節約や貯蓄の心配をしなくてよさそうな裕福な著名人でも、財布のひもをしめるところはしめて、しっかり貯蓄に励んでいる人も多い。

5000ドルを42万ドルに増やしたベンジャミン・フランクリン、事業を成長させるために自分の貯金を使うのではなく、投資家から必要なお金を集めたスターバックス会長兼CEOのハワード・シュルツ氏、情報を活用してかしこく買い物すビル・ゲイツ氏など、「お金を貯めたいのに貯まらない」人の参考になる貯蓄法を見てみよう。

「支出・収入を把握する」「細かい無駄づかいに注意する」「節約したお金を投資する」など比較的シンプルな方法ばかりだが、これがなかなか難しい。

ベンジャミン・フランクリン――貯蓄でも才覚を発揮 遺産5000ドルが42万ドルに

政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者など、様々な分野で米国の発展に著しく貢献したフランクリンは、貯蓄でも才覚を発揮した。「はした金に注意せよ。ささいな水漏れが大きな船を沈没させる」という名言を残している。

「100年間眠らせておけ」という遺言書とともに生まれ故郷のボストンに寄付した5000ドルが、100年後には42万ドル相当に膨れあがっていたという。長期間にわたる「投資」を真似するのは無理があるとして、住宅購入や子どもの大学費用、老後の蓄えとして、5年、10年、20年など長期的な貯蓄プランを実行するのは可能だろう。

ジョン・ロックフェラー――「帳簿は貯蓄の第一歩」 意外な無駄づかいを把握する

米国の石油企業スタンダードオイル創業者は、例え小さな支出・収入でもかならず書き留めていたそうだ。帳簿を見直し、「支出・収入を正確に把握することが貯蓄の第一歩」を信条としていた。

家計簿あるいは帳簿に、例え大雑把でもよいから家計費の流れを記録し、定期的に見直すと、「意外なところで無駄づかいしている」と気づくことも多々ある。「家計簿なんて面倒くさい」と思っていても、続けているうちに「どこをどう切り詰められるか」「どうすればもっと貯蓄を増やせるか」など、節約・貯蓄プランを立てるのも、楽しく感じるようになるかも知れない。

近年は無料の家計簿・貯蓄アプリなども種類が豊富だ。自分の生活スタイルに合ったものを見つけ、まずは1カ月挑戦してみるといいだろう。

余談だがエジソン・トーマスも「何でも書き留める」習慣があり、他界した後に直面した問題を書き留めたノートが25冊も発見されたという。

ハワード・シュルツ――「貯蓄には手をつけず、投資家を探す」

スターバックス会長兼CEOのシュルツ氏は、「事業を成長させたいのならば自分の貯蓄には手をつけず、他人のお金=投資を役立てろ」という思想の持主だ。1980年代、スタートアップ設立に40万ドル、8軒のエクスプレッソバーの開店に1..4億ドル必要だったシュルツ氏がアプローチした投資家の数は242人。そのうち義父を含む217人に投資を断られたという。

義父が出資を断った理由は、「身重の娘をいつまで働かせる気だ」という懸念からだった。「起業に熱中するあまり娘を大事にしていない」と公園のベンチで責められたシュルツ氏は、その場で涙を流したそうだ。

義父に責められても、200人以上から出資を断られても諦めなかったシュルツ氏の信念は、やがて花開くことになる。最終的には25人から資金を調達できたおかげで、スターバックスを世界のコーヒーチェーン店に育てることに成功した。

下積み時代のシュルツ氏に、貯蓄があったのかなかったのかは定かではない。奥さんが身重で働いていたということは、貯蓄はあまりなかった、あるいはまったくなかったのかも知れない。緊急用に置いておきたかったということも考えられる。

いずれにせよ起業や事業拡大で全財産をつぎ込んでしまう人も多いが、そうではなくてまずはお金をもっている人から出資を集める。今はクラウドファンディングなども定着しており、資金調達の機会も作りやすい。

「自分のお金を使わなければ減ることもない」という、シュルツ氏の発想は若干ずるいような印象を受けると同時に非常に合理的だ。

ジェフ・ベゾス ――「塵も積もれば山となる」 小さな節約をあなどるな

「塵も積もれば山となる」を地でいく世界一のお金持ち、ベゾス氏は、1994年にAmazonを立ち上げた当初、古いドアから自分のオフィスデスクを手作りしたそうだ。この辺りにすでに根っからの節約家の性質がにじみでている。不要なものは買わない、安くあげれるものは安くあげるという、徹底した節約スタイルだ。

初心を忘れることなく2009年には社内の自販機の電球をすべて取り外すことで、何万ドルもの光熱費節約に成功した―とベゾス氏自ら投資家宛ての手紙で報告。Amazonのような国際大手にとっては微々たる金額―などとあなどってはいけない。こまごまとした節約を続けることが、結果的に大きな貯蓄につながる。貯蓄したお金を投資すれば、さらに大きく増やすこともできる。

