「ミカンを食べすぎると手が黄色くなる」とか「ニンジンを食べすぎると肌がオレンジ色になる」などと聞いたことがあるかもしれません。

冗談のようにも思えますが、実はこの現象は誰にでも起こりえます。

ニンジンの食べすぎが肌の色を変化させる理由を、アメリカ・フロリダ大学(University of Florida)に所属する人類学者チュウ・シャオ氏が解説しています。

目次

  1. ニンジンの食べすぎで肌がオレンジ色になる「柑皮症」
  2. 色素が皮膚に蓄積する
  3. ニンジンを何本食べると皮膚がオレンジ色になるの?危険性は?

ニンジンの食べすぎで肌がオレンジ色になる「柑皮症」

ニンジンを食べすぎると肌がオレンジ色になる可能性がある
(画像=柑皮症の例 / Credit:Samuel Freire da Silva(Dermatology Atlas)_“AN ORANGE TINT TO THE SKIN ISN’T NECESSARILY BAD.”(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

ニンジンを食べすぎると、肌がオレンジ色に変化する場合があります。

これは柑皮症(かんぴしょう)と呼ばれる症状であり、ニンジンなどの「β-カロテン」を多く含む食品を大量に摂取した場合に起こります。

β-カロテンとは天然の色素であり、ニンジンだけでなく、サツマイモやカボチャなどの様々な食品に含まれ、オレンジ色、黄色、赤色を作り出しています。

ちなみにβ-カロテンと同じ仲間であるカロテノイド色素の「β-クリプトキサンチン」を摂取しすぎても柑皮症になるとのこと。

β-クリプトキサンチンはミカンなどに多く含まれており、日本でよく聞く「ミカンの食べすぎで手が黄色くなる」という現象がまさにこれに当たります。

では、どうしてβ-カロテンの摂りすぎが皮膚をオレンジ色にするのでしょうか?

色素が皮膚に蓄積する

ニンジンを食べすぎると肌がオレンジ色になる可能性がある
(画像=色素が皮膚に蓄積してオレンジ色になる / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の研究者は、「β-カロテンを取りすぎると、余剰分が血液に流入する可能性がある」と説明しています。

血液自体が影響を受けることはありません。

しかしこの色素が、足のかかとや手のひらなど、皮膚の厚い部分に沈着し始めます。

シャオ氏はこの点を次のように解説しています。

「皮膚が厚い部分では、より多くの層が重なった状態にあります。そのため色素がはっきりと見えるようになるのです。

逆に皮膚が薄い部分では、皮膚が頻繁にはがれ落ちており、色素が蓄積されないと考えられます」

では、ニンジンをどれくらい食べれば柑皮症になってしまうのでしょうか?

ニンジンを何本食べると皮膚がオレンジ色になるの?危険性は?

ニンジンを食べすぎると肌がオレンジ色になる可能性がある
(画像=1日3~10本のニンジンを食べると柑皮症になるかも / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

皮膚科医のメリッサ・ピリアン氏によると、「1日当たり20~50mgのβ-カロテンを数週間にわたって定期的に摂取すると、皮膚がオレンジ色になる」とのこと。

これは1日に3~10本のニンジンを食べ続けることに相当します。

もちろん柑皮症につながる食品はニンジンだけではないので、カロテノイド色素の総合摂取量を考慮すべきです。

そして気になる柑皮症の危険性ですが、シャオ氏によると「柑皮症はまったくの無害」とのこと。

そして仮に柑皮症になったとしても、β-カロテンの摂取量を減らせば、自然と元に戻ります。

しかし気にしておくべき点もあります。

β-カロテンの過剰摂取は、それ自体が危険でなくても、背後に摂食障害が隠れている場合があるからです。

炭水化物や脂質を過度に避けたり、オレンジ色の食品以外を食べることに恐怖を感じたりしているなら、それは拒食症などの摂食障害かもしれないのです。

やはり、食事はバランスが大切だと分かりますね。

肌の色を気にしすぎる必要はありませんが、ニンジンやミカンのようなオレンジの食品だけでなく様々な食品を楽しむと良いでしょう。


参考文献
“AN ORANGE TINT TO THE SKIN ISN’T NECESSARILY BAD.”


提供元・ナゾロジー

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