皆さん「ラーテル」という小動物をご存知でしょうか?

フェレットのような見た目、イエネコぐらいの大きさ、スカンクのような白黒の配色をした生き物です。

見た目から「可愛い」「ペットにしたい」と思う方も多いでしょう。

しかし、その気持ちは、この記事を読まれた後まで持つでしょうか?

実は「陸上生物で最強」と言われるくらい、強い武器や性格を持っている生物なんです。

今回はそんなラーテルの生態に迫ります。

目次

  1. ラーテルの分類・生態
  2. ラーテルが最強と恐れられる理由は?
  3. ラーテルには天敵がいない

ラーテルの分類・生態

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=ラーテルの仲間「イタチ」 / credit:パブリックドメイン、『ナゾロジー』より 引用)

分類、大きさ、住処

ラーテルは、イタチ科に属しており、大きさは体長約70cm、尾長25cm、体重10kgほどです。つまり、大きさは小型犬ほどしかなく、コンパクトに収まっています。

住処は、乾燥地、森林、湿原などの、他の動物やラーテル自身が掘った穴です。

ラーテルはアナグマとは別の生き物ですが、形態が似ているアナグマと同じように穴に住むのですね。

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=巣穴 / credit:パブリックドメイン、『ナゾロジー』より 引用)

ちなみに、DNA上別の系統に属している生き物であっても、形態や住処が似ていると同じ習性を持つことは、生物界ではよくあることです。

食性について

そんな小さなラーテルですが、食性は雑食です。果物や他の動物の肉、稀に同族である小型のラーテルを襲うことすらあります。

さらには、単独、夫婦、ごく少数の群れで広範囲を常に早歩きして回り、目に入った捕食対象を手当たり次第に攻撃します。

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=獲物を追いかけるネコ / credit:いらすとや、『ナゾロジー』より 引用)

なんとも忙しなく、落ち着きがない行動をするのです。

活動性は夜行性とされるものの、昼間に活動することも多くなっています。

雑食のラーテルですが、最たる好物はハチミツで、ラーテルの和名「ミツアナグマ」はこのことが由来です。攻撃的で落ち着きがないラーテルですが、名前はとても可愛いですね。

ラーテルが最強と恐れられる理由は?

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=「怖いもの知らずの動物」のイメージ / credit:いらすとや、『ナゾロジー』より 引用)

せっせか動き回り、手当たり次第に獲物を襲うラーテルですが、ギネスブックでは「世界一恐れを知らない動物」と認定されています。

決して無鉄砲なわけでなく、恐れを知らない理由はきちんとあります。

ラーテルは主に7つの武器を持っているので、自然と自信満々になってしまったんです。

①分厚く丈夫な毛皮

②伸縮性、柔軟性に富んだ皮膚、身体

③蛇毒へ耐性があり、毒蛇を捕食しても数時間動きが止まるだけ

④肛門付近の臭腺から、くさい臭いをジェット噴射できる

⑤耳障りなうなり声

⑥四肢にある発達したカギ爪での攻撃

⑦獰猛、攻撃的、ズル賢い、したたかな性格

以上の武器を駆使し、ジャイアントキリングを達成することもあるんだとか。

ラーテルの主要な武器である皮膚について、どんな機能があるのか解説していきます。

皮膚や身体の丈夫さ、伸縮性、柔軟性について

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=噛まれている人 / credit:いらすとや、『ナゾロジー』より 引用)

まずはラーテルが持つ武器のうち、最大の武器と言われている「皮膚鎧」について解説します。

ラーテルの皮膚は分厚くなっており、猛獣の牙、爪が簡単には貫通しません。

しかし硬いだけでは、噛みつかれたままくわえられて、捕まってしまうことがあります。

そこで、ラーテルは背後からライオンなどに背中を噛みつかれた際、背中の皮膚を柔軟に伸ばし、クルッと完全に後ろ(ライオンの顔面の方)を振り返ることができるんです。

振り返ったということは、することは「逃げ」ではなく「反撃」であり、ラーテルはそのまま怒りの矛先をライオンに向け、顔面に噛みつきます。

多くの猛獣の顔面の弱点の1つは鼻ですから、ラーテルはライオンから離れることができます。

さあ、あとは逃げるだけ!…と思いきや、ラーテルは逃げずに攻撃に転じてしまいがちなんです。これには、ラーテルの性格が関係しています。

性格について

ラーテルは、武器をたくさん持ち自分が強いことを自覚しているため、大抵の小型動物が恐れる大型獣、人、毒蛇にも一切怯まず挑んでいきます。

「最強かつ最恐」の性格であるラーテルは、大型獣や毒蛇に襲われた際に自ら攻撃しに行きます。

多くの動物は、自身より目線の高い動物、毒を持つ動物を恐れますが、ラーテルにはその常識が一切通じません。

小さなラーテルが、尾を高くあげながら、大きなライオンにズンズン挑んでいく映像は衝撃的です。

小さなチワワが家族を守るために懸命に吠える姿に、感動を覚えることはありますが、ラーテルはそうではありません。

ラーテルは大抵の場合「自分の気が済まないから戦いを挑んでいる」のです。

ラーテルはしょっちゅう歯をむき出した表情をしていますが、それはこういった獰猛な性格からでしょう。性格は顔に出るとはよく言ったものです。

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=威嚇するラーテル / credit: WallpaperAccess、『ナゾロジー』より 引用)

