25億年前のルビーから生命の痕跡が発見されました。

カナダ・ウォータールー大学(University of Waterloo)地球環境科学部に所属するクリス・ヤキムチャク氏ら研究チームが、最古のルビーの分析中に、その中に含まれていた特殊な炭素(C)を発見。

そしてこの炭素を分析した結果、これが古代生命の残留物である可能性が出てきました。

研究の詳細は、8月20日付の科学誌『Ore Geology Reviews』に掲載されています。

目次

  1. 炭素同位体の比率から生命の痕跡をたどる
  2. 25億年前のルビーから生命の証拠が発見される

炭素同位体の比率から生命の痕跡をたどる

25億年前の最古のルビーに生命由来の炭素が混ざっていた
(画像=かつて生命だったと判定するには? / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

生物はいずれ死にますが、その残骸が化石のように長年残ることがあります。

石のようなかたまりや微量な粉が、実は生物の死骸だったりするわけです。

では、「発掘されたなにか」が、生命だったことをどのように特定するのでしょうか?

1つの方法に「炭素同位体の比率」の調査があります。

同位体とは、同じ原子でも中性子の数が異なる存在のことであり、炭素の天然同位体は12C、13C、14Cの3つです。

これらは基本的に、12C:13C:14C = 99:1:0.0000000001の比率で存在していますが、大気中に含まれる炭素同位体の比率と生物の体に含まれる炭素同位体の比率にはいくぶん差があります。

つまり炭素同位体の比率を調べることで、その炭素が生命だったか否か判断できるのです。

25億年前のルビーから生命の証拠が発見される

25億年前の最古のルビーに生命由来の炭素が混ざっていた
(画像=発掘されたルビーにはグラファイトが含まれていた / Credit:Chris Yakymchuk(University of Waterloo)_Corundum (ruby) growth during the final assembly of the Archean North Atlantic Craton, southern West Greenland(2021)、『ナゾロジー』より引用)

研究チームは、ルビーの形成条件をより深く理解するため、世界最古のルビーが埋まっているグリーンランド南部を調査しました。

そして25億年以上前の岩石から、グラファイト(graphite)を含むルビーを発掘しました。

グラファイトとは六角形に並ぶ炭素原子が層状に重なってできた結晶です。

当然、ルビーに含まれていたグラファイトも25億年前の炭素原子の結晶だと言えます。

25億年前の最古のルビーに生命由来の炭素が混ざっていた
(画像=(左)グラファイト, (右)グラファイトの原子構造イメージ / Credit:(左) United States Geological Survey(Wikipedia)_グラファイト, (右)Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

そしてチームは、ルビーと一緒にこのグラファイトも分析。

その結果、生命の証拠を見つけることになりました。

グラファイトの炭素同位体の比率を調べたところ、「12Cの比率が大きい」という生物の特徴が表れていたのです。

そのためチームは、「この炭素原子は古代生命であり、おそらく藍藻(シアノバクテリア)のような微生物の死骸」だと結論付けました。

ちなみに25億年前の地球は大気中の酸素が少なく、生命は微生物しかいなかったと考えられています。

もちろん当時の状況を実際に確認することは誰もできません。

しかし今回のような生命の痕跡の発見は、今後も私たちに、はるか昔の生命について教えてくれるでしょう。


参考文献

Some of the world’s oldest rubies linked to early life

元論文

Corundum (ruby) growth during the final assembly of the Archean North Atlantic Craton, southern West Greenland


提供元・ナゾロジー

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