誰しも「幸せでありたい」と願うものです。
ところが幸福を追求しすぎると逆効果になる場合があります。
オーストラリア・フェデレーション大学(University of Ballarat)に所属する心理学者アンシュリー・ハンフリー氏ら研究チームは、「常に幸せを感じていなければならない」「ネガティブな感情をもってはならない」という非現実的なプレッシャーが、当人を苦しめると発表しました。
研究の詳細は、3月8日付の学術誌『Journal of Positive Psychology』に掲載されています。
「幸福度=人生の価値」なのか?
世の中では「幸福度が人生の価値を決める」という考えが広まっています。
そのため、ある人々は「今、自分が幸せかどうか過度に気にする」傾向にあります。
自分の幸福度を絶えず評価するため、結果的に「幸せでなければならない」という強迫観念に追い込まれてしまうのです。
幸福を求めすぎるがゆえに、幸福でなくなっています。
では幸福を求めること自体が問題なのでしょうか?
そうではありません。いくつかの研究では、「その場で幸福を得ようとするのではなく、将来の幸福を求めて最善の行動を起こしている人は、ポジティブで人生の満足度が高い」という結果が出ています。
つまり、「今幸せか気にする人」よりも「将来の幸せのために、今頑張る人」の方が幸せなのです。
研究チームは、この2つのグループがもつ考え方をいくつか比較し、「幸せを求めているのに不幸になってしまう原因」を見つけようとしました。
ネガティブな感情を認める人の幸福度は高い
アメリカの参加者500人の価値観や考えを調査した結果、幸福度が人生の価値を決めると考える人は、ネガティブな感情を抱くことを避ける傾向にあると分かりました。
それらの人は「ネガティブな感情を抱くと人生の価値が下がる」と考えてしまい、落ち込んだり不安になったりしないよう自分に強いプレッシャーをかけていたのです。
一方、将来の幸福のために1日1日最善を尽くして行動する人は、逆にネガティブな感情を避けようとしていませんでした。
現在の幸福を過度に求めないので、「落ち込んだり不安になったりすることはある」と考えます。
そして、一時的にそのような感情を抱くことがあっても、「人生の価値は下がらない」と感じていたのです。
この結果から、意図的にネガティブな感情を抑制または回避しようとすることが、幸福度を下げると分かります。
実際、2017年の研究では、ネガティブな感情を回避しようとするプレッシャーが、その後の抑うつ症状をもたらす、という結果が出ています。
私たちが本当の意味で幸せになるには、ネガティブな感情を受け入れるべきだったのです。
同時に将来の幸せに向けて行動することも大切だと分かりました。
不遇に負けず目標に向かって頑張っている人はキラキラと輝いて見えますが、それこそが「幸福度の表れ」なのかもしれませんね。
提供元・ナゾロジー
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