また、ラーテル自身が死んだふりをして相手の隙をついたり、わざと相手の急所(睾丸など)だけを狙って攻撃することもあります。

子ライオンにはラーテル自身から向かっていくものの、大人のライオンが来たら逃げ腰になり、また子ライオンだけになると向かっていく…といような、ズル賢こく、したたかさな性格も持ち合わせています。

さらには、繁殖期になると、その性格はより獰猛になるんです。

余談ですが、ラーテルの名が戦闘車、銃、ロック商品の名前、モチーフに起用されることもありますが、これはラーテルの「最強さ」にあやかってのものなのです。

鳥との協力関係を結んでいる

最強かつ最恐と恐れられるラーテルですが、その好物は可愛らしく「ハチミツ」でした。そのハチミツの獲得方法がとても独特なんです。

ハチミツの獲得にはミツオシエ(英名:ハニーガイド)という鳥の存在が欠かせません。

ミツオシエはハチの巣を見つけると鳴き声をあげ、ラーテルをその在処まで先導します。

そして到達したラーテルは、力任せにハチの巣をぶっ壊します。

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=ミツオシエ(別名:ハニーガイド) / Credit: wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

自分自身ではハチの巣を壊す腕力のないミツオシエですが、ラーテルが壊してくれた後、おこぼれのハチミツ、ハチの幼虫にありつくことができます。

こういった、相互に利益のある関係を「共生」といいますが、まさにラーテルとミツオシエは共生関係なのですね。

ラーテルには天敵がいない

大型肉食獣、蛇がやや天敵

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=ライオン / credit:パブリックドメイン、『ナゾロジー』より 引用)

最強かつ共生関係までもっているラーテルですが、天敵は一切いないのでしょうか。

その答えは「ラーテル的には、いない」です。

大型のネコ科(ライオン、ヒョウ等)、イヌ科(ハイエナ、ジャッカル等)、ワニなどの肉食獣には、実際の腕力では叶わないため、力負け、数負けして捕食されてしまうこともあります。

つまり、他者から見ると「大型肉食獣がラーテルの天敵」とも言えそうですね。

しかし、ラーテル自身が大型獣に反撃することもできるため、襲われても反撃できることも多いんです。

ラーテルが大型獣を捕食することはないものの、怪我を負わせたり、急所攻撃により殺した例すらあるほどです。

また、ヘビとは相互に捕食関係にあり、ラーテルが捕食することも、捕食されることもある不思議な関係で、まるで永遠のライバルのようです。

また、大抵の動物にとって天敵は「恐れ」の対象ですが、前述した通りラーテルには、あまり恐れの感情がありません。

ラーテルの心の声が聞くことができたら「天敵?怖い者ってこと?なら、いないけど」と一蹴されてしまうでしょう。

このように、ライオンすら一蹴するラーテルですから、事実上「食物連鎖の頂点に君臨している」と言っても過言ではありません。

好物のハチ、仲間のミツオシエが天敵?

天敵がほぼいないラーテルですが、その死を直接的に誘発する生物がいます。

それは、まさかの大好物ハチミツをつくるハチと、共生関係だったはずのミツオシエです。

ラーテルの顔は毛が薄くなっているため、大量のハチに刺された際、毒でショック死してしまうことがあるんです。

蛇毒への耐性は強いラーテルですが、大量のハチ毒には対応することができないという弱点があります。

また、そんな天敵ハチのもとにナビゲートをするミツオシエも、ラーテルにとっては死神なのかもしれません。

世界最強の陸上生物「ラーテル」の正体とは?
(画像=ミツバチ / credit: depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

まとめ

ギネス認定「世界一恐れを知らない動物」であるラーテルですが、ただ無鉄砲な性格、というわけではありませんでした。

最強の武器を持っているからこそ、自然と自信満々な性格になったのです。

私たちも、ラーテルぐらい強気に強敵に立ち向かえるための武器を持ちたいものですね。


参考文献

Habitat selection of honey badgers: are they at the risk of an ecological trap?, Hamed Sharifi

The Honey Badger of BFT Protocols, Andrew Miller(PDF)


提供元・ナゾロジー

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