貯蓄するお金がないという人は、「無駄だな、必要ないな」と感じるものを、少しづつでも生活から排除していってはどうだろうか。例えば携帯やインターネットの利用プランをもっとお手頃なものに切り替える、コンビニに立ち寄る回数を減らす、水道の流しっぱなしや電気のつけっぱなしに気をつけてみるだけで、違いが見えてくるかも知れない。

ビル・ゲイツ――貯蓄のために「たくさんの情報を集めて有効に利用する」

Microsoftの設立者ゲイツ氏は「できるかぎりたくさんの情報を集めて有効に活用する」 ことが、貯蓄するうえで重要なスキルだと考えている。

例えば車や住宅など大きな買い物をする際、目についたものをすぐに買うのではなく、「できるだけ安く、できるだけ賢く買う」ために、あらゆる情報源を使って比較する。同じ商品やサービスでも、ここの店よりもあの店の方が得する―など、調べなければ分からないことも多い。ここでかけるひと手間が明日の貯蓄につながるわけだ。

情報を利用して金融リテラシー自体の向上を目指すのも有効だ。お金に関する正しい知識を身につけるのは、貯蓄を始めるうえで重要だ。「かしこく節約し、かしこく増やす」は、貯蓄上手の基本である。

イマン・シャンパート ――貯蓄しながらお金を増やす 給与の半分は投資口座に

若干27歳という若さで年間1000万ドルを稼ぎだすNBA選手イマン・シャンパート氏。稼ぎだしてからは給与を受けとるたびに、その半分を投資用の口座に自動入金している。貯蓄の大切さを理解しており、「例え高給取りでなかったとしても、同じことをしていた」という(CNBCより)。

給与の中から一定の額を貯蓄に回すという方法は一般的だが、ただ眠らすだけではなく投資に回している点がシャンパート氏の才覚を感じさせる。手間なしでお金が運用できる「自動投資」は、米国の作家デイビット・バック氏も推奨している。バック氏は自動化を利用して100万ドルを貯めるノウハウ本『オートマティック・ミリオネア』など、リテラシー関連の著書を出版している。

また35歳で100万ドル貯蓄を達成したクリス・レイニング氏も、自動金融を最大限に活用したひとりだ。「お金をどこにどう使うか、なにに使えるかなどという決断を、自分でくださなくてすむ」点を、お金を自動的に貯蓄・投資するシステムの利点として挙げている。

投資する準備ができていないという人でも、給与を使い果たしてしまう前に自動的に別の口座(貯蓄、支払い用など)に移してしまうだけで、「使ってはいけないお金」という意識が芽生えるはずだ。

シャンパート氏は「口座にお金が十分にはいっていると、不思議と無駄つかいは減る」とコメントしている。スポーツ界の花形スターでありながら、「小銭にむだにすることもない」地に足のついた姿勢から、学びとれることも多い。

トニー・ロビンズ――「自分の人生を楽しむために必要なものにのみお金を使う」

『成功法則―人生に奇跡を起こす12のステップ』『一瞬で自分を変える法』などの自己啓発本を多数出版している米国の作家トニー・ロビンス氏は、節約の秘訣を「自分の人生を楽しむために必要なものにのみお金を使うこと」だと述べている。

お金を貯めたいばかりに過剰に吝嗇になり、人生からいっさいの楽しみをうばうのではなく、例えば週1度楽しんでいた外食を2週間に一度に減らす。それだけで年間2000ドルぐらいは節約できるとする。節約したお金を年率8%で40年間運用すると、2000ドルが56万ドルに大化けする(Inc.comより )。

長く貯蓄を続けるコツは、貯蓄自体を人生の楽しみと見なすことだろう。例えば「30万円貯まったら格安プチ旅行にいく」などご褒美的要素を盛り込むのも励みになる。周囲がまゆをひそめるほど吝嗇になると、貯蓄という概念そのものにとりつかれ、いったいなんのために貯蓄しているのかさえ見失ってしまうかも知れない。

いうまでもなく、ご褒美やお楽しみはほどほどに。頻繁に自分を甘やかしてしまうと、「期待したほど貯まっていない」事実に幻滅し、貯蓄を断念することになりかねない。

オセオラ・マッカーティ――皿洗いでコツコツと25万ドルを貯めた女性投資家

最後に一風変わった「貯蓄の天才」を紹介しよう。オセオラ・マッカーティ氏の例は、彼女の死後に有名になった。貧しい皿洗いの老婦人として生涯すごしたにも関わらず、他界した際(1995年)、サザン・ミシシッピ大学に15万ドル、地元の教会に5万ドル身内に5万ドルを寄付したことで全米を驚かせた。

小学校すらまともにでていなかったマッカーティ氏は、こつこつと貯めたお金を貧しい学生の支援金として役立てて欲しかったという。低賃金で働きながらも銀行に7つの口座を開設し、投資でそれだけの財を築きあげたというから、非常に寛大なだけでなく投資家の才覚にもすぐれた女性だったと思われる。「特に高所得者でなくても、確固たる信念があれば巨額の貯蓄が可能」という一例だ。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)

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