各国のマクドナルドのビッグマックの販売価格から各国の経済力を測る「ビックマック指数」が有名だが、世界にはほかにも様々な景気指数が存在している。

エスティローダーのレナード・ローダー前会長が考案した「リップスティック指数」、アラン・グリーンスパン第13代連邦準備制度理事会(FRB)議長が採用していた「パンツ指数」のほか、「ワニ・蚊増殖指数」「長距離恋愛指数」など、7つの一風変わった予想の仕方と的中例を紹介しよう。

リップスティック指数 ——不況時には口紅が売れる?不況時も売上11%増

米国の大手化粧品メーカー、エスティローダーのレナード・ローダー前会長が2001年のインターネットバブル崩壊直後、「不況時には女性が小さな贅沢品である口紅を沢山買う」という理論に基づいて考案したもの。同年秋の米国における口紅の売上高は11%増(エコノミスト2009年1月23日付記事)。

「不況時は化粧品のような贅沢品が売れない」と思いがちだが、「化粧品は贅沢品ではなく必需品」という女性も多い。何万円、何十万円もする高価なバッグやジュエリーには手が届かなくても、数千円の口紅程度ならば「ちょっとした自分へのご褒美感覚」も味わえる。

ローダー前会長の理論はリーマンショック真っ只中の2008年にも的中。エスティローダーの第4四半期の収益が31%増となっただけではなく、ほかのブランドの口紅も売上を伸ばしたという。

パンツ指数——懐がさみしい時に買わないアイテムNO.1?男性用下着

男性用の下着の売上を景気の判断材料にしていたのは、アラン・グリーンスパン第13代FRB会議長だ(Investopediaより)。真相はどうであれ、「男性は女性ほどひんぱんに下着を買い込まない」というのが定説だ。懐がさびしい時に真っ先に削られるのはパンツだろう。奥さんに買ってもらっている場合でも、奥さんが真っ先に削るのはご主人のパンツではないだろうか。

Euromonitorが北米における男性用下着の売上を集計したデータによると、確かに2007~2009年にかけて売上は40億ドル強に落ち込んだものの、景気とともに回復。2015年には50億ドルを突破した。

離婚率指数——景気後退局面で中は離婚が減る?

ウィスコンシン州マーケット大学経済学部のアブドゥッラ・チョードゥリー教授は1978 ~2009年の米国の離婚率のデータから、金融危機見舞われた2007 ~09年の期間、離婚率に変動があった点を指摘している。金融危機突入前の2005年には1000人につき164人が離婚していたところ、2007年には175人に上昇。2009年には再び169人に減った。

このデータだけでは何とも判断しかねるが、チョードゥリー教授は「景気減退が多くの夫婦に離婚を思いとどまらせた」と述べている(marquettewire2012年11月20日付記事 )。「不景気をともに乗りこえ、夫婦の絆が強まった」という見方が強いが、「打算的な心理も働いたのではないか」との指摘もある。

結婚には多かれ少なかれ経済的利点があるものの、離婚はお金がかかるばかりだ。裁判所で争うことになれば、弁護士・裁判費用は勿論のこと、慰謝料までのしかかってくるかも知れない。景気後退で経済的な圧迫を感じている時に、わざわざお金のかかる行動をとりたくない—という心理は理解できる。

ハッピーミール指数——子ども向けメニューのおもちゃが減る

ビッグマック指数ならぬ、ハッピーミール指数なるものも存在する。特にマクドナルドの子ども向けメニューだけではなく、様々なレストランの子ども向けメニューを指している。

至ってシンプルな理論で、不況中は子ども向けメニューのおもちゃの質や量が落ちるという。現に2009年、米国の大手チェーンレストラン、レッド・ロビン・グルメバーガーズの子ども向けメニューで、おまけのクレヨンの本数が減ったそうだ(NPR2009年10月6日付記事 )。

長距離恋愛指標——就職難で遠方に働きにでざるを得ない?

「不況時には長距離恋愛カップルが増える」という説は、不景気で職が見つからず、仕方なく遠方まで働きにでるパターンが増えるという理論に基づくものだ。リストラされたが次の職が見つからない、苦労して見つけた再就職先はかなり遠いが背に腹は代えられない—といったところだろうか。

これについては正確なデータが公表されていないが、「遠距離で付き合うぐらいならさっさと別れて近場新しい相手を見つけよう」というシビアなカップルよりも、「遠距離でも大事に関係を育てていきたい」と願う純粋なカップルが多いことを信じたいものだ。

ワニ繁殖増殖指数、蚊増殖指数——高額なワニ革や家は売れない?

不況の中、口紅は売れてもワニ革のハンドバッグやベルト、靴など、値が張るものは売上が著しく落ち込む。その結果、ハンドバッグに加工される運命から逃れたワニがどんどん繁殖していくという理論だ。

納得できるようなできないような微妙なラインではあるが、2009年、ワニの養殖で有名なルイジアナ州の養殖業者の多くが、深刻な支払い不能状態に陥ったという(ニューヨークタイムズ紙2009年11月30日付記事 )。

不況になると蚊が増えるというのも似たような理論だ。空き家が増える、あるいは手入れがおざなりになった結果、放置された野外プールなどに蚊が繁殖する。金融危機中、アリゾナ州マリパコ群の環境サービス部が対応した蚊駆除の件数は、2007年と比べて60%跳ね上がったそうだ(ビジネス・インサイダー2014年10月23日付記事)。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)

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