「タマリン」というサルをご存知でしょうか。
中南米の熱帯雨林にのみ生息する、オマキザル科の非常に小柄な霊長類です。
日本で暮らしていると、「見たことも聞いたこともない」という方がほとんどかもしれません。
いくつかの種類は、絶滅危惧種にも指定されており、施設内で保護されています。
そしてこのほど、ワシントンDCにあるスミソニアン国立動物園(Smithsonian’s National Zoo)にて、ドウグロタマリン(学名:Leontopithecus chrysomelas)のメスが、双子のベビーを出産したと発表されました。
同園で双子が生まれるのは、16年ぶりのことです。
タマリンは「双子出産」が普通
タマリンはとても小さなサルとして有名で、体長は平均13〜30センチ、体重はわずか220〜900グラムほど。
昼行性で熱帯雨林の樹上にて生活し、果物や植物、昆虫、鳥の卵、小型の脊椎動物など、わりと何でも食べます。
通常は、3〜9頭のコロニーで暮らしますが、40頭ほどが集まる大所帯もあるようです。
妊娠期間は140日前後で、もとから双子出産が多いとのこと。
母親だけでなく、父親や、そのほかの若い個体も養育に参加します。
成熟には2年かかり、野生では分かりませんが、飼育下での寿命は18年ほどです。
面白いのはその見た目で、種ごとにユニークな体毛をしています。
今回、スミソニアン国立動物園で生まれたのは、ドウグロタマリンの双子です。
英名では、ゴールデンヘッド・ライオンタマリン(golden-headed lion tamarin)と呼ばれ、顔まわりの金色の体毛が、ライオンのたてがみを思わせることに由来します。
ブラジル北東部・バイーア(Bahia)州の熱帯雨林にしか生息せず、個体数が年々減っています。
現状で、わずか6000頭しかいないとされ、国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種に指定されました。
主な原因は、森林伐採による生息地の減少です。
双子の親となったのは、同園で保護されているメスのローラ(Lola・3才)と、オスのココ(Coco・7才)です。
ローラとココの繁殖は、お互いに興味を持つステップから慎重に始められています。
飼育スタッフは、2匹を隣り合ったケージに置き、網目のスクリーンを挟んでゆっくり馴染むようにしました。
この方法で、お互いの姿や匂い、音に慣れさせ、網目の大きさによっては、少しだけ触れることもできます。
最初の観察で良好な結果が得られれば、スクリーンを取り外して、同じ空間を共有させます。
アシスタント・キュレーターのケントン・カーンズ(Kenton Kerns)氏は「ローラとココはすぐに互いに興味を持ち、一緒に過ごす時間も多かった」と話します。
ほどなく、ローラの体重が増えて、お腹が大きくなっていました。
そして、今月7日、ローラは妊娠4ヶ月で、無事に双子を出産しています。
スタッフは生まれたばかりの赤ちゃんを見ようとしましたが、すぐには見れなかったそう。
カーンズ氏によると、「双子は母親であるローラの背中にうずくまって、うまくカモフラージュし、姿が見えなかった」という。
しかし今では、上の写真のように、頭をあげてキョロキョロと周りを見回しています。
同園での双子タマリンの出産は、16年ぶりの快挙です。
まだ性別が確認できていないため、双子に名前は付けられていません。
半年後に最初の健康診断を行ったのちに、名前を決める予定とのこと。
この4人家族は園内で一般公開されていますが、双子を溺愛するローラとココは、世話に夢中で、来客には見向きもしないそうです。
参考文献
Zoo’s Historic Newborn Tamarin Twins Cling to Mom, Doing What Healthy Babies Do
提供元・ナゾロジー
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