約2億5000万年前、地上海洋含め地球の生物の90%以上が死滅する大量絶滅がありました。
このペルム紀末の大量絶滅は史上最悪の大絶滅として今も多くの謎に包まれていますが、多くの科学者はその原因が火山活動による極端な地球温暖化にあったと考えています。
そして今回、米コネチカット大学(UConn)の研究チームによる最新の研究は、温暖化による絶滅のあと、川や湖でシアノバクテリアなどの大量発生が起こり、水が有毒化したことで淡水生態系の回復が大きく遅れた可能性があると発表しました。
これは現代の人類が作り出す汚染と類似していると、研究者は警告しています。
研究の詳細は、オープンアクセスジャーナル『Nature Communications 』に9月17日付で掲載されています。
ペルム紀末の大量絶滅
今から約2億5000万年前、ペルム紀末に地球では地上と海洋含め、10種に9種の生物種が死滅するという大規模な絶滅イベントが起こりました。
地球上のほとんどの生き物が失われたこの大量絶滅は、約6500万年前に起きた恐竜時代の大量絶滅より知名度は低いものの、地球史上最悪の大規模絶滅として有名です。
現代の研究では、この大量絶滅の原因が大規模な火山活動にあった可能性が高いと考えられています。
噴火により大量の温室効果ガスが大気中に放出され、大気の成分を変えるとともに、急激な地球温暖化をもたらし、さらに噴煙が陽光を遮って植物を枯らせたのです。
今回の研究は、こうした大量絶滅後の世界の変化や回復の速度に関して、新たな発見を報告しています。
研究チームは、オーストラリアのシドニー付近の岩石から、ペルム紀末の化石や堆積物の化学的な記録を調査し、この時期に淡水域ではシアノバクテリアや微細藻類の大量発生が定期的に起きていたことを発見しました。
これは現代でもアオコのような水質汚染として知られている問題と類似したものです。
現代とよく似た環境汚染が起きていた
アオコと呼ばれる池や湖などの水面が、緑色の粉を撒いたようになる現象を目にしたことがあると思います。
これはシアノバクテリアという植物プランクトンが大量に増殖することで起きています。
こうした微細生物は、正常な環境では光合成を行って水生生物へ酸素を供給しますが、数の制御が不能になると、逆に酸素を奪い、さらに毒素を放出するようになります。
研究チームによると、ペルム紀末の大量絶滅では、こうしたシアノバクテリアの大量発生と水の有毒化の条件が揃っていた可能性があるといいます。
ペルム紀末は温室効果ガスの大量放出と、地球温暖化が進んでいました。
それにより地球では森林火災が頻発するようになり、急激に森林破壊が進んでいきました。
木々がなくなると、栄養豊富な土壌が、川や湖に流れ込み始めます。
すると、水の栄養分が過多になり、これを餌とする微生物が増えていきます。
また、微生物を餌にする底生生物(貝やエビ、カニ、水生昆虫など)が死滅したことで、微生物を抑制するものがなくなったと考えられます。
このため、ペルム紀末の大量絶滅後の世界では、淡水域でのバクテリアの繁殖が頻発したのです。
これは生態系の回復を数百万年という単位で遅らせた可能性が高いようです。
そして研究者が警戒しているのは、今回の発見が、非常に現代の状況と類似しているということです。
ペルム紀は火山活動が原因でしたが、現代では人類の活動が大量の二酸化炭素を放出して地球温暖化を加速させています。
その大気中に放出される温室効果ガスの割合は、ペルム紀と現代で非常に近い値になると報告する研究もあるようです。
実際現代は、地球温暖化の影響で徐々に森林火災の発生率も上昇しています。
また、工場や家庭の廃液、また森林伐採による栄養分の流入で、水質が汚染されるという現象も現代ではよく確認されるものです。
こうした状況は、放置すれば現代も大量絶滅期に突入する恐れがあることを示しています。
そして何より恐ろしいのは、今回の研究が示した環境の回復には数百万年近い時間がかかった可能性が高いという報告です。
研究者の1人、コネチカット大学のフィールディング教授は次のように語っています。
「私たちは環境問題について、数年から数十年という単位で考えることに慣れています。
しかし、ペルム紀末の大量絶滅イベントは回復におそらく400万年かかりました。
これは驚くべきことです」
参考文献
Animals Died in ‘Toxic Soup’ During Earth’s Worst Mass Extinction, a Warning for Today
元論文
Lethal microbial blooms delayed freshwater ecosystem recovery following the end-Permian extinction
提供元・ナゾロジー
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