個人や法人が日本から海外に国際送金するとき、どういった方法が最善だろうか。口座を所有している銀行の窓口で海外送金手続きを行うのが最善なのか?即日に送金したい場合はどうすれば良いのか?少額を送りたい場合はどの方法が得なのか?特に海外送金が初めての人や慣れていない人にとっては、最善手を選ぶのはなかなか容易ではない。

増加の一途をたどる国際送金件数

国際送金件数は年々増加の一途をたどっている。銀行など金融機関の通信ネットワークを管理する国際銀行間通信協会(スイフト)の最新データによると、2017年10月における銀行を通じた国際取引件数は1日平均2840万件で、前年比で9.1%増加した 。

一方で銀行を通じて海外送金をする場合、送金金額に関わらず一定の固定額が掛かるケースがほとんどで、着金までの日数なども考慮すると決して効率的ではない場合もある。

例えば日本国内におけるあるメガバンクの海外送金手数料は、同行の在外支店や現地法人に窓口から現金で送金する場合は5000円、口座引き落としの場合は4000円が必要となる。インターネットバンキングの場合は少し安くなるものの、いずれの場合でも円為替取扱手数料または外貨取扱手数料として別途、送金金額の0.05%(最低2500円)が必要になる 。日数も送金先の国によっては1日~数日以上必要なときもある。

この記事では、実際に海外送金をしなければならないとき、方法を選ぶ重要な指標になるといえる「早さ」や「安さ」に着目して、「国際キャッシュカード」や「海外送金サービス」を活用した方法のほか、近年急速に注目度を高めている「仮想通貨」による資金移動についても説明していく。

少額向きで手軽な国際キャッシュカード

日本の国内銀行の中には、「国際キャッシュカード」を発行している銀行が少なくない。国際キャッシュカードとは、簡単に言えば、海外のATMからも日本国内口座から預金を引き出すことができるキャッシュカードのことだ。

海外に行くと、「PLUSマーク」が表示されているATMを見掛ける。この「PLUSマーク」が表示されているATMでは、日本国内の銀行で発行された国際キャッシュカードを使って、その日ごとに算出された為替レートで日本の国内口座から預金を引き出すことができる。現地通貨で引き出すことができるので、両替の手間が省かれるということも特徴の一つだ。

この国際キャッシュカードを使うことで、実質的な「海外送金」をすることができる。例えば、日本以外の国に送金額の受け手側がおり、この国際キャッシュカードを受け手側が持っているとする。その場合、送金側は受け手側が有している日本国内の口座に必要な金額を振り込むことで、受け手側はその金額を海外で引き出すことができるということになる。

国際キャッシュカードで日本口座からお金を引き出す場合、国際ブランド(VISA)の通貨交換レートに3.0~5.0%ほどを加算した率が手数料率となり、ATMの使用手数料が数百円ほどから加算される。少額を送金する場合は、数千円から1万円近くになる銀行送金の固定手数料と比べると、国際キャッシュカードを活用した方がトータルで必要な手数料が安くなるケースが多い。

銀行営業時間内ならリアルタイム送金

日本では大手銀行の多くが国際キャッシュカードを発行している。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行、新生銀行などだ。各銀行、1日の引き出し限度額が設定されており、現在のところは1日最大10万円が主流。事前に各銀行の手数料率や1日の引き出し限度額を確認しておくことが大切だ。

一方で、ある程度の大きな金額を送金する際は、海外送金手数料や取扱手数料が一定金額掛かったとしても、為替レートが有利な銀行を選ぶのが良いときも多い。

ただ銀行送金で覚えておかなければいけないのは、これまで説明してきた海外送金手数料や円建てまたは外貨取扱手数料のほかにも、別の手数料が掛かる場合があること。これは送金の際に経由する銀行などによる手数料で、日本から送金した金額から差し引かれる形で徴収されるケースが多い。

また記事の前半部分でも触れたが、銀行送金は送金先の国によっては数日以上を要する場合がある。国際キャッシュカードを活用した「海外送金」は、基本的には国内銀行のリアルタイムな口座残高から引き落としが可能なので、振り込みが当日扱いとならない時間などを除けば、基本的にはすぐに海外で引き出しが可能となる。

「海外送金サービス」活用により数分で着金

銀行を経由する海外送金や国際キャッシュカードを使った送金・受け取りのほかに、「海外送金サービス」という選択肢もある。アメリカのコロラド州に本拠地を置く「ウエスタンユニオン」やイギリスのロンドンに本拠地がある「TransferWise」などが知られているが、海外送金サービスを利用したことのない人にとっては聞き慣れないサービス名かとも思う。

