市松模様は、日本で昔から愛されてきた格子柄の一種です。
現代でも、人気漫画のキャラクターを象徴する柄として話題になっています。
そんな市松模様ですが、最近になって「耐震性を備えた壁」として利用できると判明しました。
日本の構造計画研究所が、「市松模様の壁(正式名称:CLT市松ブロック壁)」を発明し、特許を取得したのです。
耐震性のあるCLT市松ブロック壁
新しく発明された「CLT市松ブロック壁」は、市松模様に組み合わされた地震耐性のある新しい壁です。
この壁は、名前の通りCLTパネルから作られています。
CLTパネルとは、板の方向が直交するように重ねたパネルのことです。
コンクリートと比べて軽く、断熱性が高いというメリットがあります。
またCLTパネルで作られた建物は地震に強く、ある実験では「阪神淡路大震災以上の力が加わっても倒壊しない」という結果が得られたようです。
この技術はオーストラリアやヨーロッパを中心に発展してきましたが、近年では日本にも取り入れられており、特に注目されています。
そして開発チームは、比較的小さいCLTパネルを鋼板とピンを使って格子状に組み合わせることにしました。
すぐに崩れそうに思えますが、実は高い耐震性が期待できる「耐震壁」とのこと。
なぜなら、この市松模様の組み方が、建築フレームによく見られる「斜めに組み込まれた鉄筋」のような耐震効果(ブレース効果)を生み出すと考えらえており、その性能は実験で証明済みです。
市松模様の壁で作られた平成学園ひまわり幼稚園
木造建築の分野では、デザイン性と耐震性を両立させるのは簡単なことでありません。
また従来のCLTパネル工法は、採光性や通風性の確保が課題となってきました。
しかし新しく開発されたCLT市松ブロック壁は、そのすべてを網羅できるというのです。
そして2021年3月、新工法を初めて適用した「光・風・木と遊ぶプロジェクト」が竣工。
高知県南国市に、市松模様の壁を取り入れた「平成学園ひまわり幼稚園」が完成しました。
隈研吾建築都市設計事務所と構造計画研究所が協力して設計することにより、これまでにない斬新な幼稚園が誕生したのです。
子供たちは、頑丈な建物に守られながら、そよ風や太陽光といった自然の要素を楽しめるでしょう。
また木造建築特有の「木の温もり」や「木の呼吸(調湿機能)」を感じたい人とは、特に相性が良いかもしれませんね。
構造計画研究所は今後、CLT市松ブロック壁と鉄骨・鉄筋コンクリートのハイブリッドなど、さらなる応用を目指しています。
【編集注 2021.10.11 16:00】
記事内容に一部誤字が含まれていたため、修正して再送しております。
参考文献
木製パネル耐震壁「CLT市松ブロック壁」の特許取得
Japanese Engineers Build Earthquake-Resistant Checkered Block Wall
提供元・ナゾロジー
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