1973年以来、生きた個体が見つかっていなかった「ソマリセンギ(Elephantulus revoilii)」が、約半世紀ぶりに再発見されました。

ソマリセンギは、世界に約20種存在するハネジネズミ(elephant shrew)の仲間であり、小さいながらもゾウの近縁に当たります。しかし、ゾウ(elephant)でもネズミ(shrew)でもないという不思議な生き物です。

ソマリセンギは、これまでソマリアにしか生息しないと言われていましたが、今回はその隣に位置するジブチ共和国で見つかっています。

しかも、人間の脅威にさらされないよう、人里離れた荒れ地に隠れ住んでいたようです。

目次

  1. 地元民のウワサからソマリセンギの捜索を開始!
  2. 50年間生き残っていた要因は「人間から離れていたこと」
「手乗りサイズ」のゾウの親戚が50年ぶりに発見される!長い鼻がカワイイ
(画像=半世紀ぶりに再発見されたソマリセンギ、『ナゾロジー』より引用)

地元民のウワサからソマリセンギの捜索を開始!

ソマリセンギについて分かっていることは、半世紀〜数世紀前に捕獲された39の標本から得られた情報のみです。生きた個体の行動研究などは、ここ50年の間、一切行われていません。

しかし、米・デューク大学の研究チームは、「ジブチ共和国で似たような生き物がしばしば目撃されている」との情報から、地元の自然保護団体「ADN(Association Djibouti Nature)」と協力して、2019年に現地調査を開始しました。

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(画像=アフリカ北東端の国・ジブチ(ソマリアの隣に位置)/Credit: dailymail、『ナゾロジー』より引用)

共同チームは、地元民からの聞き取り、候補地に見られるフンの分析、隠れ家となりそうな地形を考慮して、12のポイントに計1259個の仕掛けを準備しました。ピーナッツバターやオートミール、パンなどをセットして隠れ家から出てきてもらおうという作戦です。

その結果、実に12匹のソマリセンギが生きた姿で再発見されたのです。

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(画像=50年ぶりに生きた姿で現れた「ソマリセンギ」、『ナゾロジー』より引用)

50年間生き残っていた要因は「人間から離れていたこと」

調べによると、ジブチのソマリセンギはすべて、植生がまばらで乾燥し、岩肌の露出した荒廃地に生息していました。

ここは人の活動が及ばない環境にあり、密猟や土地開発による生息地の減少も起こりません。それを知ってか知らずか、ソマリセンギは、この地を隠れ家に選んでいたのです。

「手乗りサイズ」のゾウの親戚が50年ぶりに発見される!長い鼻がカワイイ
(画像=岩が多く植物が少ない荒地に住んでいた、『ナゾロジー』より引用)

しかも、発見されたソマリセンギの数は、他種のハネジネズミと同等の数が見つかっており、絶滅の危機にないことが分かっています。

同チームのロビン・ムーア氏は「絶滅危惧種が見つかる際は、せいぜい1匹か2匹ほどで、発見後はすぐに保護措置が取られます。しかし、これほど豊富に見つかったことは、想定外であり驚くべきことです」と話します。

研究チームは、この結果を踏まえ、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおけるソマリセンギの登録情報を「データ不足(DD、Data Deficient)」から「低危険種(LC、Least Concern)」への変更を要請するとのことです。

低危険種は、絶滅寸前(CR)や絶滅危惧(EN)に比べ、絶滅リスクが低いことを示します。

何はともあれ、ソマリセンギが再び科学界にカムバックしてくれたことに大きな価値があるでしょう。

研究の詳細は、8月18日付けで「Journal PeerJ」に掲載されました。

New records of a lost species and a geographic range expansion for sengis in the Horn of Africa

reference: livescience, bbc / written by くらのすけ

提供元・ナゾロジー

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