

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ナラの薪をくべ、600度にもなる新窯で野菜を焼くと中の水分は抜けずに一瞬で外側が焼けます。「薪窯は魔法のオーブン!野菜の味わいがぐっと深まります」とキアーさん(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

この料理を生み出すのは、シェフ・キアーさんの独創的なアイディアと店の心臓部でもある二つの薪窯。キアーさんは、世界NO.1レストランに何度も輝いているデンマークの【NOMA(ノーマ)】で研鑽を積み、【NOMA東京】のチームのひとりにも選ばれた人物。彼がこだわったのはガスを使わず、ケルン窯と薪窯の2種の薪窯を使い、調理をすることでした。桜の薪を使うケルン窯では肉の調理や燻製を。ナラの薪を使う新窯は野菜を焼き上げます。高温の窯を使うことで、中は瑞々しく外は香ばしく仕上がり野菜のうまみが存分に引き出されます。
 

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2階の発酵ルームには100種類以上の瓶詰があり、シェフ自ら採ったハーブや花を発酵や塩漬けにしながら保存。料理に風味と奥行きを与える欠かせないアイテムです(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

そしてもう一つ、キアーさんの料理に欠かせないアイテムが"発酵"です。北欧も発酵文化が根付いている国ですが、日本もまたしかり。キアーさんの少年時代は長野の祖父母の家に遊びに行くたびに山菜取りに出かけ、日本の食文化にも触れていました。「それが僕の料理の原点です」と語るように今も大原の里山に出かけては、ハーブや花、果実を摘んできてピクルスやジャム、塩漬け、コンブチャなどにして保存しています。

『ビーツ、プリザーブとルバーブ』。2種のビーツは窯でドライにしパイナップルやブルーベリーでグレイズ。カシスのシートをかけ、去年に収穫し保存した花や果実のピクルスをトッピング

【NOMA(ノーマ)】での修業時代も、発酵食品は北欧の長い冬を乗り切るために欠かすことのできない大切なものだと学んだと言います。この長い時間をかけて作られた発酵の旨みを料理に加えることで、まろやか酸味や甘みが複雑に絡みあい、さらに深みのある味わいを与えています。

一皿一皿驚くほどに緻密に計算され時間をかけて作られていながらも、炎の勢いや自然のもつ力強さをダイレクトに感じる伸びやかな料理の数々に新鮮さと驚きを感じずにはいられません。
 

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『雑穀米、聖護院かぶらと蕪菜』。季節ごとに顔を変えるシグニチャーの焼きおにぎり茶漬け。柚子の香りをつけてマリネした聖護院かぶらを菊花に、モルトと麹で作ったクッキーを小枝に見立てて(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

料理をさらに昇華させる秀逸なペアリングドリンク

【LURRA°】を語る上で、料理と共になくてはならないのが、ミクソロジストの堺部さんが作り出すペアリングドリンク(ノンアルコールもあります)です。ミクソロジーとは、mixとologyを組み合わせた造語で、“混ぜる科学”。1990年代にロンドンで発祥し、その後NYに渡り世界中へと広まって行ったカクテルの新しいスタイル。オーストラリアでこのミソクロジーに出会い、料理とカクテルのペアリングの可能性を模索し始めたと言います。単に混ぜるだけでなく、液体窒素を使って香りを抽出したり、発酵ジュースを使ったりとまさに科学。

「料理の味わいを消さないようにアルコール度数を下げたり、料理にはなかった味や香りを足したり引いたりすることで、一皿ごとに寄り添った飲み物を作ることができるのが魅力です」と堺部さん。飲むとこれまたまるで味わったことのないカクテル。しかしその苦みだったり、スパイシーな刺激だったりが妙にしっくりと料理になじみ、【LURRA°】のもつ世界観がより大きく膨らんでいきます。
 

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カクテルの原料となるジュースや酵素などもすべて手作り。「カクテル単体でのおいしさを求めるのではなく、あくまで料理に寄り添うことで完成する味を目指しています」と堺部さん(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

食事が終わると、全員で大きなテーブルに移動しデザートを。「家に友人を招待するようにリラックスしながら楽しめる空間を作りたかった」と宮下さん。共に同じ食事をし、時間を共有することで初めての方同士でも自然と会話が生まれるのだそうです。革新的な料理でありながら、ほっとするようなアットホームな居心地の良さに、おいしいや驚き以外にの“楽しい食事だったな”と印象に残る3時間。新たなる食の空間がここにはあります。
 

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“irori”と呼ばれる、大きなセンの木のテーブルに移動してデザートを。「ゆっくりと談笑を楽しみながら、ここから新たな出会いやカルチャーが生まれてくれたらうれしいです」と宮下さん(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

LIRRA°

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(画像=ヒトサラMAGAZINEより引用)

住所:京都府京都市東山区石泉院町396
電話:050-3196-1433
営業時間:17:30~、20:30~の一斉スタート
休日:月曜
コース:25,000円(税・サ別、3種類の前菜とドリンク1種、ドリンクペアリングついた5皿、2種類のデザートにドリンク1種の計10皿とドリンク7種)
※ペアリングドリンクは、アルコールとノンアルコールから選べます

文・ヒトサラ編集部/提供元・ヒトサラMAGAZINE

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