Point
■プテラノドンの首元に「サメの歯」が食い込んだ化石についての詳細研究が行われた
■白亜紀最大のサメ「クレトキシリナ」のものとされるその歯は、海中からプテラノドンをハントしたときに食い込んだと考えられる
■ 現代のサメも海面の鳥をハントすることがあり、その手法はおよそ8,000万年前のクレトキシリナから受け継がれた可能性がある
1965年、ある考古学者がカンザス州のスモーキーヒルチョークにて大きなプテラノドンの化石を発見しました。白亜紀後期に栄えた翼竜の代表格であるプテラノドンの化石はこれまでも多く発掘されており、そのサンプル数はおよそ1,100にものぼります。
しかし、そこで発見された化石は「ふつう」の化石ではありませんでした。なんと、その首元の骨にはプテラノドンとは縁遠いはずである「サメ」の歯が食い込んでいたのです。
Evidence for the Cretaceous shark Cretoxyrhina mantelli feeding on the pterosaur Pteranodon from the Niobrara Formation
■白亜紀の海の覇者「クレトキシリナ」
いったいその時代に何が起こっていたのでしょうか?その答えは驚くべきことに、当時「空」の偉大なる捕食者であったプテラノドンが、「海」の偉大なる捕食者であったサメの被害者となっていた可能性があるということです。
その「巨大さ」で知られるプテラノドンの翼の長さは、広げた状態で16フィート(約4.9メートル)以上もあり、その体重はおよそ100ポンド(約45キログラム)程度。そして彼らはペリカンのような顎で海に狙いを定め、魚を捕食していました。
しかし、そんなプテラノドンに食い込んでいた「歯」の持ち主は、さらに巨大な「クレトキシリナ」と呼ばれるサメであることが分かっています。
その全長は約23フィート(約7メートル)。当時における最大のサメとして知られています。
ただし実際の化石に食い込んでいた歯の大きさは、クレトキシリナとしては小さなもので、その持ち主は、歯のサイズから推測して全長およそ8フィート(約2.4メートル)ほどしかなかったと考えられます。
■受け継がれる海面からのハント
もちろんクレトキシリナが、海に流れ着いたプテラノドンの死体を貪った際に歯が食い込んでしまったことも考えられます。しかし、プテラノドンがハンティングの最中に、逆に海からの襲撃を受けてハントされてしまった可能性もあるのです。
プテラノドンは、海中へとダイブして獲物を捕らえたり、海面近くに陣取って獲物をすくい上げるといった方法で狩りをおこなっていたと考えられています。つまり、プテラノドンのハンティング・ポジションは、お腹をすかせて海面下に潜むクレトキシリナの「攻撃範囲内」であったということです。ということです。
サメは獲物を追う際にものすごい勢いで海面から飛び跳ねることで知られていますが、クレトキシリナはプテラノドンを捕らえるためにそこまで高く跳ね上がる必要はなかったと考えられます。
また、研究者によれば、たとえ平均的なサイズのクレトキシリナが相手であったとしても、無防備なプテラノドンは簡単にハントされてしまったであろうとのことです。
化石のプテラノドンが実際にどのような最期を迎えたのかについて、決定的な証拠があるわけではありません。しかし、このようなサンプルはこの種の研究において非常に重要なヒントを与えてくれるものです。
1,000を超えるプテラノドンの化石のうち、その「捕食行動」の証拠となるようなものはたったの「7つ」しか存在していなかったのです。
現代の海に生きるサメも、海面近くを飛ぶ鳥を捕食することで知られています。今回の発見により、そのハンティングの手法がおよそ8,000万年前にも行われていた「歴史のある」ものであることがわかったのです。
reference: smithsonian.com / written by なかしー
提供元・ナゾロジー
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