ミュータントの誕生は近いかもしれません。

現実に私たちが超人的な能力を手に入れるには、遺伝子の操作がカギを握ります。

ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ博士は2019年、人体に突然変異を起こす可能性のある遺伝子のリストを作成しました。

このリストをもとに遺伝子操作すれば、痛みを感じなくなったり、寿命を人工的に伸ばすことも夢ではないといいます。

リスト作成について、チャーチ博士は「あくまで医療的な目的のため」としていますが、多くは語っていません。

何だかマッドな匂いがしますね。

目次

  1. 超人を作り出す「ゲノム編集」とは
  2. 超人遺伝子のリスト
  3. ホーキング博士の予言「ゲノム編集は裕福層のひとり勝ち」

超人を作り出す「ゲノム編集」とは

超能力を生み出す「遺伝子リスト」がハーバード大学の遺伝学者により作成される
(画像=ジョージ・チャーチ博士(1954-) / Credit: Chem-Station、『ナゾロジー』より引用)

人体に遺伝的な変異を起こすにはゲノム編集を行う必要があります。

ヒトのDNAは、個人の遺伝情報がすべて記録しており、いわば「人体の設計図」です。

この遺伝情報の全体をまとめてゲノムと呼び、先天的な特徴はこのゲノムによって前もって決められています。

そして、ゲノムを目的に合わせて改変することがゲノム編集です。

例えば、病気の原因となる遺伝子を取り除けば、人工的に健康な子どもを作ることができます。

さらに、人体を強化する遺伝子を組み込めば、超人を作り出すことも可能というわけです。

まさに人類は、神にのみ許された領域に足を踏み入れようとしているのかもしれません。

では、チャーチ博士が作成したリストには、どんな能力をもたらす遺伝子が記載されているのでしょうか。

超人遺伝子のリスト

チャーチ博士が作成したリストには、遺伝子名の横に「遺伝子型」「効果」「副作用」の順に内容が記載されています。

その中からいくつか抜粋してみましょう。

(リストの全体はこちらから閲覧できます)

LRP5遺伝子 効果:骨密度・骨格の増加および強化 副作用:水中における浮力の低下

SCN9A遺伝子 効果:痛みへの無感覚化 副作用:何らかの害(Unnoticed harm)

PDE10A遺伝子 効果:水中での長時間潜水 副作用:不明

BHLHE41 = DEC2遺伝子 効果:必要睡眠時間の短縮・調節 副作用:不明

CTNNB1遺伝子 効果:放射能への耐性 副作用:不明

TERT遺伝子 効果:エイジングの減退 副作用:不明

GRIN2B遺伝子 効果:学習能力・記憶力の向上 副作用:不明

PDE4B遺伝子 効果:不安症・緊張症の緩和 問題解決能力の向上 副作用:不明

リストを見れば一目瞭然なように、遺伝子の副作用が列挙されているものは少なく、ほとんどの遺伝子についてどのような欠点があるのかほとんど分かっていません。

ただこうした遺伝子を組み合わせれば、魚のように水中を泳げ、短い睡眠時間で活動でき、痛みも感じないような超人的兵士を作ることも可能なのです。

ホーキング博士の予言「ゲノム編集は裕福層のひとり勝ち」

超能力を生み出す「遺伝子リスト」がハーバード大学の遺伝学者により作成される
(画像=ホーキング博士 / Credit: daviddarling、『ナゾロジー』より引用)

しかし、こうした人類の進歩の裏には、必ずネガティブな問題がついて回ります。

イギリスの著名な物理学者スティーヴン・ホーキング博士(1942-2018)は生前、人体の遺伝子操作によって生じる社会問題について指摘していました。

例えば、優れた超人への遺伝子操作を受けられるのが裕福層に限られてしまうと、貧困層との間に「遺伝子格差」が生じてしまいます。

すると経済的な溝ばかりでなく、才能や容姿、寿命などすべて裕福な人々が独占してしまうのです。

また、ホーキング博士は「人体のゲノム編集技術は今後50年以内で飛躍的に進歩し、人為的な遺伝子操作が当たり前となる社会が到来する」と予言していました。

ホーキング博士の予言が当たった時、人間社会はどう変貌するのでしょうか。

人類が自分たちの手によってユートピアを築くのか、それともディストピアに陥るのか、今が分かれ目のようです。

この記事は、2019年6月13日の記事を再編集したものです。

提供元・ナゾロジー

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