ランドローバーは2021年10月26日、ロンドンのロイヤル・オペラハウスという華麗な舞台で、予告通り新型「レンジローバー」を発表した。フルモデルチェンジした5代目となる新型「レンジローバー」は、電動化のために新開発された「MLA-Flex」プラットフォームを初採用し、他モデルではマイルドハイブリッド、PHEV、そして2024年には電気自動車モデルも投入する計画をしている。
モデル概要
新型レンジローバーは、新世代のモダンラグジュアリーを定義する新たなデザインを採用し、これまでで最も洗練性とパーソナライゼーションを極めたラグジュアリーSUVとして生まれ変わっている。
ニューモデルはモダンさと優雅な美しさ、洗練されたテクノロジー、シームレスなコネクティビティを備えており、さらに初めて7人乗りが選択できるようになった。
またこのニューモデルは、ランドローバーが追求するモダニズムのデザイン哲学をさらに洗練、進化させ、レンジローバーらしいフォルムを現代的に解釈し、誰もが驚くほどデザイン的な存在感を生み出していることも特筆できる。
ジャガー・ランドローバーのチーフ・クリエイティブオフィサーであるジェリー・マクガバン博士は、「自らのDNAを尊重しながらプロジェクトを前に進めることが核心で、まさに私たちはやり遂げました。私たちはモダニズムのデザイン哲学を持っており、ファッションやトレンドを追いかけるのではなく、余分なディテールを排除することで、モダンさを表現しながらも魅力に溢れ、感情的に訴えかけるクルマとして磨き上げ完成しました。新型レンジローバーは、ランドローバー史上最も魅力的なモデルということができます」と語っている。
新型レンジローバーは、後方へ向かってなだらかに下がるルーフライン、水平方向を強調したウエストライン、そして立ち上がるサイドシルラインなどはこれまでのDNAを受け継ついでいる。さらに欠かせない特徴的なショートオーバーハングと、格式高いフロントエンド、直立したフロントガラス、テーパー形状でボートテールのようなリヤもレンジローバーならではのプロポーションであり、比類のない存在感を伝える重要な要素として盛り込まれている。
またニューモデルの特徴は、凹凸のないデザインと厳しい組み立て公差にもある。フラッシュな面のデザイン、目立つことのないウエストライン、シームレスなレーザー溶接されたルーフジョイントなど最新技術を駆使して、まるでひとつの塊を削りだしたような洗練されたボディフォルムを実現している。そして点灯するまでその存在に気づかない特徴的なリヤライトもニューモデルを象徴するデザインとなっている。
今回のワールドプレミアでは、2022年に導入予定の新型「レンジローバーSV」も発表された。「SV」モデルは、ラグジュアリーさとパーソナライゼーションを極限まで追求し、卓越したクラフトマンシップにより作り込んだモデルだ。
専用のデザイン・ディテールとして、光沢のあるメッキメタル、滑らかなセラミック、複雑なモザイク模様の寄木細工、高品質のレザー、サステナブル(持続可能)な素材であるウルトラファブリックなどを選択して採用することができる。
そして、新たに設けたデザインテーマ「SV SERENITY(エスブイ セレニティ)」、「SV INTREPID(エスブイ イントレピッド)」は、フロントとリアのコントラストが効いたツートンカラーのインテリアを採用。電動で展開できるクラブテーブルや冷蔵庫など利便性の高い機能も備えており、最高の乗り心地を提供する4人乗り仕様「SV シグネチャースイート」も選択できるようになっている。
またSVモデルは、今回から新しくSVラウンデルと、レンジローバーSVという呼称となる。SVラウンデルは、モダンラグジュアリーさ、最高のパフォーマンス、最高の走破能力を目指し、スペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)のデザインと技術を表しており、今後SVOが手掛けるすべてのランドローバーモデルには、すべてSVラウンデルの車名となる。またレンジローバーSVは、SVラウンデルのデザインや技術を取り入れたモデルと位置づけられている。
「MLA-flex」プラットフォーム
