私たちは相手の顔や表情で物事を判断する場合があります。

新しい研究によると、そうした見た目の判別能力は各国のリーダーの「性質判断」にも当てはまるようです。

カナダ・マキュアン大学(MacEwan University)心理学部に所属するミランダ・ジャコミン氏ら研究チームは、人々は政治的リーダーの顔の外観だけで、その国の政治体制が民主主義か独裁制かを予測できると発表しました。

民主主義のリーダーは独裁者に比べて、より魅力的で温かみのある顔立ちをしていたのです。

研究の詳細は、2月4日付けの学術誌『Social Psychological and Personality Science』に掲載されました。

目次

  1. 顔だけで民主主義のリーダーと独裁者を見分けられる
  2. 民主主義のリーダーには、温かみのある顔の人が選出されていた

顔だけで民主主義のリーダーと独裁者を見分けられる

人々はリーダーを選出するとき、外観という直感的な要素も含めます。

では、どんな顔の人がリーダーとして選ばれてきたのでしょうか?

またリーダーの顔から政治体制を判別できるのでしょうか?

研究チームはこの点を調査するため、ある実験を行いました。

人間は顔だけで独裁者と民主主義のリーダーを区別できると判明
(画像=リーダーの顔で各国の政治体制が判別できる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

実験にはアメリカの成人90人が参加し、80人の民主主義のリーダーと80人の独裁者(独裁主義のリーダー)の顔写真をランダムに見ました。

そしてそれらのリーダーが民主的に選出されたのか、もしくは独裁者だったのかを推測。

直感が大切な実験なので、対象となるリーダーについて事前に知っていた場合は、分析から除外されました。

その結果、参加者は69%の確率で、民主主義のリーダーと独裁者を正しく見分けることができました。

民主主義のリーダーには、温かみのある顔の人が選出されていた

研究チームは、最初の研究結果の根拠を理解するために追加実験を行うことにしました。

追加実験には最初の実験とは別の229人が参加。

参加者は前回と同じリーダー160人の顔写真を見て、それぞれのリーダーの魅力、能力、好感度、信頼感などを評価しました。

その結果、民主主義のリーダーは独裁者よりも、「魅力的」「好感が持てる」「信頼できる」と判断されやすかったようです。

人間は顔だけで独裁者と民主主義のリーダーを区別できると判明
(画像=人々は温かみのある顔をリーダーとして選出する / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

ジャコミン氏はこの結果について次のように述べています。

「民主国家では、正義や開放性、透明性が重視されるため、信頼感や好感度が高く、温かみのある顔をした政治家が好まれます。」

「一方、独裁国家は国民を従属させることで機能します。そのため厳しい顔は、国民の恐怖心を煽って従わせるのに適していると言えます」

さて今回の結果から、民主国家では確かに「リーダーとして選ばれやすい顔」があると分かりました。

またその傾向から、顔だけでも民主主義のリーダーか、独裁者かをある程度判断できるようですね。

とはいえ、現代の民主主義の尺度は流動的であり、そもそもはっきりと民主主義もしくは独裁主義にラベル付けできるものではありません。

また実験では、顔の認識に影響を与える他の要素が考慮されたわけでもありません。

そのため「リーダーの選出には顔もある程度影響する」くらいの認識がちょうどよいのかもしれませんね。


参考文献

People can distinguish dictators from democratic leaders based on their facial appearance alone

元論文

Dictators Differ From Democratically Elected Leaders in Facial Warmth


提供元・ナゾロジー

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