人類はこれまで、地球上のありとあらゆる場所を探索してきましたが、まだ謎だらけの世界があります。
その一つが「深海」です。
実は、深海の世界は、火星の表面ほども理解されていないと言われています。
また、深海に生息する生物も謎だらけ。
奇抜な体、鎧(よろい)のような角、脇腹から生え出たトゲ、鮮やかな体色など、地上では見られないモンスター生物がごまんといます。
中でも多いのが、ミニチュアサイズの幼生です。
フロリダ国際大学(Florida International University・米)の研究チームはこのほど、種名や属名が分かっていない深海の幼生を採取し、既知の成体種と照らし合わせることで、14種の特定に成功しました。
それによると、ほとんどがエビの幼体だったようです。
研究は、9月23日付けで学術誌『Diversity』に掲載されています。
モンスターの正体は「ほとんどエビ」
研究チームは今回、メキシコ湾内の深海に大型の網を投入して、幼生の標本を採取しました。
それを研究室に持ち帰り、遺伝子検査や進化系統図での分析を行い、どの種に属するかを調査。
さらに、すでに知られている深海の成体エビと照合することで、それぞれの幼生がどの種に当たるかを調べました。
結果、採取された標本のうちの14種が、既知種の成体エビの幼生に当たることが判明しています。
研究主任のヘザー・ブラッケン=グリソム(Heather Bracken-Grissom)氏によると、今回確認された種の中には、ライフサイクルを通じて様々な幼生期を経験している種があったとのこと。
エビは複数の幼生期を経ることで知られますが、今回採取された標本では、幼生の姿が確認されているのはほんの一握りで、まったく見たことないものが多くを占めていました。
グリソム氏は、次のように説明します。
「これらの幼生の多くは中深海層、つまり水深200~1000メートルのエリアに生息し、その後、成体になるとさらに深い場所に移動します。
幼生の大半は、深海魚や深い場所に潜る海洋哺乳類、タコやイカの餌となるため、深海の食物連鎖において重要な役割を果たしています」
本調査では14種の幼生の正体を明らかにできましたが、まだ種名の分かっていないものは膨大にいます。
そもそも深海には、見つかってすらいない生物がたくさんいるはずです。
グリソム氏は、こう述べています。
「深海には、数え切れないほどの生物が様々なライフサイクルの段階にあり、私たちは、そのどれが父親あるいは母親で、どれが子どもに当たるかを知りません。
生物多様性の名のもとに、神秘的で奇妙な深海の謎を解明できるのはとても嬉しいことです」
果たして、深海には他にどんなモンスターが存在しているのでしょうか。
参考文献
Monsters of the deep revealed for what they are
元論文
A Mysterious World Revealed: Larval-Adult Matching of Deep-Sea Shrimps from the Gulf of Mexico
提供元・ナゾロジー
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