そごう西武が9月2日に西武渋谷店(公園通りの紀伊國屋書店西武渋谷店があった場所)にオープンした「チューズベースシブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA)」(売り場面積約700㎡)や、大丸東京店4階に10月6日オープンした「明日見世(asumise)」(売り場面積約100㎡)などD2Cブランドのショールームを百貨店が今秋続々とオープンしている。いわゆるOMOとかO2Oと呼ばれるオムニチャネル(オフライン:リアル店舗とオンライン:EコマースのWeb上店舗を複合したビジネス)におけるオフライン部分を百貨店が担当している。

 大丸東京店「明日見世」がショールームとして今回契約したのは、D2Cブランドに特化した20ブランドで、3カ月に1度入れ替えを行う。初回のテーマは「社会を良くするめぐりと出会う」で、アパレル、化粧品、インナーブランド、タオルブランドなどが取り揃えられている。ほぼ全ての商品でテスターを用意し、あえて売らない形態で来店客に購入へのプレッシャーを減らしているという。販売員は「アンバサダー」と称してブランドの魅力を伝えていく。

 そごう西武の「チューズベース」はもっと大掛かりだ。店内は2つの展示エリア、D2Cブランドを展開するFABRIC TOKYOの「インセイン(INCEIN)」の第1号店、ラウンジエリアの計4つのスペースからなりほとんどが百貨店初登場の51ブランドから構成されている。展示エリアの商品は全てその場で購入可能。QRコードから専用サイトにアクセスし、画面上のショッピングカートに入れ会計後にまとめて商品を手渡す。もちろんECから購入し自宅配送も可能。

 こうした百貨店のショールーム戦略やOMOストアは成功するのだろうか。ビジネスコンサルタントの小島健輔氏は「アメリカではずいぶん前からやられているメディアビジネスというもの。新しさはありません。場所貸しをする際に付加価値を高めるために色々な仕掛けをするわけです」。

 百貨店側は高齢化が進む現在、若い顧客の来店が期待できるし、百貨店の未来像が提案できていると考えているようだ。ショールームに出店するブランドからは固定家賃をとるのか売り上げに応じた手数料をとるのか詳細は明らかではないが、少なくとも私にはこれが儲かるとはとても思えない。

 そもそも百貨店と出店ブランドの力関係だが、こうしたD2Cブランドが百貨店に頭を下げて、売り上げを上げるために出店しているようには思えないのだ。百貨店側が頭を下げて、「従来のブランドでは売り上げが上がらないので、今の時代にマッチしたあなた方のD2Cブランドにぜひ参加していただきたい」というのが真相だろう。だとすれば、それこそ「タダ同然」の出店(参加)料で出てやっているという感じなのではないだろうか。今後「やはり参加して良かった。これからも宜しくお願いします」とD2Cブランド側が頭を下げるようになるとは現時点では私には思えないのだが。

 たとえば、百貨店再生の道としてそごう西武はPB(プライベートブランド:「リミテッドエディション」)戦略を2010年代に大々的に推し進めたのだが、結局モノにならずに撤退した。やはり、百貨店が行き着く最後の道は場所貸しビジネスということになるのだろうか。もちろん場所を貸すにしても、付加価値を加えてより高く貸す方式を考えていくということなのだろう。今回の百貨店ショールーム戦略は「良い商品を見つけて仕入れ、良いサービスを提供して購買していただく」という百貨店本来の差益ビジネスではなく、商品情報を来場者に提供してその対価を商品側からもらうというメディアビジネスに他ならない。それが悪いかどうかは別にして、ある意味で百貨店の未来が暗示されているかもしれない。

文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO

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