30代も後半に差し掛かると、気になり始めるのが“健康”。健康診断でBMIやコレステロール値などがギクッとする数値になっていた…という人もいるのでは? 健康を維持するには日々の生活が基礎になるが、健康診断で体の状態を知ることも大事だ。さらに、脳ドックも定期的に行った方がいいと聞く。
MRIを使用する脳ドックは費用が高くて手が出ない…と、思っている人は多いだろう。しかし、最近は2万円以下で受けられるクリニックも出てきている。脳梗塞やくも膜下出血といった「初期には自覚症状がない」といわれる脳の病気を見つけられるのであれば、一度受けてみる、というのが責任あるオトナの行動ではないだろうか。
という事で、脳ドックを行うメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックの知久正明院長に、脳ドックの必要性について聞いた。
脳の病気の予兆を見つけ出す手段「脳ドック」
もともと脳ドックは「50歳になったら受けましょう」と、いわれていたものだった。その理由は、脳の病気が50代以降に発症することが多かったから。しかし、近年は「若いうちから定期的に受けましょう」といわれるようになっている。
「20代でも脳の病気の予兆が見られる人がいる、ということがわかってきたからです。脳梗塞やくも膜下出血といった脳の病気は、発症すると命にかかわる病気ですが、運良く治ったとしても後遺症として手足がしびれたり、しゃべれなくなったりといった症状が出てしまいます。病気になる前の“未病”の段階で見つけないと予防ができないので、早いうちから脳ドックで脳の内部を見ることが重要なのです」
脳ドックとは、磁気や電波を使って撮影するMRIという機器を用い、脳の構造や血管を画像にして診断する検査。
「脳ドックで見つかる病気は大きく3つあり、1つは脳の血管の変化。動脈硬化で細くなっている血管が見つかれば、脳梗塞の前兆といえますし、若い人だと血管奇形が見つかることもあります。2つ目が、くも膜下出血の原因となる血管のこぶ(動脈瘤)。3つ目が、脳腫瘍です。これらが早い段階で見つかれば、生活改善や薬物治療、ときには手術といった方法で予後を改善することができます。脳の萎縮のレベルを見ることで、アルツハイマー型の認知症の予兆を見つけることもできます」
もし、動脈瘤が見つかったとしても、定期的にMRIで確認し、大きくならないようであれば外科的な治療は必要ないという。しかし、血圧が高い人や家族がくも膜下出血や脳卒中を発症した人は、注意深く見ていく必要があるそう。
「私達のクリニックでは約5万人以上の方が脳ドックを受診してくださっているのですが、そのうち基幹病院での精密検査を勧める方が3%、経過観察が20%、問題ない人が残りの約80%という割合です。この比率は、若い人だけに絞ってもそこまで大きく変わりません」
問題がなかったとしても、生涯健康で暮らせるというわけではないため、定期的な脳ドックは大切。20代であれば4~5年に一度、30~40代であれば2~3年に一度は受けて、脳の状態を確認するといいとのこと。
「異常がない状態の脳を撮影しておくことで、将来的に症状が出た際の比較対象にすることもできます。医師も脳の変化や病気の原因を見つけやすくなるため、早いうちに一度脳ドックを受けておくことをおすすめします」
「画像のクラウド化」が正確な診断につながる
知久先生が院長を務めるメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックでは、脳ドックを1万9250円(税込)で受けることができる。一般的な病院だと、脳ドックの費用は3万~5万円ほどになるそう。
「当クリニックは脳ドックに特化しているため、MRIを脳の撮影だけに用いることで、撮影時間を短縮できるため、通常の2分の1の時間で検査できるようになっています。また、撮影した画像をクラウドに保管することで、受診者の方がウェブを介して診断結果や画像閲覧できるようにしているなど、スマート化を図っています」
MRIで撮影された数百枚にものぼる脳の画像は、即座にクリニックが管理しているクラウドにアップされる。そのため、遠隔画像診断が可能になるため、全国の放射線科医や脳神経外科医などの専門医に診断してもらえるのだという。
「受診者の診断結果は、放射線科医、脳外科医のダブルチェックの後、補助的にAI画像診断ソフトにて判定し、受診者にウェブを介してお伝えしています」
また、画像がクラウドに保管されるため、検査後すぐに受診者はウェブ上のマイページで自分の脳の画像を見ることができる。これも大きなメリットだ。
