本記事は、大江 英樹さんの著書『知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応』(ワニブックス)の中から一部を抜粋・編集しています。

赤字なのは「国の一般会計」

多くの人が抱いている公的年金に対する勘違いについてお話をします。ひとくちに勘違いと言ってもさまざまなレベルがあります。週刊誌やネットの記事に書いてあることから、専門家や大学の先生と呼ばれる人たちの発言の中にも「これはどう考えても勘違いをされているのではないだろうか?」と首をかしげざるを得ないようなものもあります。

 当書では、勘違いのレベルを初級、中級、上級と3段階に分け、それぞれの勘違いについて、どこが間違っているのか?を数字のエビデンスを交えながら、詳しく解説しております。その中で、本記事では初級編の最初の勘違い「年金財政は赤字である」について取り上げ解説します。

 まず、一般に「我が国は巨額の財政赤字がある」と言われています。これは事実です。でも赤字なのは、あくまでも一般会計です。財務省が発表している「財政に関する資料」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm) を見てみましょう。

令和3(2021)年度の歳入・歳出の金額は106兆6097億円となっています。  歳入、つまり国の収入はと言えば、その大部分は税金です。税とその他収入を合計すると約63兆円です。  一方、歳出は106兆円あまりありますから、その差額は約43兆円になります。もちろん歳出の中にはこれまでの借金の返済や利息の支払いが約23.8兆円(これを国債費と言います)あり、これは借金を減らすためのお金ですから、純然たる赤字額は20兆円弱ということになります。主にこの赤字を埋めるため、そして国債の利息の支払いや元本の償還費をまかなうなどのために発行されている国債の残高は令和3年度末で990兆円になると見込まれていますので、言わば国の財政赤字は1000兆円近くあるということになります。

 ところが年金は、この一般会計とは別の勘定になっています。戦前からあったいくつかの保険事業を様々な紆余曲折を経て平成19(2007)年に統合してできた「年金特別会計」がそれです。

 年金特別会計には公的年金だけでなく、健康保険や子育て支援等の経理も含まれますが、公的年金だけを取り出してみると、年金積立金と言われるお金が令和元年度末で約190兆円あります。それが図3です。つまり、年金財政は赤字なのではなく、190兆円もの〝貯金〟を持っているのです。したがって、年金財政は赤字というのはまったく違います。

『知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応』より
(画像=『知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応』より)


知らないと損する年金の真実 - 2022年「新年金制度」対応
著者:大江 英樹さん/ワニブックス
定価:946円(税込)
ISBN-10:4847066642

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