ドライブしながらお気に入りの音楽を聴くのは、大きな楽しみの一つです。

しかし、ブルネル大学(Brunel University・英)の最新研究により、運転中に「歌詞付きのアップテンポな曲」をかけると、精神的な過負荷となり、注意散漫で事故を起こす可能性が高くなることが示されました。

また、音量が上がるほど、ドライバーへの刺激やストレスも強くなるようです。

研究は、7月4日付けで学術誌『Transportation Research』に掲載されています。

目次

  1. 都市部の運転で「ハードな音楽」は危険?

都市部の運転で「ハードな音楽」は危険?

本研究では、成人男女の被験者34人を対象に、都市部の道路を再現したドライビングシミュレーターを用いて、設定されたルートを走ってもらいました。

各8分間のシミュレーションでは、道路を横断する歩行者、赤信号、トラックの追い越しなど、5つのイベントに対処しなければなりません。

また運転中は、都市部の交通騒音、話し言葉、ソフトな音楽(歌詞ありと歌詞なし)、ハードな音楽(歌詞ありと歌詞なし)の6つのサウンド条件のいずれかに設定して、ドライバーをモニタリングします。

その結果、ドライバーは、大音量かつ歌詞付きのハードな音楽を聴く場合、歌詞なしのソフトな音楽に比べて、情動(感情)の刺激レベルが高くなることが判明しました。

以前の研究でも、大音量で歌詞付きの音楽は、精神の活性化や攻撃性のレベルを高め、特に若いドライバーの過信を助長する可能性があると指摘されています。

運転中に「歌詞付きのハードな音楽」をかけると事故の危険性が高まる
(画像=都市部では音楽以外に注意を向けるべきものが多い / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

また、都市部は交通密度が高く、交差点や道路工事が頻繁に行われ、歩行者や自転車、バイクが入り乱れるため、運転への集中力が特に重要になります。

シミュレーターを使った実験では、75デシベル(掃除機の音程度)の大音量の音楽を聴いたとき、ドライバーは、ソフトな曲よりも平均37%も多く刺激を受けることが示されました。

さらに、歌詞付きの音楽を聴きながら運転すると、男性よりも女性の方が心拍数が高くなったとのことです。

ただ、被験者のサンプル数が少ないため、性別差の指摘するのは早急すぎるかもしれません。

研究主任で心理学者のコスタス・カラゲオルギス(Costas Karageorghis)氏は、次のように述べています。

「運転中に音楽を聴く際に最も重要なことは、精神的に過負荷にならないようにすることです。

交通事故の内的・外的要因はいくつもありますが、コントロールが最も容易なのは、トークラジオやポッドキャスト、音楽など、聴覚的な刺激の選択です。

注意散漫を最小限に抑えることで、ドライバーは運転や交通状態に集中でき、潜在的な危険を短時間で発見できる可能性が高くなります。

今回のシミュレーション研究から、ドライバーはストレスの多い都市環境で運転する際、精神状態を最適化するために、歌詞のないソフトな音楽の使用を検討すべきだということです」

十分わかっていることではありますが、運転中はくれぐれも車内をクラブハウス状態にすべきではありません。


参考文献

Time to tweak the car playlist? Listening to singalong hits behind the wheel increases your chance of making errors by leaving you ‘mentally overloaded’, study warns

元論文

Psychological and psychophysiological effects of music intensity and lyrics on simulated urban driving


提供元・ナゾロジー

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