「ネット環境さえあれば、いつでもスマホやPCで脳の画像が見られます。そのため、旅行先や出張先で体調を崩した場合に、画像を現地の医師に見せて診断の材料にしてもらうことができるのです。検査を受けた病院から画像を取り寄せる手間が省けるので、万が一の時に安心といえるでしょう」
所要時間30分以下のスピーディーな検査
知久先生のお話を聞けば聞くほど、検査の必要性を感じたため、現在35歳の筆者はメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックで実施している「スマート脳ドック」を受診。
まずは、公式サイトから予約。希望の日にちや時間帯を選ぶと、問診が始まる。枠が空いていれば当日予約も可能。問診は自覚症状や生活習慣、家族の病歴など細かく質問が設定されているため、少し時間がかかるが、ここでしっかり答えておくことで正確な診断につながる。
予約の最後には支払い方法も選択する。検査当日の支払いだけでなく、クレジットカードや楽天ペイでのオンライン決済も選択できる。
既に問診を済ませているため、検査当日は受付で身分証を見せるだけ。受付番号のシートを渡され、すぐに待合スペースに通されると、1分も待たずに検査に呼ばれた。
更衣室に通されるものの、時計や金属のついたベルトを外し、スマホなどをポケットから出すだけで、着替えは必要ない。貴重品や荷物は更衣室に置き、鍵を閉められるため、盗難などの心配もなし。
準備が終わったら、あとは脳ドックを受けるだけ。MRIに横たわると、即座に撮影がスタート。10分弱の間、頭がMRIの筒状の中に入るため、閉所恐怖症だと緊張するかもしれないが、撮影中は寝ていてもいいとのことなので、目をつぶっていれば気にならないだろう。また、撮影中は断続的に大きな音が聞こえる。大きな音が苦手であれば、耳栓を貸してもらうこともできるそう。実際に経験してみると、10分より短く感じた。
撮影中は顔や体を動かせないため、万が一気分が悪くなった時に外部に伝えるためのブザーを握ることになる。ブザーがあると思うだけで、多少の安心感があった。
MRIでの撮影が終わったら、更衣室の荷物を持って受付へ。当日支払いの場合はここで清算となるが、今回はオンライン決済で支払っていたため、受付番号のシートを返却するだけだった。
「所要時間30分」と案内されていたが、実際は20分もかからずに終了。準備などで多少もたついたとしても30分で終わることは間違いなさそうだから、わざわざ休みを取らなくても出勤前や昼休み、退勤後に立ち寄れるだろう。
撮影された画像は、検査が終わる頃には既にウェブ上のマイページにアップされている。診断結果は、検査当日から1週間後を目安にマイページに届き、脳萎縮や脳梗塞などの病気ごとに「所見なし」「所見あり」や「Grade」という形で表示される。「所見あり」や「Grade 1」以上の場合は、必要な検査や処置についてのコメントも記載されるという。
ちなみに、メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックでは、「CT肺・心血管ドック」(1万450円(税込))、「CT体脂肪検査」(2200円(税込))をオプションで加えることも可能。肺や心臓の病気、肥満が気になる人は、合わせて行うといいだろう。2つの検査をプラスしても、所要時間はほとんど変わらないそう。
「30代を超えると、結婚や出産を経て家族を持つ方も増えると思います。そうなると健康は自分のためだけでなく、家族のためにも維持していきたいものになるので、特に症状が見られないうちから体をチェックし、未病の段階で予防していくことをおすすめします」
大切な人のためにも、年齢に関係なく思い立った時に受けておきたい脳ドック。2万円以下で受けられるなら、ライフコストとしてとても高い価値を感じられるのではないだろうか。
知久正明
医療法人社団ウェルプリベンション理事長、メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック院長、医学博士。日本大学医学部大学院修了後、国立甲府病院、国立循環器病センター、日本大学医学部循環器内科、敬愛病院附属クリニック院長を経て、2017年12月にメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックを開業。
取材·文=verb
撮影=大庭元
提供元・男の隠れ家デジタル
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