世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約7%は、コンクリートの主成分であるセメントの製造と使用によるものです。

しかしコンクリートは建材として非常に有用であり、今後も必要とされ続けるでしょう。

環境への懸念に対処するため、東京大学大学院工学系研究科に所属する丸山 一平(まるやま いっぺい)教授ら研究チームは、廃コンクリートとCO2から新しい建材を開発しました。

研究の詳細は、10月8日付の科学誌『Journal of Advanced Concrete Technology』に掲載されています。

目次

  1. CO2が材料になる「カルシウムカーボネートコンクリート」

CO2が材料になる「カルシウムカーボネートコンクリート」

コンクリートは、砂や砂利などの骨材に接着剤の働きをするセメントと水を混ぜて作られます。

これだけで高い強度が得られるため、今や建設には欠かせない材料となっています。

廃コンクリートとCO2でつくる新しい建材が開発される
(画像=コンクリートは、セメントと骨材を混ぜ合わせたもの / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

ところがセメントを製造すると、その過程でどうしてもCO2が排出されます。

そのため建設業界では、CO2排出量の削減が大きな課題となってきました。

そこで丸山氏らは、逆に大気中のCO2を活用して、コンクリートの代替品を作れないか考えました。

彼らは「水生生物が化石になるプロセス」から着想を得たようです。

「硬い炭酸カルシウム(CaCO3)の堆積物を形成する」という化石の生成プロセスを建材に利用できないか考慮したのです。

そして完成したのが、「カルシウムカーボネートコンクリート(CCC)」です。

CCCは、使用済みの廃コンクリート、CO2、水、カルシウム(Ca)によって作られます。

廃コンクリートとCO2でつくる新しい建材が開発される
(画像=CCC(カルシウムカーボネートコンクリート)による CO2と Ca の資源循環 / Credit:丸山 一平(東京大学)_世界初!CO2を原料とする完全リサイクル可能なカーボンニュートラルコンクリートの基礎的製造技術を開発 ~NEDOムーンショット型研究開発事業「C4S研究開発プロジェクト」~(2021)、『ナゾロジー』より引用)

これらの材料により、砕いた廃コンクリートの粒子間に炭酸カルシウムを強制的に析出。

炭酸カルシウムがいわば接着剤として働くため、砕いた廃コンクリートを一体化させることができるのです。

このプロセスを利用すれば、大量にある廃コンクリートと排出量が増加しているCO2をリサイクルできるため、非常に有望な発明だと言えます。

廃コンクリートとCO2でつくる新しい建材が開発される
(画像=開発された2種類のカルシウムカーボネートコンクリート(CCC)。(左)硬化セメントペーストを使用, (右)ケイ砂を使用 / Credit:丸山 一平(東京大学)_A concrete solution Recycled concrete and CO2 from the air are made into a new building material(2021)、『ナゾロジー』より引用)

とはいえ現段階では、まだ数cmほどの小さなサンプルしか作られていません。

また通常のコンクリートよりも脆く、今すぐ代用品として活躍できるわけでもありません。

今後研究チームは強度とサイズを改善していく予定であり、将来的には大量生産することを目指しています。


参考文献

A concrete solution Recycled concrete and CO2 from the air are made into a new building material

元論文

A New Concept of Calcium Carbonate Concrete using Demolished Concrete and CO2


提供元・ナゾロジー

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