イスラエル考古学庁(IAA)は先日、同国北部のカルメル(Carmel)海岸沖で、十字軍の騎士が使っていたとされる約900年前の剣が発見されたと発表しました。
発見したのは、地元ダイバーのシュローミ・カツィン(Shlomi Katzin)氏で、先月行ったダイビング中に海底で見つけたとのこと。
カツィン氏は、この剣をIAAにすぐに引き渡したことで、善良な市民としての証明書を授与されています。
船の停泊中に騎士が海に落としたか?
カツィン氏によると、剣は海流によって表面の砂が移動したことで、海底から露出したようです。
回収された剣は、堆積物や海洋生物に覆われていましたが、欠損している部分はなく、ほぼ完璧な保存状態でした。
刀身は約1メートル、柄の部分は30センチほどあります。
カツィン氏は、この剣が考古学的に価値のある古代の遺物と見て、密売人などの手に渡らないよう、すぐに地元当局に連絡し、IAAに引き渡しました。
IAAの強盗防止ユニット(Robbery Prevention Unit)の検査官であるニール・ディステルフェルド(Nir Distelfeld)氏は「剣は約900年前のものと推定され、十字軍の騎士が所有していたものであることは明らか」と指摘します。
十字軍(Crusader)とは、中世の時代にヨーロッパのカトリック諸国が、イスラム教徒から聖地エルサレムを奪還しようと送り込んだ遠征軍です。
1096年から1291年の間に、8回の十字軍遠征が行われました。
十字軍からは、テンプル騎士団、ドイツ騎士団、聖ヨハネ騎士団などの有名な宗教騎士団が生まれています。
今回見つかった長刀は、当時の一般歩兵が入手できるような代物ではないことから、十字軍の騎士が使っていた可能性が非常に高いです。
IAAの海洋考古学ユニット(Marine Archaeology Unit)のコビ・シャルビット(Kobi Sharvit)局長は、次のように説明します。
「カルメル海岸には自然の入り江が多く、何世紀にもわたって沿岸部の海運活動が行われてきました。その中で、嵐の際には、船の避難場所として使われた歴史があります。
おそらく、900年前の十字軍も聖地の海岸に上陸する際に、この場所を停泊地に利用したのではないでしょうか」
今回の剣は、その時に騎士が海に落としてしまったものかもしれません。
こちらは、カツィン氏が剣を発見した時の様子。
IAA所長のエリ・エスコシド(Eli Escosido)氏は「剣は現在、堆積物や海洋生物を取り除く修復作業がなされており、それが終わり次第、一般に向けた展示を予定している」と述べています。
十字軍の騎士が使っていた剣は一体どんな姿をしているのか。修復作業が待ち遠しいところです。
参考文献
Diver finds 900-year-old Crusader sword in Israel
元論文
Diver pulls 900-year-old Crusader sword from seafloor
提供元・ナゾロジー
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