アメやキャンディ、チョコ、ジュースなど、バナナ味の嗜好品はたくさんあります。

しかし、本物のバナナと食べ比べてみると、何か違う…

バナナっぽさは感じるけど、バナナ本来の味にはほど遠い。

「本物じゃないから当然」といえばそれまでですが、化学的にはどんな違いがあるのでしょうか?

身の周りに潜む化学の謎を解明するアメリカのYouTubeチャンネル、「Reactions」の研究チームが迫りました。

目次

  1. 人工的なバナナ味を再現するカギとは?

人工的なバナナ味を再現するカギとは?

人工的に作られたバナナフレーバーの正体は、「酢酸イソアミル(isoamyl acetate)」という香気成分です。

無色透明の液体で、バナナやメロンに似た果実臭があります。

そのため、バナナエッセンスの香料としてよく使用されます。

実際、酢酸イソアミルは本物のバナナにも含まれていますが、バナナ風味のお菓子のような匂いはしません。

また、人工的なバナナ風味に最も近い品種は、タイワンバナナの「グロスミシェル」と言われます。

グロスミシェルは北米で長らくメジャーな品種でしたが、1950年代の疫病拡大により数が激減。

それ以降、北米のスーパーでは「キャベンディッシュ」という品種が一番に売られるようになりました。

バナナ味の食品はなぜホンモノと味がちがうのか? バナナ味を再現する成分を調査
(画像=1950年代にグロスミシェルが激減 / Credit: youtube、『ナゾロジー』より引用)

バナナの品種は現在1000種ほどありますが、人工的なバナナフレーバーはそのどれをも手本にしていません。

しかし、その中で最も近いのが、グロスミシェルを食べたときの後味だとされます。

そこで調査チームは、グロスミシェルが他の品種よりも酢酸イソアミルを多く含んでいるのかを調べました。

ステップ1として、それぞれの品種からさまざまな香気成分を抽出します。

アメリカ・モネル化学感覚研究所のパム・ダルトン博士によると、純アルコールの中にバナナを浸すと、香りの主成分が分離できるとのこと。

しばらくその状態で浸けておき、固体部分を取り出して水分を切ります。

今回はグロスミシェルやキャベンディッシュを含むいくつかの品種を対象に、10グラムずつに切り分け、60mlの純度95%のエタノールに2週間漬け込みました。

バナナ味の食品はなぜホンモノと味がちがうのか? バナナ味を再現する成分を調査
(画像=アルコールに漬けて香気成分を抽出 / Credit: youtube、『ナゾロジー』より引用)
バナナ味の食品はなぜホンモノと味がちがうのか? バナナ味を再現する成分を調査
(画像=2週間漬けておく / Credit: youtube、『ナゾロジー』より引用)
バナナ味の食品はなぜホンモノと味がちがうのか? バナナ味を再現する成分を調査
(画像=取り出した香気成分のサンプル / Credit: youtube、『ナゾロジー』より引用)

ステップ2では、取り出した約30種の香気成分を化学的に分析します。

ユーティカ大学のカーティス・プリアム博士に協力してもらい、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて、どの品種が最も酢酸イソアミルを含むかを調べました。

その結果、酢酸イソアミルが最も多かったのは、グロスミシェルとキャベンディッシュで、どちらも同じくらいでした。

しかし、この2品種でさえ人工的なバナナ味とほど遠いのは、香気成分が酢酸イソアミル以外のものと束になっているためです。

研究を行ったサマンサ・ジョーンズ氏は「本物のバナナの味は、色々な成分が混ざってできるものであり、酢酸イソアミルだけでは再現できません。

予期できた答えではありますが、化学的に証明するとはこういうことです」と話しました。

〇〇風味の嗜好食品を作るコツは、似顔絵を描くときのように、一番特徴のある部分を抜き出して、強調することなのかもしれませんね。


参考文献
Video: Why banana candy doesn’t taste like banana

提供元・ナゾロジー

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