植物には多種多様な微生物が住み着いており、病気やストレスから植物を保護してくれます。
これら微生物は土壌や種子から来ていますが、今回、別の供給源が見つかりました。
アメリカ・ミシガン州立大学(MSU)植物・土壌・微生物科学科に所属するマルコ・エンリケ・メカン・リョント氏ら研究チームは、微生物が雨と一緒に降り注ぎ、植物の上に住み着いていたと発表しました。
「雨でもたらされる微生物」を研究することで、植物の健康状態を改善させられるかもしれません。
研究の詳細は、6月1日付の科学誌『Phytobiomes Journal』に掲載されました。
雨にさらされたトマトの葉には微生物が多い

ある実験では、「雨にさらされたトマトの葉」と「実験室で栽培されたトマトの葉」が比較されました。
その結果、前者の方により多くの微生物が生息していると判明。
これにより「雨によって運ばれた微生物が植物の葉に定着した」という仮説が立てられます。
そこで研究チームは、この仮説を確かめるために実験を行うことにしました。
しかし植物は通常、土壌や雨、空気中の多くの微生物に絶えずさらされています。
また雨1mlに含まれる微生物の数はほんのわずかです。
「雨による微生物の定着効果だけ」を正確に抽出するのは簡単ではないのです。
では、どのような方法が用いられたのでしょうか?
雨に含まれる微生物は植物に定着していた
チームは最初に、「雨に含まれる微生物を抽出して培養する」ことにしました。
雨を集めてろ過し、無菌の水と微生物に分けるのです。
取り分けられた微生物は培養された後、無菌の水に再び戻されます。
これにより「微生物が高濃度に含まれた雨水」が完成。
次に、この高濃度の雨水を植物に噴射し、1週間培養しました。

その結果、植物上に生息している微生物が100種類以上増加していると判明。
仮説どおり、雨水に含まれる微生物が植物の表面に定着し、成長できることが確認されたのです。
「雨が微生物を運んで定着させる」という事実は、植物の健康状態を改善するのに役立つでしょう。
例えば、植物の病原菌を抑制する微生物を雨のように散布することで、病気を減らしたり予防したりできるかもしれません。
今後チームは、この分野をさらに調査する予定であり、いずれ雨に含まれる有益な微生物を特定したいと考えています。
参考文献
Raining Microbes? New Research Finds Rain-Borne Bacteria Colonize Plants
元論文
Experimental evidence pointing to rain as a reservoir of tomato phyllosphere microbiota
提供元・ナゾロジー
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