ダイヤモンドの中には、「カメレオンダイヤモンド」と呼ばれる色が変わるものが存在します。
非常に希少なダイヤモンドであるため、1つで数千万円もの値がつくこともあるのだとか。
そして最近、アメリカ宝石学会(GIA)に所属するステファニー・ペルソー氏が、新しいタイプのカメレオンダイヤモンドを発見しました。
この新しいダイヤモンドは従来のカメレオンダイヤモンドとは異なり、-196℃まで冷やすことで灰色から黄色へと変化するのです。
冷やすと黄色に変化する「極低温カメレオンダイヤモンド」
カメレオンダイヤモンドが発見されたのは今回が初めてではありません。
最初に発見されたのは1866年のことであり、その後、しばらくしてからジュエリー業界でも認知されるようになりました。
従来のカメレオンダイヤモンドは2種類知られていました。
1つは200℃まで熱することで色が変わり、もう1つは24時間以上暗室に置いておくことで色が変わるというもの。
これらは元々緑色ですが、上記のような処置によって一時的に茶色または黄色へと変化します。
そして最近、ペルソー氏が顧客のためにダイヤモンドを鑑定した際、3種類目の変化を発見しました。
この新しいカメレオンダイヤモンドは、-196℃まで冷やすことで、灰色から黄色、また灰色から青色へと変化します。
現段階では、合計5つの「極低温カメレオンダイヤモンド」が見つかっているとのこと。
ちなみに、ダイヤモンドの極度な冷却は研究機関で定期的に行われているようです。
冷却すると、ダイヤモンドの原子の振動を抑えられます。
そのため、さまざまな波長の光を吸収する様子を正確に測定するのに役立つのです。
さて、このようにして偶然見つかったカメレオンダイヤモンドですが、その色の変化はどのように起こるのでしょうか?
冷却で色が変わる理由は?
通常、ダイヤモンドは炭素原子だけが特殊な配列で並んでおり、非常に硬く無色透明です。
ところが、このダイヤモンド構造に欠陥があったり不純物が含まれていたりすると、その影響で色が付きます。
特に天然のダイヤモンドは形成されていく過程で不純物が混じり、色付きになることがあるのです。
例えば、黄色いダイヤモンドは、炭素のダイヤモンド構造に窒素が取り込まれています。
これにより可視光線の青い部分が吸収され、黄色く見えてしまうのです。
では、その色が変化するのはどうしてでしょうか?
カメレオンダイヤモンドはそれぞれ、光や加熱、そして冷却によって色が変化します。
そのため専門家は、ダイヤモンドの色の変化には複数のメカニズムが存在すると考えています。
そして今回のように極度に冷却されると、「電荷が結晶中の不純物に近づいたり遠ざかったりするため、光が当たった時の見え方が変わった」と推測しています。
しかし現段階では、この理論が証明されたわけではありません。
そもそもカメレオンダイヤモンド自体が非常に希少であり、研究者たちが研究用のサンプルを入手するのは容易ではないのです。
しかし冷却されたことがない既存のダイヤモンドは数多く存在するため、新たなサンプルが見つかる可能性は高いでしょう。
今後のサンプル収集と研究による原因解明に期待したいですね。
この新しい発見と調査結果は、10月12日にオレゴン州で開催されるアメリカ地質学会(Geological Society of America) の会議で発表されます。
参考文献 Gem collectors have a new jewel to add to their list! Scientists discover a colour-changing DIAMOND that transforms from grey to yellow when chilled to -320°F
提供元・ナゾロジー
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