目次

  1. 探検隊による調査報告
  2. 謎が深まる爆発原因
  3. 隕石が原因だが落下はしなかった
ツングースカ大爆発をもたらした小惑星はまだ太陽を回っている可能性
(画像=Credit:universetoday,Wkipedia Commons、『ナゾロジー』より引用)

point

  • ツングースカ大爆発は1908年帝政ロシアのシベリアで発生した謎の爆発現象
  • 隕石の落下と考えられているが、隕石の破片やクレータは発見されていない
  • 新説は、200m級の隕石が浅い角度で大気圏を通り抜けた衝撃波としている

1908年の夏、ロシア帝国領中央シベリアのツングースカ川上流で、突然空に巨大な火球が現れました。

目撃者の証言によると「青白い光の筋が空を横切り、その後とてつもない大爆発が起こった」といいます。

この爆発では半径50kmの森が焼け、2000平方キロメートル以上に渡って樹木がなぎ倒されていました。

このすさまじい被害の原因は隕石の空中爆発だと考えられています。しかし、その証拠となるクレーター痕や隕石の破片はどこにも見つかっていません。

そのため、地下から噴出した大量の天然ガスが原因とする説も存在します。

しかし「ツングースカ大爆発」として知られるこの事件の正確な原因は、未だ多くの謎に包まれています。

新しい研究は、これが200m級の小惑星が地球大気圏に浅く侵入して弾かれたことによる衝撃波だったと発表しました。

隕石の落下だと思っていたのに、ただ軽く地球の大気に触れただけとは、まるで「今のはメラゾーマではな無い…メラだ」と言われるくらいの衝撃です。

探検隊による調査報告

ツングースカ大爆発をもたらした小惑星はまだ太陽を回っている可能性
(画像=1927年にクーリック探検隊が撮影した倒木の写真。一方向に木がなぎ倒されている。/Credit:Wkipedia Commons、『ナゾロジー』より引用)

ツングースカ大爆発の調査を難しくしている理由の1つは、現場がとても辺鄙な場所にあるためです。

この地域は人口がまばらで、目撃者もほとんどいません。

現地で科学的な調査が行われたのは、発生から20年近く経過してからでした。

このとき爆発地域の地図が作成され、現地でクレーターの探索が行われましたが、その痕跡は発見できませんでした。

1960年代になると、この爆発のエネルギーが約5メガトン級の核爆発によるエアバーストに似ていると発表されます。

広島に落とされた原爆は16キロトン級だったことを考えると、ツングースカの爆発は広島原爆の300倍近い威力だったことになります。

しかし、この地で一体何が起きたかは依然謎のままでした。

謎が深まる爆発原因

可能性がもっとも高いと考えられたのは、隕石が大気中で爆発したことによるエアバースト現象です。

これは2013年に同じくロシアのチェリャビンスク州上空で発生していて、カメラにもその様子が撮影されています。

ツングースカ大爆発をもたらした小惑星はまだ太陽を回っている可能性
(画像=2013年2月に撮影されたチェリャビンスク隕石。/Credit:en.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

このチェリャビンスク隕石は、元は17m級の隕石でしたが大半が大気圏で蒸発し、上空20キロメートルで爆発し空中分解したと考えられています。

その威力はTNT火薬約500キロトンに相当し、広範囲に渡る建物の損壊と1000人以上の重軽傷を出しました。

ここから推定すると、ツングースカ大爆発の原因は70m級の隕石の空中爆発だったと推定されます。

しかし、チェリャビンスク隕石では数多くの隕石の欠片が見つかりましたが、ツングースカでは度重なる調査が行われたにもかかわらず、隕石の欠片はまったく見つかっていません。

隕石ではなく天然ガスの流出が原因という説もでていますが、そうなると上空に光の筋が走っていたという目撃報告と食い違うことになります。

そのため、異星人の宇宙船が墜落したのだという荒唐無稽な説も登場し、1990年代に人気を博した海外ドラマ「X-Files」でもネタにされるような有名な超常現象になってしまいました。

隕石が原因だが落下はしなかった

今回の研究は、この原因について新しい説を提案します。

その説では、小惑星は大気中で爆発せず、大気圏に弾かれて地球に落ちなかったというのです。

似たような事例は1972年、米国のユタ州とワイオミング州で目撃されています。

「1972年の昼間火球」と呼ばれるこの現象では、上空57キロメートルの大気圏内を10メートル以下の小天体が、100秒間通過し再び宇宙へ抜けていったとされています。

この様子は、ワイオミング州の国立公園を訪れていた観光客によって撮影されています。

ツングースカ大爆発をもたらした小惑星はまだ太陽を回っている可能性
(画像=1972年、ワイオミング州グランドティトン国立公園で撮影された画像。Credit:NASA、『ナゾロジー』より引用)

これは隕石の大気圏突入角度が浅かったため、地球へ落下するほどには減速せずに、そのまま宇宙空間へ通り抜けていったという珍しい現象です。

研究チームは、同様の現象がツングースカで起きた可能性について考えました。

ツングースカ大爆発をもたらした小惑星はまだ太陽を回っている可能性
(画像=隕石大気圏突入による軌道変化。/Credit: Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Volume 493,Khrennikov(2020), et al、『ナゾロジー』より引用)

この研究では、大気圏で弾かれた隕石がツングースカ大爆発と同等の被害を及ぼす場合について、いくつかのシナリオをモデル化して検証を行いました。

その結果、直径約200メートルの鉄が主体の小惑星が、浅い角度で大気圏内に突入した場合、地上10kmまで接近した後、ほぼ無傷で宇宙へ出ていくことがわかりました。

このとき、小惑星周辺で急速に圧縮された空気は、観測されたような爆風を形成するのに十分だったと考えられます。

つまり、ツングースカ大爆発は隕石落下が原因ではなく、小惑星が浅く大気圏に侵入し通り抜けて行った衝撃波だったというのです。

これならば、クレーターも隕石の欠片も発見されない理由、空を青白い光が横切ったという目撃報告、甚大な被害について、全てに説明がつきます。

ただ、残念ながらこの現象はほぼ痕跡を残さないため、この事実を証明する方法がありません。

氷が主体の彗星が大気中で爆発したという可能性も捨てることはできません。確かなことは、もはや誰にもわからないでしょう。

しかし、もし事実ならば、この小惑星は今でも太陽に近い軌道を周回していると考えられます。いずれツングースカ大爆発の犯人と目される小惑星が発見される日が来るかもしれません。

この研究は、シベリア連邦大学の研究者Daniil E Khrennikov氏を筆頭とした研究チームより発表され、天体物理学に関する査読付き学術雑誌『王立天文学会月報』 に2月4日付で掲載されています。

On the possibility of through passage of asteroid bodies across the Earth’s atmosphere

提供元・ナゾロジー

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