毎年多くの観光客が訪れる奈良県。「奈良公園」や「法隆寺」、「吉野山」などは有名な観光地としてよく知られています。
しかし、奈良にはまだまだ多くの人に知られていない、魅力的な穴場がたくさん存在しています。
今回紹介するのは、その内のひとつ「山の辺の道」です。ここでははるか昔の空気と歴史、そして絶景を楽しむことができます。
奈良山の辺の道の概要と歴史

山の辺の道というのは、奈良盆地の山裾にある古道です。「古事記」においても「山辺道」というこの場所に関する記載があり、日本最古の道であるとも言われています。
奈良の地が日本の中心であった、大和時代や奈良時代。この山の辺の道は人々や物資の交流流通を支える重要なルートであったようです。
山の辺の道があるのは、奈良県桜井市から天理市の間。JR及び近鉄桜井駅から三輪駅を間に挟み、天理駅まで続く非常に長大な観光スポットになっています。
その長さは距離にしておよそ16km、間にして3時間以上を要する、非常に長い散歩道です。端から端まで歩き尽くそうと思えば1日もの。むしろ、1日どころか何日散歩しても飽きることのない、とても魅力的な散歩道になっています。
奈良山の辺の道へのアクセス
山の辺の道は非常に長く、県道にも面しているのでさまざまなアクセスの方法があります。徒歩で訪れる場合、その中でも3通りの行き方が主となるでしょう。
ひとつめは、天理駅から行く方法です。
天理本通りを抜け、石上神宮から道へと入ります。石上神宮までの距離はおよそ徒歩30分ほどです。
もうひとつは桜井駅からのルート。
大和川を越え、「仏教伝来の地」からスタートします。この場合、仏教伝来の地まで20分程度かかります。
最後は三輪駅を降り、大神神社境内から道へと入っていくルートです。
駅からの距離は徒歩10分程度なので、もっとも行きやすくなっています。ただし、途中から道へ入ることとなるので、山の辺の道を端から端まで歩きたいという場合は使えません。
奈良山の辺の道には名所史跡がたくさん
山の辺の道の途上には、さまざまな名所や建物が存在しています。いずれも、太古の歴史を現代まで伝え続けている非常に貴重なものです。
石上神宮

天理市布留町の「石上神宮(いしのかみじんぐう)」。日本最古の由来を持つ神社で、歴史の教科書にも登場する物部氏の総氏神としても知られています。
境内では、烏骨鶏(ウコッケイ)や東天紅(トウテンコウ)などのニワトリが放し飼いにされている点にも注目。鳥好きならぜひ訪れておきたい場所でもあります。

石上神宮から伸びる山道。空が近くに見えます。
木々で覆われた自然のトンネルをくぐる、ちょっとした冒険要素も。

内山永久寺跡

平安時代後期に創建された、鳥羽上皇ゆかりの大規模な寺院跡。「うち山やとざましらずの花ざかり」という松尾芭蕉の俳句も遺されています。明治時代初期の廃仏毀釈によって打ち壊されたため、現存していません。

山の辺の道は住民の生活圏と密接しており、水田や民家もところどころに見られます。飲食店や自販機もすぐアクセスできるので、空腹や喉の乾きにも対応しやすいでしょう。
ただし、長時間歩くことになるので、動きやすく丈夫な靴は必須です。
夜都岐神社

奈良公園にある「春日大社」と深いかかわりを持つ神社です。

県道のすぐそばに建てられた赤鳥居、そしてかやぶき屋根で造られた拝殿が特徴になっています。

道中には無人販売所も。お金に余裕があれば買い物してみるのもよいでしょう。
行燈山古墳(崇神天皇陵)

大規模前方後円墳。文字通り山のような大きさで、事前知識がなければお墓だとは気づきにくいかもしれません。被葬者は第10代崇神天皇とされています。

この地には他にも大小さまざまな古墳が遺されています。かつてこの地を支配した朝廷が、いかに強大な権力を持っていたかが伺えるでしょう。そうした太古の歴史遺跡と現代の人々の生活環境が共存しているというのは、どことなく不思議な感覚がしませんか?
渋谷向山古墳(景行天皇陵)

畑の中央に存在する巨大な前方後円墳。その大きさに加え、発掘調査によって多量の副葬物が発見されていることから、相当な有力者を埋葬している可能性が高いです。第12代景行天皇の陵墓ともされていますが、定かではありません。

すぐ近くの展望台からは、奈良の風景を見下ろせます。天気にもよりますが、二上山や大和三山(畝傍山、笠置山、耳成山)、大和葛城山や金剛山が見えることもあります。
桧原神社

「桧原(ひばら)神社」。この後述べる大神神社の縁社であり、崇神天皇の代に由緒を持ちます。「万葉集」にもその名があり、古くから多くの人々に親しまれていたようです。よく晴れた日の夕方には、この神社の入り口から二上山への日暮れを楽しめます。
大神神社

最後は、日本最古ともいわれる「大神神社」を紹介しましょう。日本の国造り神話に大きな役割を果たした「大物主大神(おおものぬしのおおかみ)」が祭神です。
大物主大神が鎮まる三輪山は霊山として、古代から現代まで信仰を受け続けています。

山の辺の道からは外れてしまいますが、この神社の「大鳥居」は日本一の大きさで有名です。多くのフォトグラファーが大鳥居を題材とした風景写真を撮影しています。
夕暮れ山の辺の道で絶景写真を狙おう

もうひとつ、山の辺の道について解説しておかなければならないのが、夕方の美しさです。この地域には夕陽を遮る高い建物がないので、とても美しい黄昏の光景を堪能できます。

その光景はあたかも突然別世界に迷い込んでしまったかのよう。ちょっとした路地でも、まるで異世界の入り口であるかのような不思議な雰囲気を醸し出しています。
この場所で夕暮れを狙い、インスタ映えする写真を狙ってみるのも楽しみ方のひとつです。
まとめ
かつてたしかにあったまほろばの空気が現代も流れる、奈良山の辺の道。
散歩やトレッキングが大好きな方や歴史スポット巡りが好きな方。そして、きれいな風景写真が撮りたいという方にもおすすめできる場所です。
山の辺の道の雰囲気を楽しめる風景動画
山の辺の道の風景を動画でも撮影しました。のどかな雰囲気をお楽しみください。
文・写真 緑一郎/提供元・たびこふれ
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