新型レンジローバーは、ランドローバーの新しいアーキテクチャー「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」を採用した最初のモデルである。
「MLA-Flex」は、縦置きの内燃エンジン、プラグインハイブリッド(PHEV)、さらに100%電気駆動のフルバッテリー電気自動車(BEV)に対応できるフレキシブルなプラットフォームとして開発されている。多様なパワートレーンに対応でき、同時に品質の新たなベンチマークとなるための取り組みも並行して採用され、今後のランドローバーのシンプル化されるアーキテクチャー戦略の一歩となるプラットフォームだ。
新型レンジローバーのパワートレーンはマイルドハイブリッド(MHEV)、PHEVを選択でき、ボディタイプはスタンダードホイールベース(SWB)とロングホイールベース(LWB)の2種類。乗員数は4人乗り、5人乗り、7人乗りから選択できる(4人乗りと7人乗りはLWBのみ)。さらに、2024年には初のBEVがラインアップに加わる計画になっている。
2024年にデビューするBEVはランドローバー史上初の完全な電気自動車となる。これは、2030年までにジャガー・ランドローバーブランドの全モデルにピュアEVの選択肢を設定し、製品、開発、サプライチェーンのすべてを通じ、2039年までに排出ガス量実質ゼロの達成を目指すという目標に従った計画だ。
PHEVパワートレインはCO2の排出量を30g/km未満に抑え、「EVモード」での最大航続距離は100km(欧州WLTPモード値)を誇る。実航続距離は最大80㎞で、これは一般的なユーザーの1回の移動距離の75%を電力だけで走行できることを意味する。そのため容量38.2kWhのリチウムイオン・バッテリーをフロア下に搭載している。
なお駆動用モーターは105kW(143ps)の出力を発生。内燃エンジンは直列6気筒の3.0Lが縦置きに搭載されている。
また新型レンジローバーは革新的なテクノロジーも多く投入し、快適性と洗練された走りを支えている。第3世代となる新しいアクティブ・ノイズキャンセレーション技術により走行中も静粛な室内環境を実現。これは静かで密閉されたボディ・アーキテクチャーをベースに、車両の外側に設置したマイクとスピーカーを使用して、ノイズキャンセリング機能付きのハイエンドヘッドホンのように、室内の乗員に静かなパーソナルスペースをもたらす。
また、アレルゲン低減とウイルス除去のためのデュアル「ナノイーX」を搭載した「空気清浄システム・プロ」により、乗員の快適さを高めている。臭いやウイルスを大幅に低減し、CO2マネジメントとPM2.5キャビンエアフィルターで空気の質を改善する。
サステナビリティ(持続可能性)の考えは高効率なパワートレーンの選択肢のみにとどまらず、革新的な素材やプロセスを組み合わせることで、製造過程や走行時の環境負荷を軽減している。その一例として、レザーを使わないインテリア・オプションであるウール混紡の「プレミアムテキスタイル」がある。この素材は、レザーのような触り心地でありながら30%の軽量化とCO2排出量を4分の1に抑えた先進素材の「ウルトラファブリック」との組み合わせを選択できる。
レンジローバーならではの走破能力と快適な乗り心地は、先進的な「インテグレーテッド・シャシー・コントロール(ICC)システム」によって支えらえている。このシステムは、この種の車両にこれまでに搭載されてきたものを上回るシャー・シテクノロジーとして実現されている。
「オールホイール・ステアリング」は、卓越した高速安定とランドローバー史上最少の回転半径を実現。新機能である「ダイナミック・レスポンス・プロ」は、あらゆる環境下で落ち着きのある乗り心地と敏捷性を高めるために素早く反応する電子制御ロールコントロールだ。
フルモデルチェンジされた第5世代の新型レンジローバーは、英国でデザイン、開発が行なわれ、歴史的拠点である英国のソリハル製造工場の最新の生産ラインで製造される。新たな投資により品質向上を推し、さらにMHEV、PHEV、およびBEVを、同じライン上で組み立てることができるようになっている。
新型レンジローバーは電動化を積極的に推進するジャガー・ランドローバー社を象徴する革新的なモデルということができる。
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