コロナのパンデミックにより、家にいる機会が増えています。

余暇や自由時間が増えれば、幸福度も高まるでしょうが、それにも限界はあるようです。

ペンシルベニア大学ウォートン校(Wharton School of the University of Pennsylvania)は、最新研究で、1日の自由時間が5時間を越えると、人の幸福度は低下することを明らかにしました。

自由な時間がありすぎるのは、必ずしも良いことではないようです。

研究は、9月9日付けで学術誌『Personality and Social Psychology』に掲載されています。

目次

  1. 「生産性の低さ」から幸福度が落ちる?

「生産性の低さ」から幸福度が落ちる?

研究チームは最初に、「American Time Use Survey(アメリカ人の時間使用調査)」の2012〜2013年までのデータを分析しました。

この調査では、参加者2万1736人に対し、「1日をどのように使っているか」について、各活動の時間帯と持続時間まで詳細に記録してもらい、同時に主観的な幸福度も報告してもらっています。

データ分析の結果、幸福度は自由時間が増えるにつれて右肩上がりに高まったものの、2時間を超えると横ばいになり、さらに5時間を超えると低下し始めたのです。

これと別に、チームは「National Study of the Changing Workforce(変化する労働力についての全米調査)」の1992〜2008年までのデータも調査。

参加者1万3639人には、「平日は平均してどのくらいの自由時間があるか」「今の生活にどれほど幸福を感じているか」といった質問に答えてもらっています。

すると、先程と同じように、自由時間が多いほど幸福度も上昇したのですが、ある一点から、自由時間と幸福度の相関性がなくなったのです。

自由時間が多すぎると「幸福度が低下する」と判明
(画像=自由時間が5時間を超えると、幸福度が下がり始める / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

これら2つの分析結果を踏まえ、チームは今回、約6000人の参加者を対象としたオンライン調査を行いました。

1つ目の調査では、参加者に「半年にわたり、1日あたり一定の自由時間が与えられる状況」を想定してもらいます。

この際の一定の自由時間は、1日15分(少ない)・1日3.5時間(適度)・1日7時間(多い)の3つに分けられ、どれかがランダムに割り当てられます。

参加者にはそれを考慮した上で、「娯楽、幸福、満足度をどれだけ体験できるか」を報告してもらいました。

その結果、1日15分(少ない)と1日7時間(多い)は、1日3.5時間(適度)に比べて、幸福度が低いと報告されたのです。

データを調べたところ、1日15分(少ない)では「ストレス度が高まる」と報告され、1日7時間(多い)では「生産性が低くなる」と報告されていました。

2つ目の調査ではまず、それぞれの参加者を1日3.5時間(適度)・1日7時間(多い)のどちらかに振り分けます。

その上で、自由時間の過ごし方について「生産的な活動(趣味や運動、ランニング)」か、「非生産的な活動(テレビやネットサーフィン)」のいずれかを指定し、それに応じた幸福度を報告してもらいました。

その結果、「非生産的な活動」では、自由時間が多いほど幸福度が低下するのに対し、「生産的な活動」では、自由時間が多くても、幸福度が「1日3.5時間(適度)」のグループと同じであることが示されたのです。

要するに、自由時間が長くても、自分に有益な活動であれば幸福度も落ちない、ということでしょう。

自由時間が多すぎると「幸福度が低下する」と判明
(画像=生産性の高い活動で幸福度も高まる / Credit: pixabay、『ナゾロジー』より 引用)

研究主任のマリッサ・シャリフ氏は、次のように述べています。

「私たちはよく、忙しすぎることに不満を持ち、もっと自分の時間が欲しいと言います。しかし、ただ自由時間を増やすことが幸福につながるとは限りません。

また、定年後や離職中に過度の自由時間がある場合は、目的を持った有意義な活動をすると良いでしょう」

コロナ禍でおうち時間が増えている今こそ、時間の有益な使い方を見直す良い機会かもしれません。


参考文献 Too much free time can be just as depressing as no free time — if you’re wasting all of it

Too much free time may be almost as bad as too little

元論文 Having too little or too much time is linked to lower subjective well-being.


提供元・ナゾロジー

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