私たちは現実の存在ですか?

もしそうだとするなら、何がそれを証明しますか?

私たちが、何者かのコンピュータ内の「シミュレートされた存在」である可能性はないでしょうか?

このような仮説は「シミュレーション仮説」と呼ばれています。

Vsauce3 YouTubeチャンネルのホストであるジェイク・ローパー氏は、彼のチャンネルで「シミュレーション仮説」について解説。ある条件を満たせば「意識も文明もシミュレーションは可能だ」と述べています。

以下で説明する「5つの仮定」が立証できる場合、わたしたちは「シミュレーション」なのかもしれません。

目次

  1. 私たちはシミュレートされているのかも?
  2. 仮定1:意識のシミュレーションは可能
  3. 仮定2:技術革新が止まらない
  4. 仮定3:進歩した文明は自滅しない
  5. 仮定4:高度に発達した文明はシミュレーションを欲する
  6. 仮定5:もし、たくさんのシミュレーションがあるなら、私たちはおそらく、そのシミュレーションうちの1つである

私たちはシミュレートされているのかも?

私たちの「脳」や視覚などの「感覚」には限界があるので、宇宙の本質をそのまま経験することはできません。

ですから、それらを学ぶために、「道具」や「概念」を活用しています。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=宇宙を見るためにシミュレートしている / Credit;Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

例えば、私たちは実際に非常に遠く離れた宇宙を「目」で確認することができません。最新の望遠鏡を使っても、銀河系の詳細な仕組みを直接確認できないのです。

そんな時に役立ってきたのが「シミュレーション」です。

私たちが観測できる範囲の宇宙や、自然法則の情報を組み合わせて、コンピュータ内で仮想空間を作りあげるのです。

それらをコンピュータ内で作動させることで、動きや仕組みを予測することができます。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=シミュレーションのイメージ / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

これがあれば、もしかしたら将来、宇宙全体をシミュレートすることも可能かもしれません。

では、もし宇宙全体のシミュレーションが可能なのであれば、「既にそうなっている」とは考えられないでしょうか?

私たちが「シミュレートする側」なのではなく、「シミュレートされる側である」と考えることができないでしょうか?

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=何者かが地球をコンピュータ上でシミュレートしているのかもしれない / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

私たちは、何者かがコンピューターでシミュレートした世界の住人なのかもしれないのです。

ローパー氏は「そう仮定するためには、いくつか条件ある」と答えています。

もちろん仮定の話なので、話半分で、あくまで仮定の話として進めていきましょう。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=この世界がシミュレートかどうか判別するパズルのピースとは / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

ローパー氏は、オクスフォード大学教授であるニック・ボストロム氏の「シミュレーション論争」の改変されたバージョンに基づいて、5つの仮定を用意しました。

もし、それらの仮定が「真」であるなら、私たちはシミュレーションの中で生きていることになります。

仮定1:意識のシミュレーションは可能

シミュレーション内に人間を作りだすためには、人間の「意識」を作る必要があるでしょう。

脳はかなり複雑です。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=シミュレーションで意識は作れるのか / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

仮に、シナプス同士の1つの相互作用を1つの演算処理と数えてみましょう。

人間の脳は10の17乗、つまり10京に達する演算を毎秒行ないます。

そして、人間の意識を1秒シミュレートするのに、10の20乗の演算が必要だとします。

「文明」をシミュレートしたい場合、1人の意識では不十分です。いくつかの時代に存在するすべての人間の意識を再現する必要があるでしょう。

ですから、平均寿命50年の人間を2000億人シミュレートする必要があると仮定しましょう。

1年は3000万秒ですから、「人間社会」をシミュレートするには、

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=3000万×50×2000憶×(10の20乗) / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

毎秒「3000万×50×2000憶×(10の20乗)」

分かりやすくすると、

毎秒「100万×1兆×1兆×1兆」の演算ができるコンピューターが必要になります。

これは観測可能な宇宙の星の数よりも多い演算です。

もしこんなスーパーコンピューターがあれば、シミュレーションは可能になります。

仮定2:技術革新が止まらない

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=シミュレーション世界ではテクノロジーの進化がとまらない / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

もし、技術革新がこれまでと同じように続くと仮定したら、いつの日か、無制限のコンピュータパワーを持つ、銀河を股に掛けた文明が存在するようになるでしょう。

もしかしたら、既にそんな文明があるかもしれませんね。そんな文明は、いわば「神みたいな存在」ともいえるでしょう。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=人間は技術革新で神の領域まで達するかもしれない / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

毎秒100万×1兆×1兆×1兆の演算は、普通のコンピュータには難しい仕事ですが、これを処理できるコンピュータの構想があります。

それが「マトリョーシカ・ブレイン」です。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=星からエネルギーを得て作動する「マトリョーシカブレイン」 / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

