ネアンデルタール人の手は、手斧や槍のような道具を強く「握る」のに適していたことが判明しました。

その一方で、親指と他の指先の腹で物を「つまむ」動作はできないか、困難だったと見られます

ネアンデルタール人は、臭い匂いがしても鼻をつまめなかったのかもしれません。

研究は、イギリス・ケント大学により、11月26日付けで『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  1. ネアンデルタール人は「つまむ」のが苦手だった?
  2. 優劣ではなく、スタイルの違い

ネアンデルタール人は「つまむ」のが苦手だった?

研究チームは3D分析技術を使って、5人のネアンデルタール人の遺骨から、親指の動きにかかわる骨同士の関節をマッピングし、それを5人の初期人類、および50人の現代人と比較しました。

特に、「大菱形骨(だいりょうけいこつ、親指の付け根にある手首の骨)」と「第一中手骨(手首につながる親指の最初の骨)」の形状・可動域などを調べています。

ネアンデルタール人は「握る」が強くても、「つまむ」ができなかった
(画像=ヒトの第一中手骨(右端) / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より 引用)

その結果、ネアンデルタール人の親指の付け根の関節は、平坦で接触面が小さく、手の側面に沿ってまっすぐ配置されていました。

これは、棒状の道具をグッドサインのような形で握る「パワーグリップ」に非常に長けていたことを示します。

しかし、親指が手のひらの内側に向かって曲がりにくいので、小さなものをつまむことは難しかったようです。

ネアンデルタール人は「握る」が強くても、「つまむ」ができなかった
(画像=親指を立てた状態のグリップには長けていた / Credit: Ameline Bardo、『ナゾロジー』より 引用)

一方の初期人類および現代人は、親指の付け根の関節が大きくカーブしていたため、指の腹同士を合わせて物をつまむことができます。

グリップ自体の握力はネアンデルタール人の方が強かったかもしれませんが、手先の器用さでは現代人が優っていたでしょう。

お箸や鉛筆を握った入り、コインをつまんだりできるのはこの親指のおかげです。

優劣ではなく、スタイルの違い

歴史的に見ると、ネアンデルタール人は絶滅し、ホモ・サピエンスは今日まで繁栄してきましたが、この手の機能が両者の明暗を分けたとは言えません。

研究主任のアメリン・バルドー氏は「この結果は、現代人がより複雑な道具の製作・使用に適していたというより、単に2つの異なるスタイルがあったことを証明している」と指摘します。

ネアンデルタール人は「握る」が強くても、「つまむ」ができなかった
(画像=Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

ネアンデルタール人は握力が強く、手斧や槍のあつかいに長け、現代人は石器を削ったり、縄を編んだりする細かな作業に長けていたのでしょう。

どちらが良いというものでもありません。

バルドー氏は「手の機能の比較は、両者がどのような道具の使用に優れていたかについて新たな洞察を与えてくれる」と話します。

研究チームは今後、手の機能と古代のさまざまな道具を比べることで、ネアンデルタール人や初期人類の生活様式に深く迫っていく予定です。

参考文献
phys
inverse
sci-news

提供元・ナゾロジー

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