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ドイツ・ケルンの森にある地中から、旧ソ連のスパイが残したと思われる「高性能無線機」が発見される
無線機が埋められたのは、東西冷戦期の1989年頃で、ソ連が西側の情報を得るために準備したものと思われる
ドイツ西部のケルン近郊の森で、冷戦時代のスパイが残したと思われる「旧ソ連の無線機」が発見されました。
無線機は、昨年8月に、ドイツの考古学研究チーム(LVR)が偶然に発見したものです。
研究チームのエーリッヒ・クラッセン氏は「ローマ時代の遺跡を探しているときに見つけた」と話します。同地は、かつてローマ時代の集落があった場所としても知られます。
発見以後、研究チームが無線機をくわしく調査する中で、多くの秘密が明らかになってきました。
東西冷戦期に持ち込まれた
発見時の無線機は、ネジで密閉された大きな金属製のボックスの中に納められていました。
バッテリーが切れてから、少なくとも30年は経過していますが、ボックス内の無線機や付属品は、すべて包装紙で丁寧に包まれていました。
クラッセン氏によると、「これは無線機が工場出荷時の状態にあり、一度も使われなかったことを示す」ようです。
調査の結果、無線機は、1987年にソ連で製造されたモデル「R-394KM」の送受信機と特定されました。R-394KMは、「Strizh」というコードネームを持っており、これは英語の「Swift(迅速)」を意味します。

クラッセン氏は「おそらく無線機は、製造後すぐにソ連のスパイによって西欧世界に持ち込まれたもの」と推測します。
当時のヨーロッパは、「東の共産主義」と「西の資本主義」とに分断した冷戦時代にありました。ドイツも東西に分裂しており、無線機の発見されたケルンは、西側に位置しています。

クラッセン氏は「ソ連のスパイが、西側の情報を入手して、ソ連政府に送っていた可能性が高い」と指摘します。
無線機が地中に埋められた年代は、東西冷戦が終結する前の1989年頃のようです。
忘れ去られた無線機
調査の結果、無線機は非常に性能が高く、半径1200キロの範囲ならメッセージの送受信が可能だと判明しました。
この距離は、西側のケルンから、当時ソ連側に属していたポーランドのワルシャワに十分届く距離です。
しかし、この無線機が使われることはありませんでした。このことから、この無線機は、他に使用されていた無線機の予備だった可能性も考えられます。
結局、冷戦は終わりを向かえ、無線機はそのまま土の中で忘れ去られたのでしょう。

このまま事件は闇の中と思いきや、研究チームの調査により、無線機を準備した人物を暗示するヒントが見つかっています。
というのも、発見された無線機には、他の「R-394KM」に見られるキリル文字(ロシア文字)の印字がなかったのです。その代わりに、英語で使われるローマ字が印字されていました。
これは無線機が、ロシア人のためでなく、英語話者のために作られたことを示します。この点から、ソ連が準備したものではない可能性も浮上しますが、もちろん、ソ連側があえて印字したカモフラージュとも取れるでしょう。
しかし、埋められてからかなりの時間が経過しているため、これ以上の秘密が明かされることはなさそうです。
無線機は、現在、ドイツ・ボンにあるLVR-ライン州立博物館にて展示されています。
reference: livescience
提供元・ナゾロジー
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