住友化学は9月1日、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国の半導体大手企業にフォトレジストを安定的に供給するため、100億円以上を投じて韓国に新しい工場を建設することを発表した。工場は9月から着工し、24年から生産を開始する計画だという。2019年の輸出規制後、関連日本企業の韓国投資としては最大規模になる見通しだ。
韓国の新工場で生産される予定のフッ化アルゴン(ArF)フォトレジストは、半導体ウェハーの基盤回路をより細かく描く際に使われる先端素材で、住友化学はこれまで大阪工場でのみこの素材を生産してきた。今回の新工場建設により、住友化学のフッ化アルゴンフォトレジスト生産能力は2019年の2.5倍に増える見通しとなる。フォトレジスト市場で世界4位のメーカーである住友化学が海外で初めてフッ化アルゴン·フォトレジストを直接生産することを決めたのは、韓国のサムスン電子やSKハイニックスといった半導体大手各社が分散生産を要請したためだと、日本経済新聞は伝えている。
日本の部品素材大手にとって、韓国のサムスングループやSKグループはいわば上得意客であり、取引を増やすことは日本企業に大きな利益をもたらすこととなる。半導体関連業界にとっては輸出規制が一つのきっかけとなり、結果として、韓国企業による「国産化」や「脱日本」の構図が一つの解となりつつある。
事実、住友化学以外にも、東京応化やダイキン工業といった日本の大手企業が、韓国での生産拡大や直接投資を決めている。一方でそうした動きに対応できていないステラケミファや森田化学は、日本政府の輸出規制措置後、輸出に困難をきたし、対韓国向け売上が大幅に減少する結果となった。
今後も輸出規制が続くのか、もしくは岸田政権で日韓の歩み寄りから輸出規制の見直しが行われるのか、現時点ではまだ先が見えないが、この2年間で主要3品目の取引に大きな影響が出なかったのは、日本企業や日本政府にとっても内心ほっとした面もあるのではないか。他方で先端技術をもって韓国へ進出する動きは、2年前の安倍政権にとっては想定外だったのかも知れない。
米中対立が増す中、今まで以上に「経済安保」が重要なキーワードとなってきているが、岸田政権では日本の最先端技術の流出を防ぎつつ、様々な規制の中でグローバル環境下で経済活動を拡大していくことのかじ取りの難しさが伺える。誰が得したのか、未だ掴みどころのない輸出規制に端を発した実益のない日韓対立はいつまで続くのか。世界的に半導体不足の深刻さが増している環境下で、3年目に突入した輸出規制だが、日韓政府や企業を取り巻く今後の行方が気になるところである。
金 世永(コリアマーケティング株式会社 代表取締役)
参考記事:日本の輸出規制「半導体・ディスプレイの核心素材依存度に変化なし」
参考記事:韓国環境部、日本の輸出規制への対応の一環として半導体用超純水の国産化協議体を本格稼働
参考記事:韓国副首相「日本の輸出規制3品目は供給が改善、生産支障なかった」
提供元・コリア・エレクトロニクス
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