代表的な海外送金サービスの一つでもあるウエスタンユニオンは、1851年に創業した世界最大手の国際送金サービス事業者だ。特徴の一つに送金・受け取りの速さにある。送り先国によって掛かる時間には多少差が出るものの、早ければ数分後に海外のウエスタンユニオンの拠点で受け取りが可能となる。

ウエスタンユニオンの拠点は2015年6月時点で、世界200カ国以上で計50万カ所以上に上る 。アジア諸国を始め、北南米や欧州、中東、アフリカなど、さまざまな国に向けて利用することが可能だ。海外の受け取り拠点となる代理店は主に両替商や金融機関などで、目印としてアルファベットで書かれた「Western Union(WU)」の看板が店頭に掲げられている。

事前登録を経て全国のコンビニで送金手続き

ウエスタンユニオンを利用して日本から送金する場合は、全国各地にあるコンビニエンスストアを利用できる。一方で送金には事前登録が必要となることは覚えておく必要がある。事前登録には通常2~3週間程度を要する。

事前登録にはまず、ウェブサイトまたは郵送請求で入手した登録申請書に必要事項を記載し、本人確認書類とともにウエスタンユニオンに郵送する。その後、ウエスタンユニオン側が書類を受け取ったあとに「コンビニ・ウエスタンユニオン国際送金サービス登録証」を発行し、通常は登録証発送から7日間から10日間ほどで自宅に届くという流れだ。

その後に送金申込を行って実際の送金が行われることになる。送金申込はファミリーマットの端末機「Famiポート」やサークルK・サンクスの端末機「Kステーション」などのコンビニの専用端末などで完了することが可能だ。

送金手続きが終わると、MTCNと呼ばれる送金管理番号が記載された取扱明細書兼受取書をコンビニの店員から渡される。その後、受取人に送金管理番号を連絡し、受取人がウエスタンユニオンの取扱店に出向いて送金額を受け取る仕組みだ。

ウエスタンユニオンの海外送金手数料は

では実際にウエスタンユニオンを使った際に掛かる国際送金手数料について紹介する。送金金額が1万円以下の場合は一律990円、1万1円~5万円の場合は一律1500円が必要となる。5万円を超える場合には、送金先の国によって2つの料金体系グループに分かれる 。

手数料が割安なグループには2017年12月時点で14カ国が含まれる。中国や韓国などの東アジア地域やフィリピンやタイなどの東南アジア地域、バングラディッシュやインドなどの西アジア地域、ブラジルなどの南米地域が主な対象だ。

この14カ国のいずれかの国に日本から海外送金するときは、5万1円~10万円の場合は2000円、10万1円~25万円の場合は3000円、25万1円~29万3000円の場合は5000円となる。一方、この14カ国以外の国に日本から送金するときは、5万1円~10万円の場合は3000円、10万1円~25万円の場合は5000円、25万1円~29万3000円の場合は7000円と、やや高めとなる。

ウエスタンユニオンの場合、1回当たりの送金限度額は30万円(手数料を含む)と設定されている。また、ファミリーマートやサークルK・サンクスにおけるサービス時間は午前9時から午後9時までなので、送金を急ぐ場合などは注意が必要だ。

多様化する国際送金の方法と変容する概要

ここまで、国際キャッシュカードや銀行、海外送金サービスを活用した国際送金のメリットやデメリットを紹介してきた。一方、これらを「従来型」の国際送金方法とするのであれば、「新型」に分類される送金方法も現れ、注目を集め始めている。

例えば、ビットコインなどの仮想通貨を使った資金移動だ。そもそも仮想通貨を使った資金移動の場合は「海外送金」という概念が当てはまらないとも言える。仮想通貨の取引プラットホームには「国」や「国境」という概念が存在しないからだ。

しかも送金手数料はそれぞれの仮想通貨の各取引所によって異なるものの、無料~数百円程度にとどまるものが多い。数千円から1万円近くかかる銀行送金に比べると、かなり割安に資金移動することができることが分かる。24時間365日送金できることも特徴と言える。

一方で、仮想通貨自体のリスクや今後の存続について懸念を感じる人が多いのも現状だ。また、実際に仮想通貨を有していない人にとっては、もちろんこういった資金移動の手法は利用できない。仮想通貨を使った資金移動の普及には、まだ一定の時間がかかるという見方も多い。

今後増え続ける「海外送金」の機会

「海外送金をしたことがない」という人は日本にはまだ多い。法人にとっても同様と言える。一方で、海外との商取引や企業の海外進出が増える中、海外送金をする必要に迫られるケースは多くなってくると予想される。

それぞれの海外送金のメリットとデメリットを事前にきちんと調べ、掛かる日数や手数料を確認した上で、最適な方法をケースバイケースで選択することが重要だ。金額が大きくなると手数料額や為替レートの小さな差も、結果として大きなコストになることは言うまでもない。

文・岡本一道(経済・金融ジャーナリスト)

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