皆さんはスーパーで卵を買う時、「白い卵」と「茶色い卵」のどちらを買っていますか?

巷では「茶色い卵の方が栄養価が高い」という説が、まことしやかに囁かれています。

しかし、この説を裏付ける科学的な根拠はありません。

ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University:NCSU)のケン・アンダーソン氏は「白い卵と茶色い卵は、味も栄養価も基本的には同じ」と話します。

では、どうして茶色い卵の方が健康に良いと言われているのでしょうか?

目次

  1. 「茶色い卵が良い」という神話は、どこで生まれた?
  2. 白と茶色で栄養価に差はない

「茶色い卵が良い」という神話は、どこで生まれた?

卵の色はどうやって決まるのでしょうか。

アンダーソン氏によると、これはニワトリが食べたものではなく、主に品種に起因するとのこと。

大まかな識別としては、羽毛が白や淡色系のニワトリは白い卵を産み、赤茶や黒色系のニワトリは茶色い卵を産みます。

中には、南米原産のアローカナのように、水色の卵を産む品種もいます。

「茶色い卵は栄養価が高い」という説には科学的根拠がなかった
(画像=アローカナの水色卵(中央) / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

そして、「茶色い卵の方が栄養価が高い」と言われるようになった原因は、一般に、茶色い卵の方が白い卵より値段が高いからです。

値段の高い食材の方が、味も良くて栄養に優れていると考えるのは自然なことですよね。

しかし実際には、白い卵と茶色い卵とで、栄養価が変わることはありません。

では、なぜ茶色い卵の方が値段が高いのでしょう?

それは、茶色い卵を産むニワトリの品種が、おしなべて体格が大きく、エサをよく食べるからです。

歴史的に見て、白い卵を産む品種は、体が小さく、エサの量も少なくて済みました。そのため、飼育も比較的容易かつ、安いコストで大量の卵を生産できます。

ところが、茶色い卵を産む品種は、体も大きく、エサも良く食べるため、卵一個あたりのコストが白い卵より高くなっていたのです。

それにより、生産者も茶色い卵の値段を少し高めに設定して売らなければ、とても商売になりません。

「茶色い卵は栄養価が高い」という説には科学的根拠がなかった
(画像=茶色い卵は生産コストがかかる / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

以上が、「茶色い卵の方が栄養価が高い」という通説を産んだ大元の原因です。

しかし、これらはあくまでも生産プロセスにおける話であって、科学的な証拠ではありません。

「体も大きくて、エサをよく食べるニワトリの方が、栄養価の高い卵を産むのではないか?」とも十分に考えられます。

そこで研究者らは、白い卵と茶色卵の栄養価の違いを科学的に調べることにしました。

白と茶色で栄養価に差はない

アンダーソン氏を中心としたノースカロライナ州立大学のチームは、2013年に、卵の色による栄養価の違いを調べた研究を発表しました(PubMed, 2013)。

それによると、白い卵と茶色い卵では、栄養成分にわずかな違いしかないことが判明してます。

また、その違いは個々の卵によっても変わっていました。

たとえば、白い卵の方が栄養分やビタミン量が少し多い場合もあれば、反対に、茶色い卵の方が、わずかに栄養価に優れていることもありました。

しかし、このデータを管理栄養士に確認してもらったところ、総じて、人の栄養状態に影響を与えるほどの差ではないことが分かっています。

実際に健康面に影響を与えるには、栄養価の差が少なくとも10〜25%以上でなければなりませんが、その数字には遠く及んでいませんでした。

「茶色い卵は栄養価が高い」という説には科学的根拠がなかった
(画像=『ナゾロジー』より引用)

それでも、これはスーパーに並んでいる卵に当てはまることであって、烏骨鶏や名古屋コーチンのように、実際に味も美味しく、栄養価も高い高級卵はたくさんあります。

そうした卵の違いは、殻の色よりも、黄身の色や弾力、大きさにあらわれます。

たとえば、高級卵はスーパーの卵よりも大きく、黄身が赤みの強いオレンジ色で、指でつまめるほどの弾力があります。

味や栄養価を気にするなら高級卵を買うべきであって、スーパーの卵では、色の違いを気にする必要もないでしょう。

参考文献
ARE BROWN EGGS HEALTHIER? SCIENCE DEBUNKS A PERVASIVE MYTH

提供元・ナゾロジー

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