これは理論上の巨大構造物です。

恒星を複数の層で覆い、中心の恒星からエネルギーを引き出し計算するというもの。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=マトリョーシカブレインなら地球規模のシミュレーションも可能? / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

この規模のコンピューターは、同時に数百万とは言わないまでも、数千の人間をシミュレートするのに十分のパワーでしょう。

もし、量子コンピュータが完成するなら、もっと小型化して、大都市か、小さな建物でのシミュレーションが可能になるかもしれません。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=「量子コンピュータ」も膨大なシミュレーションをするために利用できる / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

仮定3:進歩した文明は自滅しない

進歩した文明がいずれ自滅してしまうなら、大規模のシミュレーションは不可能です。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=文明が自滅してはいけない / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

文明は「グレート・フィルター」を超えてこそ生き続けることができます。

「グレート・フィルター」とは、生命が克服しなければいけない核戦争、小惑星や気候変動やブラックホール発生のような障害のことです。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=文明を存続させるためには「グレートフィルター」を克服する必要がある / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

私たちがエイリアンの文明を発見できないのは、彼らが「グレート・フィルター」を超えることができず、既に滅んでしまったからかもしれません。

もし生命が自滅から脱却できるなら、高度発展してゆき、大規模なシミュレーションにもたどり着くでしょう。

仮定4:高度に発達した文明はシミュレーションを欲する

人類が今とは比較にならないほどの知識や能力を得て、文明が高度に発展したとします。

この時の人類は「ポストヒューマン」と呼ばれます。

当然ですが、ポストヒューマンは私たちが理解できる存在ではないでしょう。私たちにとって「神に等しい存在が何を欲するのか」分かるなどと考えるのは傲慢です。

例えば、地上で最も賢いアリがいるとします。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=新人類「ポストヒューマン」はもはや人間ではない? / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

そのアリは人間が何をしているかに興味があるので、私たちは説明します。

しかし、アリには理解できません。

同じように、ポストヒューマンからすれば私たちはアリ同然です。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=ポストヒューマンは現在の人類からしたら雲上の存在 / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

「ポストヒューマンはきっとシミュレーションを欲するだろう」という考えは、人間視点であり、彼らにとっては馬鹿げたことかもしれません。

ですから、「高度に発展した文明がシミュレーションを欲する」という仮定が「真」であり、なおかつ、仮定1,2,3も「真」であるなら、私たちがシミュレーションだという可能性もゼロではありません。

仮定5:もし、たくさんのシミュレーションがあるなら、私たちはおそらく、そのシミュレーションうちの1つである

シミュレートされた文明が存在するなら、そのシミュレーション文明は1つではなく複数でしょう。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=シミュレートされた宇宙はたくさんある / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

ポストヒューマンが無制限の計算機資源を持っていると仮定すると、彼らはシミュレーションを何百万、数十億と実行するはずです。

シミュレートされた宇宙が何十億もあるなら、一兆×一兆のシミュレートされた意識が存在するでしょう。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=シミュレートされた宇宙が何十億もあるなら、一兆×一兆のシミュレートされた意識が存在する / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

これは、今までに存在した「意識をもつ存在」の大半が、シミュレーションであることを示しています。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=生き物の意識も複数あるかもしれない / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

ですから、生身の意識1つにつき十兆のシミュレートされた意識が存在するかもしれないのです。

この仮説に基づき、ローパー氏は次のように述べています。

「自分がシミュレーションかどうかを知る方法はないので、この場合、あなたが999999999999・・・999999のシミュレートされた意識の1つである可能性は、かなり高いだろう」

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=自分の意識も無限にシミュレートされた中の一つかもしれない / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

「だから、あなたが現実だと考えるものは、まったく現実ではないかもしれない。あなたはシミュレーションかもしれない」

さて、シミュレーション仮説を立証するための5つの仮定を紹介しました。

これらの仮定すべては、すぐにはテストできない多くの仮定に基づいています。

ですから、今、シミュレーション仮説を立証しようとしたり、否定しようと躍起になったりする必要はありません。

仮に私たちがシミュレーションだったとしても、自分の存在が、恐ろしくて奇妙なものになるわけではありません。

私たちは、良き人生を生き、良き時間を過ごすことを望んでいます。

この世界は現実じゃない? 5分でわかる「シミュレーション仮説」とは
(画像=この世がシミュレーションだったとしても、より良く生きることが大切 / Credit;Vsauce3、『ナゾロジー』より引用)

そして、私たちが実際にコンピューターのシミュレーションなら、誰も電源ケーブルにつまずいたりしませんように。


参考文献

Kurzgesagt – In a Nutshell


提供元・ナゾロジー

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